14.この人(?)は大丈夫なのか
「………大丈夫」
ーー何が?
ノガワはただただ疑問に思った。
大丈夫って、何が大丈夫なのか分からない。
「…………」
「……………」
沈黙が続く。
どうやら、何が大丈夫かなど詳しい説明はないらしい。
ーーまあ、この状態で説明できるわけもないか。
「………ぐぅ」
寝てた。
その様子を見て、ノガワは、
ーー今更感が半端ないけど、敵の捕虜に無防備な姿をさらすのってどうなの?後ろから刺されたりとか、怖くないの?
と、この人(?)は大丈夫なのかと心配になった。
「……おぉ!大きい」
しばらく進むと、ノガワの目の前に巨大な城が現れた。
人間の国で見た、ノガワたちの召喚された城よりも大きい。
ーー迫力が凄いなぁ。この城って、魔王とか言うのがいるところだよね?いわゆる魔王城?
「………ここ、魔王城」
女性がそんな説明をする。
直後、グリュプスが急降下。
ノガワは空中に放り出されそうになり、必死にグリュプスの背にしがみついた。
前に乗っている女性の方は、平然としているが。
地面が急速に近づいてきて、
スッ。
ーーあれ?衝撃が来ない?
予想していたような衝撃はなく、非常に繊細な着地が行われた。
「お帰り!リャーファ」
横からかけられる声。
ノガワがそちらを見ると、そこには前に乗っている女性と同じく白髪で、褐色の良い肌の女性がいた。
ただ、その髪はショートカットだった。
ノガワがその女性を観察していると、
「………ただいま。姉」
そう言って、前に乗っていた女性が飛び降りて、待っていた女性に飛びついた。
姉、といっていたので姉妹なのだと分かる。
待っていた女性が姉で、ノガワの前に乗っていた女性が妹。
重要な点は、他にもある。
待っていた女性が言っていた人はリャーファという名前。
おそらくそれは、ノガワの前に乗っていた女性の名前なのだろう。
「よしよし。リャーファは今日も可愛いね。うん!………で?あんたは何?」
姉らしき人が妹の頭を撫でているの見ていたら、突然話しかけられた。
ノガワは返答を急いで考える。
ーーここで嘘を言っても微妙だし、
「僕は捕虜だよ。よろしくぅ!」
「……あんたみたいに元気な捕虜は初めて見たんだけど」
姉らしき人はジト目になる。
ーー確かに、捕虜が元気なのっておかしいね。ちょっと失敗したかな?
ノガワはそう思い、てへぺろ!をしておく。
「……うん。変わってんね。あんた。まあいいや。私は、魔王軍の四天王が1人、森のアイファだよ。よろしく」
「うん。よろしく!僕はノガワだよ!」
元気の良い自己紹介。
元気の良い挨拶や自己紹介で、好印象を得ようという考えだ!
……などという訳がない。
これは、相手のペースを崩し、相手の落ち着きを奪うためだ。
落ち着きを奪い、失言をさせ、自分の有利なように交渉を進める(予定)。
「うん。まあ、そういう子だって理解することにする。でも、リャーファ?私は捕虜をもってこいなんて行ってないんだけどな」
アイファと名乗る女性は、諦めた顔で納得した。
それから、妹のリャーファに向き直り、笑顔でノガワを連れてきた理由を尋ねる。
その笑顔にはどこかす凄みが感じれられ、ノガワも少し恐怖を感じた。
「……異世界人だって」
そんな笑顔にも臆すことなく、相変わらず眠そうなリャーファは短く答えた。
姉妹ということもあり、こういうことにはなれているのかと考えたが、今はそんなことを考えている場合ではないと、すぐに思考を切り替える。
ーー四天王とか言ってるから、そこそこ偉い人だよね。できるだけ良い印象を持って貰わないと。
「異世界人?あの、簡易人の召喚したっていう?」
確認するように、アイファはノガワへ視線を向ける。
ノガワは、勢いで頷きそうになったが、その首を止め、
「簡易人って何?」
「ん~?ああ、そう言えば、簡易人って言い方は、こっち側しかしないんだっけ?簡易人って言うのは、あんたたちが人間とか言ってる奴らのことだよ」
「ふぅん。そう言う意味なら、確かにその簡易人とか言う人たちに召喚されたよ。異世界からね」
ノガワは肯定した。
それから、新しく出てきた簡易人という単語を頭にたたき込む。
ーー異世界は異世界で常識が違うし、さらに、にんげ、じゃなくて簡易人と魔族でも常識が違うのかぁ。頑張って覚えないとなぁ。
「異世界人なんて、私、初めて見たよ。……それで、正義の化身と名高い異世界人が何で捕虜なんかになったのさ?」
「ん~。僕たちの所属してた補給部隊が攻撃を受けて、隊長たちが死んじゃってさぁ。それで、僕も含めて同じ異世界人の子たちも殺されそうになったから、僕が捕虜になることで他の子たちを見逃して貰ったんだよぉ。だから、仲間を助けるって言うのが、……建前かな」
そう言って、ノガワは微笑んだ。
盗んだ覚悟の札も光ったし、あのときに湧き上がった感情は嘘ではない。
だが、
「建前?建前って事は、本音が別にあるのかい?」
「そうだよぉ。……教えて欲しい?」




