102.でも、もう人間の勝利とか、どうでもいいんですよねぇ~
「な、何なんですかぁ~。あなたたちぃ~」
女性は困惑しつつも、迫ってくる町のモノたちへモーニングスターを当てていく。
だが、町のモノたちはそれに怯えることなく、まっすぐに彼女へと向かっていく。まるで何かに取り付かれているかのように。まるで誰かに、洗脳でもされたかのように。
…………まあ、洗脳に近くて、より強烈なモノは行われているいるのだが、
「大丈夫?お兄さんたちは、逃げるの?」
そうして女性が町のモノたちに苦戦している間、ノガワは更に町のモノたちに話しかけ、記憶の改変を行っていく。改変を受けた町のモノは、他のモノたちと同じように、女性めがけてゆっくりと動き出していく。
ーーお姉さんの体力が尽きるのが早いか、それとも町の人たちがいなくなるのが早いか。
「そんなに、私のことが憎いんですかぁ~?でも、先にいけないことをしたのはあなたたちなんですよぉ~。私はあなたたちの恨みより、もっと強い恨みを持ってるんですからねぇ~」
女性は、町のモノたちにそんなことを言い出した。それを聞いて、ノガワは笑みを浮かべる。
そして、更に町の住人たちの記憶を変えていった。
ーーもう10人近い町の人が頭を潰されて動かなくなっちゃってるなぁ。かわいそうにぃ。
ノガワは町の人たちを哀れみながらも、作業を続けていく。
そうしていると、数分後。ついに、
「……あっ!?きゃぁぁ!??」
先ほどまでのゆったりした声から、慌てたような声に変化する。慌てたような声と言うか、悲鳴なのだが。
ーーついにやったねぇ。
町のモノが、女性へと到達したのだ。大柄の男性が、女性に触れている。
「えっ!?あっ!きゃぁ!」
それからは、すぐに他の町のモノたちも女性へとたどり着き、女性は地面に押さえつけられた。
モーニングスターも、すでに奪われていて、もう抵抗できそうにはない。
ノガワはそれを確認すると、記憶改変の作業を終了し、女性へと近づいていく。
「ふふふっ。ねぇ。お姉さん。僕の質問に幾つか答えて貰える?答えの内容次第では、無傷で解放してあげても良いよ」
「な、何ですかぁ~?まあ、解放して貰えるなら、答えられるモノなら答えますけどぉ~」
ノガワの提案に、すぐに乗ってきた。
ーーまだやりたいことはあるって感じかな?
ノガワは女性の様子を笑顔で見ながら、質問を開始する。
「まずは、名前と職業を教えて貰えるかな?」
「わ、私はチャミーですよぉ~。今はぁ~、………無職、ですねぇ~」
ノガワは、効いた情報を記憶しておく。記憶力上昇のスキルのおかげで、憶えるのも楽だ。
ーー3日に1回は、スキルがあって良かったなぁ。って思えるね。
そう思いつつも、チャミーの発言を少し考えて、首をかしげた。
「ん?無職?聖職者さんじゃないんだ」
チャミーは、自分は無職であると言った。聖職者らしきローブを着ているのに。
ーーん~。でも、よく考えてみると、僕に聖地の観光案内の本くれたお姉さんも、別に聖職者って訳でもなさそうだった気がするね。って考えると、白いローブを着てるからって聖職者って訳でもないのかぁ。
そうノガワは納得しかけたが、
「ちょっと前までは、そうでしたよぉ~。でも、今は違いますけどねぇ~」
「ふぅん。………なんで、やめちゃったの?」
「……………」
沈黙が帰ってくる。
チャミーは笑みを貼り付けて誤魔化しているモノの、あまり言いたくなさそうだ。
ーー気持ちは分かるんだけど、僕としては言ってもらわないといけないんだよねぇ。チャミーが利用できるかどうかは、それを聞かないと分からないんだから。
「じゃあ、チャミーはどうしてこの町を焼いたの?恨みでもあったの?」
「恨みはありましたよぉ~。でも、この町だからっていう理由でもないですけどぉ~」
詳しい理由をぼかしてきた。ここもあまり話したくはないようだ。
ーー話したくないところが多いねぇ~。どうやったら、チャミーに口を割って貰えるかな?
この様子だと必要な情報は聞けそうにないので、ノガワは少し質問の仕方を考える。
「ふぅ~ん。この町に直接恨みがないなら、どうして教会を恨んでるの?」
「………あれぇ~?教会を恨んでるって言いましたっけぇ~」
「いや。言ってないねぇ。でも、僕たちが初めて会ったときは、その前に、お姉さん教会に火を付けてたのかなって思って」
ノガワは笑みを浮かべて説明をする。
ーーそこまでバレてるなら話しても良いかと思うか、それとも、絶対に言わないと意思を強く持つか。
ノガワはチャミーがどう動くかと、期待と警戒の両方を込めた目線を向ける。
「そういえばそうでしたねぇ~教会で火事を起こすなんて、毎日やってたので忘れてましたぁ~」
「そうなんだぁ。………で?なんで、教会を焼いてたのかな?もし神の怒りを買うようなことがあれば、人間は魔族に負けちゃうかも知れないよ」
「そうですねぇ~。………でも、もう人間の勝利とか、どうでもいいんですよねぇ~」
チャミーは、少し馬鹿にしたような顔をしながら言う。
そんなことを気にしているのは、自分より格が低い証拠だとでも思っているのかも知れない。
ーーでも、簡易人側が負けても良いと思ってるのは、良いポイントだねぇ。
「ふぅ~ん。じゃあさぁ。こんなことを1人でせずに、魔王軍にでも入れば良かったんじゃない?」




