103.完全に消失させるのに丁度良いバランスが分からなかったんですぅ~
「ふぅ~ん。じゃあさぁ。こんなことを1人でせずに、魔王軍にでも入れば良かったんじゃない?」
「………ほぇ?魔王軍に入る、ですか?」
チャミーは首をかしげた。本気で困惑しているようで、何度も瞬きをしている。
逆に、それを言ったノガワの方は、イタズラが成功した子供のような笑みを浮かべていた。
ーーさぁて。どう反応するかなぁ。もし上手くいったら。このお姉さんを仲間に出来るかも知れないね。
「それができたならぁ、それも良かったかも知れませんねぇ~。………でもぉ~、当たり前ですけど、それをするって言ったらあなたが許してくれませんよねぇ?」
「………さぁ?どうだろうねぇ。チャミーが質問に答えてくれるかどうかで決まってくるんじゃないかな?」
ノガワは笑顔で曖昧な答えをする。質問を答えると言っても、どの程度答えれば等は言わないのだ、
言いたくない所は言わなくても良いかも知れないし、全てを答えないと許されないかも知れない。
どちらなのか分からず、チャミーはひどく困惑した。
「そのつもりはなかったけど、答えるまでの時間制限があった方が良いかな?どう思う?」
「い、いやぁ~。いらないのではないでしょうかぁ~?」
「そう?でも、この状況を他の人に見られたら、僕の方が怪しく思われるかも知れない気がするんだけど」
ノガワは自分の手などを見ながら言う。
見ている手はあまり影響しないかも知れないが、確かに1人だけ無傷であるノガワは犯人として疑われるかも知れない。
逆に、チャミーとしてはそちらの方が良いはずだが、
「………分かりましたよぉ~。答えますぅ~」
「ふぅ~ん。そうなんだぁ~。人を呼ばれたら.困るんだね?」
ノガワはまた意地悪く笑みを浮かべる。それを見て、チャミーは頬を引きつらせた。
ーー人を呼ばれたら困るって事は、一部で知られている人だったりするのかな?
ノガワはそんな予想をしつつ、チャミーに話をするよう、目線で促す。
「………私はぁ~、こう見えても先代の聖女なんですぅ~。ただ、異世界からの聖女さんにその座を奪われちゃいましてぇ~。今は無職って言うのはそういうことなんですぅ~」
「ふぅ~ん。先代の聖女様かぁ。……でも、聖女じゃなくなったとしても、教会のシスターとかとして働けなかったの?」
ノガワは内心でチャミーが聖女であったことに驚きつつも、表面上は落ち着いたようにして質問をする。
ーーそこまで偉い人なら、良いポストが貰えそうな気がするけど。
だが、ノガワの質問に、チャミーは首を振った。
「無いですよぉ~。どちらかと言えば、私が地位を下げられて怒るのを嫌がってましたよぉ~。私を追放したくらいですしぃ~。ひどいですよねぇ~。まあぁ、だから復讐しようと思ったんですけどぉ~」
「それは確かにひどいねぇ。でも、別にこの町の人が全員教会の人って訳でもないでしょ?」
チャミーの怒りも理解できるが、だからといって町をやく理由にはならないと考える。
チャミーはそこを指摘されると、少し表情を暗くした。
ーーん?復讐できて嬉しいって表情じゃないね。あまりやりたかったことではないのかな?
「私もぉ、そこは申し訳ないと思ってますよぉ~。ただ、今までがボヤで終わってたので、完全に消失させるのに丁度良いバランスが分からなかったんですぅ~」
「なるほど。じゃあ、人を虐殺したいわけじゃないんだ」
「そうですよぉ~。……まあ、私の関係ないところでどうなろうと、どうでもいいんですけどねぇ~」
自分で手を汚したいほど恨んでるわけではないが、守りたいとも思わない。そういった所だろう。
ーー虐殺したいとかだったら、もっと魔王軍に勧誘したいと思うんだけど。
だが、そうではないとしても十分誘ってみる価値はありそうだ。ノガワは少し悩んだ後、
「なら、僕が魔王軍とつなごうか?向こうに少し知り合いがいるから、入れなくは無いと思うよ?」
「えぇ~?あなた、魔族と繋がりがあったんですかぁ~。………でもぉ、私は教会以外の人に恨みがあるわけではないので、自分の手で殺すのは嫌なんですけどぉ~」
「ふふふっ。別に無理に殺せとかは言わないと思うよ。魔王軍としては、教会で問題が起きるのは嬉しいことだと思うしね。………まあ、でもすぐに信用するのもアレだから、少し一緒に行動してみようか」
ノガワは、自分が魔王軍の人間だということはかくして話をする。
チャミーの瞳は揺れていた。
ーー迷ってるねぇ。僕が魔王軍とつながってるって知っちゃったから、断ったら即殺害かな?できれば頷いてくれると、僕としても助かるかなぁ。殺しすぎると、僕の精神的にも辛いし。
「……分かりましたぁ~。では、お願いして良いですかぁ~?しばらく一緒に行動すればいいんですねぇ~?」
「そうだよぉ。よろしくねぇ~……あっ。それなら、今の行動もちょっと変えてみようか。他にも教会にダメージを与える方法がないか考えてみよう」
「はいぃ~。分かりましたぁ」
こうして、まだ信用は出来ないが、新たなる仲間を得た。
その後ノガワたちは道を進んでいき、燃える町から逃げてきたと伝えて、隣町に入れて貰った。
ーー犯人を捜すとか言ってたけど、その犯人が女子供の中にいるとは思ってないんだろうねぇ~。




