19.う、うわぁ。そ、それは怖いね。
それから、ノガワは普通に就寝した。
いつものように食べ物をあさる必要もないので、ゆっくり休める。
ーー最近寝不足だったから、きっと明日は身体の調子が良いぞぉ!……ぐぅ。
そうして、ノガワは深い眠りへと落ちていった。
………。
「………んお?」
ノガワは明るい日差しを顔に受け、目を覚ます。
起き上がると、身体が軽い。
ーーほ、本当に身体が楽になってる!僕、疲れてたんだなぁ。
そんなことを思いながら、朝の支度をする。
窓から見える城下の光景を見ながら、アイファから貰った服に着替え、食前に歯磨きをしておく。
ーー起きたばかりが1番口の中に菌が多いから、朝食の前に歯を磨いておいた方がいいって聞いたけど、本当なのかな?まあ、それを信じて今僕は歯を磨いているわけだけど。
歯を磨きながら、ノガワはそんなことを思う。
コンコンッ!
ノックの音。
が、したかと思えば、すぐにガチャリと扉が開いた。
「……おはよう。アイファ。返事を確認せずに入るなら、ノックする必要ないよねぇ」
「ああ。おはよう。ノガワ。それもそうさね。じゃあ、今度からはノックなしではいることにするよ」
どうやら、アイファにはデリカシーというモノがないらしい。
もしノガワが着替え中だったらどうするつもりだったのだろうか?
ーーいや、何もしないのか?もしかして、気にしなかったりするのかな?
「それは良いとして、朝食は食べるかい?」
「そうだねぇ。貰うよ。今回も多めによろしくね」
「ああ。もちろんさ。昼も夜も多めに頼んでおくよ」
「ありがとぉ!」
その確認だけして、アイファはまた部屋から出て行った。
それから、ノガワは待っている間休んでおこうと椅子に座った。
そして、何気なくテーブルを見て、あることに気付いた。
「あ、あれ?ク、クッキーがある?」
昨日全て食べたはずのクッキーが、テーブルの上にあるのだ。
勝手に発生するとは思えないし、昨日アイファが自分で作ったと言っていたことから考えると、
ーーも、もしかして、
「はい。朝食だよぉ」
ノガワがある結論にたどり着くと同時に、扉が開いてた。
本当にノックをしなくなったようだ。
トレーを運んでくるアイファに、ノガワは恐る恐る、自分の考えが合っているか尋ねる。
「ア、アイファさぁ。もしかして、昨日の夜この部屋に入ったりとか」
「っ!?な、ななな、なんでそんなこと!?そ、そそそ、そんなわけないじゃないか!!」
焦ったように言うアイファ。
目が泳ぎまくって、大海原を泳いでいる。
ーー寝顔を見られて僕が恥ずかしくなる場面のはずなのに、何でアイファの方が恥ずかしがってんの!?
「そんなわけないって言っていうなら、じゃあこのクッキーは一体誰が持ってきてくれたって言うの?妖精でも来たの?」
ノガワはあきれた顔をしながら、テーブルの上に置いてあるクッキーを指さす。
その指摘によって、更にアイファの顔が赤くなった。
まるでゆでだこのようである。
「……いや、捕虜の部屋に入るのは別におかしいことじゃないと思うよ?脱走とか計画していないか調べる必要もあるだろうし」
「そ、そうね!おかしいことはないさね!」
おかしいことはないと言うが、ならば先ほどまでの慌てようは何だというのか。
しかも、未だに顔は赤いまま。
ーーなんなのこの人。冷たい印象だったけど、結構可愛い!
「うん。まあ、いいや。この話はコレで終わり。朝食ありがとね」
「お、おう。食べ終わったらベルで呼びな。朝食の後は、また昨日と同じでベティーたちに色々教えて貰うから」
「りょ~かぁい!」
真っ赤なお顔のアイファさんは帰っていった。
いつも皆の笑いもの、ではないかも知れないが、今日は笑われているかも知れない。
ーーそう言う雰囲気の、明るい組織なら僕も嬉しいんだけど。
それからラウスと共に朝食を食べ、その後はベティーとシャキーナに知識を伝える。
明るいところで会うのは初めて。
2人の姿がよく見える。
「ほぇ~。ノガワ君はそんな顔をしてたんだね」
「私は、動じぬ。動じぬのじゃ」
それぞれ違った反応を見せる。
ただ、共通しているのは、ノガワの顔を見て驚いていること。
ーー何か珍しいかな?……ああ。この黒い髪は珍しいのかもね。
「いやぁ。ベティーとは昨日あんなに顔を近づけたのに。やっぱり、暗いと顔が分かんないもんだねぇ」
昨日のことを思い出しながらノガワは言う。
それを聞いて、ベティーの頬がピクッと動いた気がした。
ーーあれ?昨日のことを思い出して恥ずかしくなっちゃった?……いや、まさかね。研究バカって話だし、そんなことを思うわけがないよね。
「それでさぁ、2人の種族ってなんなの?」
ノガワは2人の外見を見ながら尋ねる。
外見で特徴的なのは、濃い青の髪、赤い目、そして、長い八重歯と言ったところだろう。
笑顔の時に見える八重歯が可愛い。
因みに2人の髪型は、ベティーがツーサイドアップで、シャキーナがお団子。
「僕たちは吸血鬼だよぉ!ヴァンパイアって呼ぶ人もいるね。主食は名前の通り血液さ。もしノガワ君が悪いことをしたら、血を吸っちゃうぞぉ!!」
「う、うわぁ。そ、それは怖いね」
八重歯を見せ、ガオーとか言いながら寄ってくるベティー。
その様子は、怖いと言うよりどちらかと言えば、
ーーか、可愛い!
「ねぇ。シャキーナ。シャキーナもこのガオーってヤツしない?」
「す、するわけないじゃろ!恥ずかしくてできぬわ!!そ、それより、そろそろ本題に入るぞ」
「はいはぁい」




