21.裏切るんじゃないよ
「それじゃあ、行ってきます!」
次の日。
早速ノガワは出発する。
ノガワを見送りに、顔見知りの3人が来ていた。
「裏切るんじゃないよ」
「そうだよ!僕の新しく作る魔道具を見せるんだから、裏切ったら駄目だよ!」
「信じておるぞ。ノガワ」
三者三様な言葉。
ただ、揃って心配そうな顔をしながら見送りに来ていた。
簡易人の村に行くと言うから、裏切るだろうと思っていることが手に取るように分かる。
「それじゃあ、頼んだよ」
3人に言葉を貰い、ノガワは前に座る女性に声をかける。
ノガワの前に座っているのは、リャーファ。
ノガワを捕虜として捕まえ、魔王軍に連れてきた張本人であり、アイファの妹。
「……ん。行く」
リャーファは頷き、乗っているグリュプスを軽く叩いた。
すると、ふわりと宙に浮く。
そのまま、
「おぉ。相変わらず速い!」
あっという間に大空へ。
ノガワは小さくなったアイファたちを見て微笑む。
それから、リャーファと軽く会話をすることに。
「ごめんね。こんな役割頼んじゃって」
「………大丈夫。焼き尽くすだけ。簡単」
「いや!焼き尽くすのは僕が裏切ったときだけね!裏切らないから、焼き尽くさなくて大丈夫だよ!!」
「……ん。了解」
そう言った後、リャーファは目をつむった。
きっとそれがこの役割において正しいのだろう。
裏切った場合、殺すことに躊躇してはならない。
だからこそ、あまり殺す対象であるノガワと話さない方が良い。
「………着いた」
数分もしなうちに、目的地へ到着。
マダムらが遠くにしか見えないが、これ以上近づいたらノガワが魔王軍のモノだと気付かれてしまう。
それは避けなければいけないので、ここからは歩きだ。
ーーあぁ。運動してて良かった。これ、あのまま何もしてなかったら、あそこに着くだけでへばっちゃうよ。
ノガワは部屋に運動器具を置いて良かったと思いながら、村まで歩いて行く。
因みに現在のノガワの恰好は、全身を覆うローブを纏っており、かなり怪しい雰囲気。
ーー自分で見ても怪しいと思うくらいだからね。村に入るのも一苦労だろうなぁ。でも、必要なことだから仕方ないよね。
「おい!そこのお前!止まれ!!」
「僕のことかな?」
予想通り、というか計画通り、鎧を着た兵士に呼び止められる。
ノガワは兵士が来るのをじっと待つ。
兵士は近づいてくると、
「顔を見せろっ!」
そう言って、ガバッ!と、強引にノガワのフードを取った。
そして、ノガワの顔を見て顔を歪ませる。
ーーん?何かあったかな?
「黒髪?珍しいな。ま、まさか、国の暗殺者とか言わねぇよな?」
「は?どういうこと?そんなわけ無いじゃん」
ノガワは心底不思議そうにしながら言う。
ーー暗殺者ぁ?こんなに僕は無害で可愛いって言うのに、どうして暗殺者なんかと見間違うんだろうね?こんなに無害で可愛いのに。
大事なことなので2回思った。
「ほ、本当にちげぇんだな?」
「本当だよ」
「本当の本当に?」
「本当の本当に」
「本当の本当の本当の本と………」
「あぁ!もう!違うって言ってるじゃん!暗殺者が、コンナニあからさまに怪しい格好するわけないでしょ!!」
兵士が心配そうな顔をしながら何度も尋ねてくるので、ノガワは強い口調で否定をした。
すると、やっと理解してくれたのか、兵士は一息ついて真顔になった。
ここまで、約10秒。
時間が掛かりすぎている気がする。
本当にこのペースで、3日以内にこの村を壊滅させられるのだろうか?
「よし。お前が暗殺者じゃないことは分かった。ただ、怪しいからそのまま村に入れてはやれない!着いてこい!!」
「ええぇ~。折角暗殺者じゃないって証明したばっかりなのにぃ」
落ち込んだ口調でノガワは言う。
ただ、ここで反抗しても意味がないので、大人しく兵士の後についていく。
フードを被り直して、怪しさ全開でいることも忘れない。
「おい。巡回だろ?何でここにって、なんだそのあからさまに怪しいヤツ」
「あぁ?よく分からないけど、怪しいから連れてきた。門番長呼んでくれ」
「おぉ。それじゃあ、俺は呼んでくるから、そいつを塔に入れてくれ」
門番らしい兵士と、ノガワをここまで連れてきた兵士が話し、門番の兵士がどこかへ走って行った。
それから、ノガワを連れてきた兵士はそのままノガワを門の横にある建物に連れてきた。
ーー門番長を呼んでくるって言ってたよね?ある意味ラッキーかな。
有力者を殺すことが出来れば、村を大混乱に陥らせることが出来るかも知れない。
「まったく。お前も大変だな」
「ん~。僕をここに連れてきた人に言われたくないんだけどな」
「仕方ないだろ。そんなにフードを深く被ってたら、不審者にしか思えねぇんだから」
兵士にあきれたような声で言われた。
それを聞いて、椅子に座っているノガワは不機嫌そうに足をふらふらとさせる。
そんなことをしていると、
「……そいつか」
「あっ!門番長!ご足労頂きありがとうございます!!」
中年の男が部屋に入ってきた。
その姿を見ると兵士は急いで立ち上がり、慌てて敬礼をする。
ーーこの人が門番長手の早い人じゃないと良いんだけど。
「おら。フードを取れ。……って、黒髪か」




