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101/160

101.皆さんを天へ導くために使うんですよぉ~

ガンガンガンッ!

固いものが何かにぶつかる音が聞こえてくる。ノガワは、それで更に恐怖が大きくなっていき、少しでも速くその場所から離れたくなった。今すぐにでも走り出したい。

だが、

 ーーここで来た道に走ったら、明らかに犯人?人かは分かんないけど、主犯にバレるよね?


それならばどうするか。この炎の中へ、駆け抜けていくしかない。ノガワは、足に力を込め、一か八か煙の中へと駆け出していった。できるだけ姿勢を低くして駆ける。

 ーーうわぁぁぁ!!!凄い煙があああぁぁぁぁ!!!!一酸化炭素中毒になるぅぅぅぅ!!!!!


「………っと、あれ?煙が、晴れた?」


ノガワは周りを見渡し、不思議そうに声を出す。

四方を全て煙で囲まれてはいるが、なぜかいるところにだけ煙がない。ノガワは、その原因を、

 ーーもしかして、炎の中心がここだったのかな?ここから周りに燃え広がっていって、ここは完全に燃え尽きた、とか?


色々考えることはあるが。取り敢えずノガワは一旦それを中止する。

その目に、映ったからだ、人らしきモノが。

ノガワはすぐに地面を蹴り、倒れている人のそばへ寄る。


「大丈夫?何があったの?」


「……うぅ。お、女が、女が鉄球を振り回して」


倒れてる男性に話しかける。

男性は必死に話そうとするが、7秒ほどで力尽きたようにぐったりとしてしまった。そうして顔を上げると、他にも倒れている人たちは沢山。

 ーー1人1人話を聞いていって、1番助けられそうな人を助けようかな?


「お兄さん。大丈夫?もう少し我慢できそう?」


「お姉さんはどう?立てそう?」


色々な者たちに話をしていく。数人は長く話せるものもいたが、隣町へ行けるほど軽症でもなさそうだった。体の部位の一部を失っているものも多く、手足がすべてある方が珍しい。

 ーー凄い惨状だねぇ。犯人は、鉄球振り回すとか、なかなかすごいけど

ノガワはこの惨状を作り上げた犯人の存在を考え、苦笑いを浮かべる。相当何かしらの恨みがあったのだろう。


「………ふぅふぅ」


遠くから、荒い息遣いが聞こえてくる。耳を澄ますと、ゆったりとした足取りの足音も聞こえてくる。

 ーーおっと!?例の犯人のお姉さんかな!?出来ればお顔を拝見しておきたいところだけど。

そう思いつつ、ノガワは灰になった建物の影に隠れる。そして、少しだけ顔を出して、やってくるモノを観察する。


「…………それでは皆さん。どうぞ、天へ昇ってお幸せに」


やってきたのは白いローブを着た女性。彼女は町のモノたちを見回してそう言い、また歩き出そうとする。

だが、ノガワの意識は彼女の発言ではなく、別の所へ向いていた。それは、

 ーーあ、あのお姉さん、3日前くらいにあった人じゃん!?


ノガワはなんと、その女性と顔を合わせたことがあった。とは言っても、少ししか話してはいないが。

彼女と会ったのは、ノガワが来てから魔王領に帰ってくる日。宿を出たときに、走ってくる彼女と激突したことを憶えている。

 ーーそういえば、あのとき教会で火事が起きてたね。あれも、お姉さんがやったのかも!?


「ねぇ。お姉さん」


そう思ったときには、身体が動いていた。

ノガワは隠れていた場所から姿を現し、女性を呼び止める。

 ーーかなり怖いけど、ここが1番の勝負所!ここで成果が出せれば、更に僕の目的へと近づけるはず!


「あらぁ~?まだ生き残りが………ん~?あなたはぁ、この間のぉ~」


女性の方も、ノガワのことを思い出したようだ。

 ーー黒髪は珍しいって言ってたからねぇ。憶えやすいんだろうなぁ。

ノガワはそう思いつつ、女性に話しかけていく。


「お姉さん。どうしたの?そんな危ないモノを持って」


「こちらですかぁ~?」


ノガワが彼女の手元へ視線を向けると、彼女もまた自分の手元へ視線を向けた。

そこには、所謂、モーニングスターというモノがにぎられていた。トゲのついた銀色の鉄球と短い棒が鎖でつながれており、その棒の方を女性はにぎっている。

 ーーそういえば、本当のモーニングスターはアレじゃなかったんだよね?………まあ、今はどっちでも良いかぁ~。それよりも、


「こちらはぁ、皆さんを天へ導くために使うんですよぉ~。……こんな風にぃ~」


「っ!」


女性は腕を振る。モーニングスターをにぎっている方の腕を。

ノガワはすぐに後ろへ跳び、建物の影へ隠れた。

直後、


ガンッ!

「ひぇぇぇぇ!!?????」


近くにあったモノが吹き飛ばされ、ノガワの口から悲鳴が出る。

次が来たら、確実に命を落とす。ノガワはそんな予感がしていた。

だが、その2回目は来なかった。


「何ですかぁ?あなたたちはぁ~。動けないはずですよねぇ~」


ノガワは隠れていたモノの影から、ひょいと顔を出す。

そこには、血まみれの光景が広がっていた。

女性の周りに、沢山の町の人たちが集まり、彼女へと迫っている。腕や足などを失っているモノも多いが、それでもボロボロになりながら、這ってでも彼女の下へと進んでいく。


「ふふっ。まるでゾンビだねぇ」

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