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13.皆のことは、僕が守るから

「……待って。僕たちは異世界人だ」


「……異世界人?」


けだるげだが、非常にかわいらしい声。

ノガワが声のした方に目線を上げると、眠そうな顔の女性と目が合った。

そう、目が合ったのである。

 ーー起きた!?あんなに戦闘の最中寝てたのに、ここで起きた!?


「……異世界人。……異世界人。……異世界人」


何度か異世界人という言葉を反芻する。

これは、利益の計算をしているのだとノガワは考えた。

 ーーここで、殺さない方が利益になると伝えれば、きっと命は助けてくれるはず。


「……だから?」


「…………はぇ?」


ノガワは、女性の言葉に唖然とした。

だからどうした、とばかりに首をかしげている女性。

この様子からは、異世界人を助けることに何のメリットもないと考えていることが分かる。


「僕たちは異世界人。この世界とは違うところから、この国に召喚されたんだ。だから、僕たちはこの世界にないものを色々と知ってるよ。僕の知識は、きっと君たちが人間と戦うときの役に立つはずだ」


ノガワは少し早口で、されどハッキリ聞き取りやすく、自分を助けた場合のメリットを伝える。

女性はそれを黙って聞いた。

そして、


「………それで?」


それがどうしたと言わんばかりに首をかしげた。

 ーーああ。本格的にマズいかな?でも、

ノガワは諦めない。

例えここで死ぬ可能性があっても、


「だから、僕を捕虜として連れて行ってもらって構わない。だから、………ここの子たちは見逃して貰えないかな?」


ノガワは自分の要求を口にする。

しばらく、女性は黙っていた。

嫌な沈黙が流れ、ノガワの心に少しずつ焦りが積もっていく。

 ーー駄目かな?駄目なのかな?僕1人って言うのが納得できなかったかな?いや、それ以前に、異世界人というモノへの興味自体が、


「ねぇ」


「っ!?な、何かな?」


女性に話しかけられ、思考の海から引きずり出される。

ノガワは、不安を募らせながらも、女性の瞳を見つめた。

女性はネムそうな顔で、


「その条件でいいよ。他の子たちは見逃してあげる。……おいで」


女性が手を下に向ける。

ノガワはそこまで歩いて行き、女性を見上げた。

女性はノガワに手を差し出してくる。

その手を掴もうとして、その前にやることを思い出し、振り返る。


「皆のことは、僕が守るから。またね」


「っ!ノガワ!!」


ここで初めて、クラスメイトたちが声を上げた。

だが、ノガワは首を振る。

その様子は、クラスメイトたちを守るため魔族の捕虜になる代わりに、もう2度と会えないと言っているようだった。

次の瞬間、ノガワ以外誰も気付かなかった、ノガワの胸の中の札の①枚が光り出した。


「じゃあね。兵士に気付かれないように逃げて。あっ!それと、僕のことを勇者になった子たちに伝えてくれるかな?」


「お、おい!ノガワ!待てよ!!」


慌てて立ち上がり、駆け寄ろうとするクラスメイトたち。その様子を見て、ノガワは小さく微笑み、追いつかれる前に女性の手を取った。

女性は握った手を引き、ノガワのからだが宙に浮く。

 ーー見た目に反して、力強いんだねぇ。


「……君はここ」


ノガワは女性の後ろに乗せられ、次の瞬間には、大空に。

 ーーた、高い。落ちないかな?

少し不安になりながらも、ノガワは手を振った。


「またねぇ!!」


「ノガワ!」

「ノガワ君!」

「ノガワ!ノガワァァァァ!!!!!!」


グリュプスを走って追いかけるクラスメイトたち。

だが、その速度は歴然であり、クラスメイトたちの姿はあっという間に見えなくなった。

それを確認してから、


「これから、何処行くの?」


前に座っている女性に話しかけた。

だが、反応はない。

不思議に思っての側が少し体を傾けてみると、


「すぅ~」


「ね、寝てる」


女性は寝ていた。

起こすのも忍びないので、ノガワはそのまま放置して、景色を楽しむことにした。

 ーーきれいだねぇ。自然があふれてて、……って、向こうの方は結構血が!


基本的に眼下の景色は、自然あふれて素晴らしかった。

だが、たまに戦場だった場所らしく、緑の葉が赤く染まっているところもあった。

 ーー血がついてるところは、割と飛び地だなぁ。……血の感じから考えて、そこまで時期に差はなさそうだから、小さい部隊が各地で戦ったって感じなのかな?


そんな感じで、景色を見ながら想像する。

そうしていると、だんだんと下の景色が変わってきた。

人工物の割合が増えてきて、自然の割合が減ってくる。


「……ここが、魔族の領地」


「お、おう。ってことは、僕は魔族の領地にある収容所か何かに入れられるのかな?」


突然聞こえた声に驚く。

だが、すぐに気持ちを切り替えて、聞いておきたいことを聞いた。

魔族の女性は振り返り、


「……私は決めない」


とだけ言って、また前を向いてしまった。

素っ気ない返事だったが、色々と考察できる重要な情報だ。

この女性が決めないと言うことは、


「僕の処遇を決める人の趣味とか性格とか教えてくれないかな?死にたくはないから、仲良くなっておきたいんだけど」


「………大丈夫」

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