26.ボロ雑巾にされるのだから
ノガワは最後の詰めを行う。
その詰めは、
「僕のことをボロボロにして勇者の前に出せば、勇者も攻めてこようって言う気持ちはなくなるんじゃないかな?」
「なっ!?そんなわけ、…………いや。有効か」
否定しようとしたが、途中で思い直す。
ルティアーヤも先ほどまでかなり落ち着きがなかったが、急に冷静になってしまう。
ーーあれ?焦ってくれてた方が操りやすかったんだけど?急にどうしちゃったんだろう?
「あぁ。ルティアーヤは、戦いの作戦のことになると急に冷静になるのさ。一応コレでも、将軍だからね」
後ろにいたアイファがそう解説してくれる。
ーー将軍?将軍って言うと、軍の指揮をする人だよね?………へぇ。ルティアーヤが将軍かぁ。
個人的な感情で有能な存在を突き放しているのに、よくコレで将軍が出来るモノだと思う。
が、アイファが言うように、戦いのことになると冷静になれるなら、もしかしたら問題はないかも知れない。
「で?どう?やってみる気はある?」
「ああ。いいだろう。お前の作戦に乗ってやる。だが、いたぶりに関しては覚悟しておけよ?」
「ひぇ~。怖いなぁ。お手柔らかに頼むよぉ」
口で言う言葉と裏腹に、ノガワの表情はどこか楽しげ。
つられて、部屋の雰囲気は少しだけ明るくなった。
ノガワの心の内を知ってしまった、リユーニアを除いて。
「ああ。そうだ。地図とかあったら見せて貰える?一応帰り方とか決めておきたいから」
「ん?帰ってくるつもりなのかい?」
「え!?ひどくない!?僕に帰ってくるなって言うの!?嫌だよ!僕、あんなパワハラな所戻りたくないって!!」
ノガワは慌てたようにい言う。
すると、3人とも意外そうな目でノガワのことを見た。
ーーうわぁ。まだ裏切ると思われてるのかぁ。……頑張って貢献して、信用を勝ち取らないとなぁ。
「ほら。地図だよ。簡易的なモノだけど、アンタに見せられるのはここまでなんだ、許しておくれ」
「いやいや。これで十分だよ。………ん?ちょっと待って、これって?」
「ん?ああ。それかい?」
ノガワは地図の端の方に、とあるモノを見つける。
アイファが質問しても平然としているところを見るに、不思議なことではないらしい。
ーーこれは使えるね。コレも活用しつつ、作戦を立てようかな。
ノガワは新しい発見に笑みを浮かべ、計画を立てていった。
その笑みを見た3人が、背中がぞわりとするような恐怖を感じて、剣に手をかけるなどの一悶着もあったが、作戦は着々と計画されていった。
……。
…………。
そして、数日後。
「伝令!!勇者が近くの村に来たと言うことです!」
そんな報告が入った。
その報告を聞いた軍服姿のルティアーヤは、嫌らしい笑みを浮かべた。
そして、立ち上がり、魔王城の標的の部屋へと向かっていく。
「さあ。ノガワ。覚悟は出来ているか?」
「………うえぇ~。何その台詞。怖いんだけど」
ルティアーヤの言葉を聞いたノガワは気乗りしていなさそうな顔をした。
それも当然。
これから、ボロ雑巾にされるのだから。
「ノガワ君。本当にやるのかい?私はやめておいた方が良いと思うんだけど。ねぇ。僕と一緒にもっと研究しようよ!!」
「そうじゃぞ!ここでおぬしの知識が聞けなくなってしまうのは損失じゃ!それに、おぬしの身体も心配じゃし」
やめた方が良いと行ってくるベティーとシャキーナ。
2人とも、ノガワの身体は知識のついでらしい。
ーーこの2人にはある意味好かれてるよね。信用されているかと言われると微妙な気がするけど。
「大丈夫だって。すぐにまた戻ってくるから!」
「そうならいいんだけどねぇ」
「きちんと帰ってくるのじゃぞ」
2人の不安そうな声を聞きながら、ノガワはルティアーヤに近づく。
すると、ルティアーヤはどこかへ歩き出した。
ノガワがそれについていくと、大きな扉のある部屋にたどり着いた。
ガチャッ!
扉が開かれる。
すると、そこには、
「ここは、訓練場だよ。普段は、兵士たちの試合とかを行う場所なんだが」
そう言って、ルティアーヤはノガワを見る。
そして、満面の笑みを浮かべたまま、ノガワの首元を掴む。
ノガワはそのまま放り投げられ、顔面から壁に激突する。
「ガハッ!?」
ノガワの顔に、痛みが走る。
鼻からは血のにおいが感じられ、口の中も鉄分の多い味がする。
ーーうわぁ。絶対鼻とか折れたよね?
ノガワはそう思ったが、抵抗することはしない。
「ほら。次に行くぞ。はぁ!!!!」
ガンッ!
腹部に衝撃を感じ、その直後にはノガワの身体が宙に浮いていた。
どうやら蹴り上げられたよう。
しかも、その蹴り上げたルティアーヤの姿は眼下に見えない。
宙に浮いていることで下の方の口径は広い範囲で見えているはずなのだが、それでも分からないと言うことは、
「砕けろ!」
バキッ!
背中に感じる激痛。
浮いていた身体は地面の方へ加速され、地面とぶつかって何度か大きくバウンドする。
ーーうわぁこんなに身体ってバウンドするモノなんだ。こんな所で人間の可能性を感じたよ。




