27.愚かな勇者たち
ガスンッ!
追撃で、さらなる衝撃がノガワを襲う。
もううめき声を上げるような元気すらない。
「さて、かなりいたぶったが。………外見は微妙だな。切り傷作っとくか」
そう言って、ルティアーヤは腰から剣を抜いた。
気がする。
現在ノガワは仰向けで、ルティアーヤの姿を見ることは出来ない。
そのため、かすかに超える音で判断するしかないのだ。
「それじゃあ、早速行ってみるか」
直後、腕に痛みを感じる。
先ほどの骨が折られたりする鈍い痛みとは違い、鋭い痛み。
斬られたのだろうと察した。
その後も、脚、背中、顔など、様々なところを浅く斬られる。
それだけで、全身が真っ赤に染まった。
まるで重症のようである。
………実際に重症なのだが。
「ほらほら!何か言ってみたらどうだ!?」
ルティアーヤは乗ってきたようで、テンション高めでノガワを斬ってくる。
笑い声と共に振るわれる剣に、どこか狂気を感じた。
ーー狂ってるね。僕ほどじゃないけど、……って、いたいいたい!
斬るのに飽きたのか、今度は傷口を脚で踏みつけ、ぐりぐりとねじってきた。
コレには流石にノガワも反応を示し、身体をむくりと起こした。
だが、逆にここで暴れれば余計に傷口が開くことは分かっているので、奥歯をカミシメ、無言で耐える。
そんな時間が、長い間続いた。
……。
………。
それから、1時間ほど経っただろうか。
「ふん。そろそろ終わりだ。意識はあるか?ノガワ」
「っ!………あ、あるよ」
体感では数時間とも思えるような拷問のようないたぶりが終わった。
ノガワは満身創痍で、まともに動くことは出来ない。
それでも、頑張って口を動かし、ルティアーヤに返答した。
その直後、
《スキル『痛覚麻痺』を獲得しました》
《スキル『斬撃耐性』を獲得しました》
《スキル『物理耐性』を獲得しました》
《スキル『拷問耐性』を獲得しました》
そんな声が聞こえた。
大量のスキルを獲得。
ーー防御力の上がりそうなスキルが多いね。あって困ることはないだろうし、良いことではあるんだろうね。
「それじゃあ、行くぞ。動くなよ」
ルティアーヤはノガワに忠告して、ノガワを抱き上げた。
いわゆるお姫様だったこと言われる状態で。
ーー何!?あそこまでいたぶっておいて、運ぶときはお姫様抱っこ!?意味我からないんだけど!
ノガワは恥ずかしいのでやめて欲しかったが、抵抗できる力もないので諦めた。
「さて、では行くぞ」
ルティアーヤにどこかへ下ろされたような感触がした。
ーー背中の辺りは良く分からないけど、この足の先に感じる柔らかさはグリュプスだね。
どうやら、もう移動用のグリュプスに載せられたらしい。
ーー痛いからあんまりこの格好でいたくもないし、作戦に早く移れるならそれも悪くないか。
ノガワはそう考え、目を閉じ、
そうになったので、無理矢理身体に力を入れる。
ここで目を閉じてしまったら、眠りについてしまいそうな気がしたのだ。
グワッ!
背中からグリュプスが浮く感覚を受ける。
その時だった。
「ノガワ!また帰ってきなよ!」
「待ってるからね!」
「気をつけてなのじゃ!」
アイファ、ベティー、シャキーナの3人の声が聞こえる。
おそらく、アイファの妹ノリャーファもいるのだろうが、あまり大きな声を出すつもりはないのだろう。
ーーもしかして寝てたり?………はは。ないとも言えないなぁ。
ノガワはそう思い、心の中で苦笑を浮かべた。
リャーファが珍しく心配そうな顔で見送っていることも知らないで。
「………ちっ」
空に飛び上がった後、ルティアーヤが小さく舌打ちした。
ノガワとアイファたちが仲良くしていることが気に入らないだろう。
ーーいつかは、ルティアーヤとの仲も解消したいんだけど。……まあ、焦っても仕方ないね。友好関係はゆっくり築いていかないと。
全身の痛みに耐えながら、グリュプスの上にいること数十分。
「見えてきたぞ」
「……ん」
ノガワは小さく返事をする。
直後、身体が宙に浮くような感覚を覚えた。
ーーこれ!急降下してるときの感覚だよね!心臓に悪いからやめて欲しいんだけどなぁ!
ふわっ。
柔らかい着地。
急降下していたはずなのに、なぜか着地は軽い。
ーーこれは、グリュプスが凄いって事かな?操ってる人の腕って事はないと思うけど。
「な、なんだ!?」
「ま、まままま、魔族だ!!」
「ギャアアアァァァァ!!!!??????」
「殺されるぅぅぅぅ!!!??????」
叫びながら逃げていく村人たち。
それとは対照的に、グリュプスに近づいてくるモノたちが数名。
それは勿論、
「魔族!悪事もそこまでだ!!」
「我たち勇者パーティーが、村の人たちへの攻撃は許しません」
そう。
何を隠そう、立ち向かうのはノガワのクラスメイトのいる勇者パーティー。
ーーバカなのかな?正面から止めに来たよ。奇襲とかすれば、仕留められるかも知れないのに。
「勇者か。情報通りだな」
「っ!俺たちがいると分かっててきたのか!?……っ!?」
勇者が、ルティアーヤに吠えたアアと、目を見開いた。
その理由は、
ルティアーヤが綺麗だったから。
「ふん。今日は土産を持ってきてやったぞ。愚かな勇者たち」




