104.リスクを負ってハイリターンを得たいって言うヤツも多いからな
「………じゃあ、明日からの打ち合わせをしようか」
「はぁ~い」
宿を取って。ノガワとチャミーは、今後の打ち合わせをする。
打ち合わせをすると行っても、そんなに長く細かく調整するわけではない。とてもアバウトにやるつもりだ。
ーーまずは僕の考えた計画を話してみて、それが上手くいくかどうかを決めれば良いかな。
「まず質問なんだけど、チャミーは聖女じゃなくなっただけで、使える魔法自体は変わってないんだよね?」
「はぃ~。そうですよぉ~。回復魔法全般が使えますぅ~」
「なるほど。じゃあ、さ、もっとそれを生かして、チャミーの人気をあげていかない?」
「………ほぇ?」
チャミーはかわいらしく首をかしげた。最近四天王たちによって、可愛さの体勢を付けていたノガワでも、
ーーくっ!可愛い!コレも聖女の力なの!?
ハートを打ち抜かれそうになった。だが、すぐにノガワは思考を切り替える。
「作戦としてはシンプルだよ。チャミーが村とかをまわって、格安で回復魔法を使う。それだけ」
「それだけですかぁ~?それだけじゃ、何もできな………いやぁ~。それだけでも、効果はあるかも知れませんねぇ~」
否定しようとしたが、チャミーは途中でやめた。ノガワの行った作戦の有効性に気付いたのだ。
その様子を見て、ノガワは笑みを深める。
ーーある程度は頭の回転もある。ただ教会にだまされたお馬鹿さんって訳でもなさそうだねぇ。
「こんなに安い金額でも治療できると分かれば、教会が高額でやってるって言うのがバレちゃいますからねぇ~。金にこだわりすぎているっていう印象を付けられれば、教会の権威はがた落ちですぅ~」
「そうだね。そうすれば勿論市民と教会の間で不和が起きるだろうから、更に争いの火種が出来る。もし、コレが原因で大きな争いが起きたら、良い実績になるんじゃない?魔王軍に入るのに」
ノガワたちは笑顔でそんなことを話し合う。ただ、ノガワは心の中で、
ーー僕の仕事はそれだけじゃあ、全く足りないけどねぇ。首都で火災も起こす予定だし。
自分が、チャミーに隠れて秘密裏に行う計画も立てていく。
「まあ、取り敢えずはそう言う方針でいこうか」
「はいぃ~。そうしますぅ~」
「明日からは、田舎の村々をまわっていくことになるね。じゃあ、明日に備えて、夜を食べに行こうか」
ノガワたちは立ち上がって、部屋を出て行く。そして宿の食堂へと向かった。
ーーおおぉ~。もうかなり騒いでるねぇ。
まだ夕方だが、すでに食堂は盛り上がりを見せていた。大勢の客が、手に酒らしきモノを持っている。
「僕は僕で話をして情報収集するから、チャミーも話せそうだったら話しておいて」
「はぁ~い」
ノガワの指示に従い、チャミーは近くの女性客の方へ寄っていった。良い感じに話が出来ていそうだ。
ーー人と仲良くするのも慣れてそうだねぇ。聖女って、そう言う仕事もあるのかな?
その様子をしばらく観察した後、ノガワも活動を始めた。商人らしき人に話しかけて、
「………そうなんだよなぁ。最近北からのモノが入ってこなくなってきて、値上がりが激しいんだよ。きっと、今年の冬は食料の値段が恐ろしいことになるぞぉ~」
「うへぇ~。怖いねぇ。………で?それをお兄さんたち商人は今のうちに買い込んでおくのかな?」
「ハハハッ!よく分かってるじゃないか。今のうちにそこそこ安く買っておいて、冬に10倍以上の値段で売るとか、そう言う悪い商人もいるんだよなぁ。………なぁ。そう言う悪い奴もいるよなぁ?」
ノガワの答えに上機嫌になった商人は、近くの別の男性に話を振った。
その男性は今まで1人で飲んでいて、商人に呼ばれると、面倒そうに振り返った。
ーー顔に面倒くさいって書いてある。いや、実際には書いてないけど、そう見える。
「お前さぁ~。俺がやってるのは商売なの。慈善事業じゃないんだよ。分かるか?………というか、他の奴らは12倍で売るとかなんとか言ってるヤツもいたぞ。そっちの方が。極悪だろ」
「あぁ?10倍も12倍も大して変わんねぇよ。がめつい奴らが」
話しかけられた男子も商人だったようだ。
自分はまだマシな方だと反論したモノの、酒を飲んで更に上機嫌になった商人に鼻で笑われた。
それによって、笑われた方の商人は、視線を鋭くする。
ーーおっと。危険な雰囲気だね。ここは、僕が間に入って止めておくかぁ。
「でも、そうなると、商人さんたちを目の敵にする人たちも増えそうだよね。最悪、商人さんを襲う人たちまで出てくるかも知れないね」
「………おぉ。坊主、鋭い読みだな。そういうことを警戒している商人も多いぞ。……まあ、それでも、俺たち商人は、リスクを負ってハイリターンを得たいって言うヤツも多いからな。勿論、全員ではないが」
全員ではないがと言うが、半分もいないんじゃないかとノガワは予想する。
ーーそんなにいないよね?普通は、進んでハイリスクを取りに行きたくはないよね?
そうは思うが、自分もシッカリと魔王軍に寝返る、などというハイリスクなことをしているのであった。




