28.気になる?気になるよねぇ
「ふん。今日は土産を持ってきてやったぞ。愚かな勇者たち」
ドサッ!
ノガワが放り投げられ、地面に落ちる。
「ぐはっ!?」
ノガワはあえて、息を大きく吐き出し、血を吐いた。
あまりにも痛々しい様子だ。
ーー痛そうだよね?今にも死にそうに見えるよね?なら、することは1つ。分かってるよね?
ノガワは心の中で、笑みを浮かべた。
直後、
「『天の癒し』!」
ノガワの身体を、暖かなモノが包むような感覚。
すると、だんだんと身体から痛みが引いていくよう。
ーーおおっ!これが、噂に聞いてた回復魔法かぁ。魔法って凄いなぁ。
「ノガワ君!大丈夫!?」
駆け寄ってきた女子に身体を揺さぶられる。
貧血なので、激しく揺らされると、
ーーうっ!目がまわるぅ。胃の中のモノが、………デル前に、別のモノが出そう!
「ゲホゲホッ!ゲボォッ!!」
ビチャビチャッ!
ノガワの口から、真っ赤な血が飛び散る。
これは口や喉の中に傷が出来たわけではなく、元々喉に溜まっていた血を吐き出したのだ。
「え?まだ直ってない!?じゃ、じゃあ、『世界の癒し』!!!」
また暖かな感覚。
だが、もう傷は治っているため身体が変化することはない。
ーーでも、さっきのをケガしてると勘違いしたみたいだし、治ったフリでもしておこうかな。
「ん。身体が、直ってる」
「ノガワ君!良かった!!」
回復魔法をかけてくれたクラスメイトが、ノガワを見て嬉しそうにしている。
ーーこういうのを見ると心が痛むなぁ。でも、こんな所で引き下がれないんだよね。
ノガワは少し心がチクリとしたが、それでも、自分の意思を貫こうと決めた。
「ふん。治されたか。まあ、いい。次はないぞ?せいぜい怯えていることだな!!」
ルティアーヤはそう言って、グリュプスを浮かび上がらせた。
そして、そのまま空へと消えていく。
ーー順調に進んだね。僕のことを殺さないでおいてくれたルティーアーヤには感謝かな。
そう思いながら空を見上げてていると、
「おい!ノガワ!大丈夫か!?」
「どうなってるんだ!?」
「あの女は誰だ!?魔族なのか!?」
勇者パーティーメンバーがノガワに事情を尋ねて詰め寄ってくる。
その様子に、魔族が許せないという感情以外も読み取れた。
ーーふふっ。ルティアーヤのことが気になってるみたいだねぇ。男子は全員気になってるかな?確かに、魔王軍の幹部たちは皆可愛かったり綺麗だったり、美人が多いからねぇ。気になるのも仕方ない。………っていうか、それも狙ってルティアーヤに送って貰ったわけだけど。
「1つずつ答えてくね。あの人は魔族だよ。四天王の1人だし、幹部みたい。で、僕がああなってた理由だけど、あれは僕が逃げようとしたからだね」
「逃げようとした?……って、そういえば、聞いたぞ。皆を守るために捕虜になったって!」
ノガワの話に、勇者のクラスメイトが食いついてくる。
どうやら、捕虜になった話は聞いているようだ。
ーー良かったぁ。あの子たちが勇者パーティーに接触できるかはうんだったけど、どうにか会えたみたいだね。これで、僕の説明が省けて楽になったよ。
「そうだねぇ。その捕虜になってる間に、良い情報が手に入ったから、勇者のレンドウ君たちに伝えておかないと行けないと思って。それで逃げようとしたんだけど」
「バレて、拷問を受けたって訳だな?」
「そうなんだよぉ」
眼鏡をかけた頭の良さそうな雰囲気の男子が、ノガワの描いたシナリオ通りのことを確認してくる。
ノガワはそれに頷いた。
彼は常に学校では首席を取ってきた優秀者なのだが、実戦における頭脳戦ではノガワの方が圧倒的に上だ。
ーーまあ、僕の掌の上って事を明かす必要はないんだよね。いつまでも、自分が1番だと思い込んでくれれば、それでいい。
「それで、その良い情報って言うのは?」
ノガワが心の中で優秀男子を馬鹿にしていると、勇者のレンドウ君が情報に食いついてきた。
ノガワは、それに笑みを浮かべる。
ーー釣れた。いやぁ~。勇者がこれでいいのかなぁ?……っていっても、コレを伝えて上手くいくかは分からないんだけどね。
「気になる?気になるよねぇ。傷も治して貰ったし、勿論教えちゃうよぉ!…………なんとね、僕、ハーピーの隠れ里の場所を知ったんだよ!!」
「「「「ハーピーの隠れ里?」」」」
勇者パーティーの全員が首をかしげる。
ハーピーと言えば、鳥に人間の頭が生えたようなモノで、ゲームによく出てくる。
なぜそんな魔物の隠れている場所が重要なのかと、勇者パーティーは思っているが、
「ふふふっ。実はね。ハーピーの隠れ里は、この国の中にあるんだよ!!」
「「「「………え!?えええぇぇぇぇ!!!?????」」」」
驚きの声を上げる勇者パーティー。
それを見て、ノガワはイタズラを成功させた子供のような顔で笑った。
ーーはははっ。驚いたよね?勿論驚いたよね?
「そ、その場所を教えてくれ!!」
勇者のレンドウ君がノガワの肩を掴み、真剣な表情で頼んでくる。
その熱意にノガワは苦笑しながらも、最初から教えるつもりであったので頷いた。
その頷きを見て、レンドウ君は輝く笑顔での側を見つめる。
まるで、BLな雰囲気だが、2人ともそっちの気はない。




