101.皆さんを天へ導くために使うんですよぉ~
ガンガンガンッ!
固いものが何かにぶつかる音が聞こえてくる。ノガワは、それで更に恐怖が大きくなっていき、少しでも速くその場所から離れたくなった。今すぐにでも走り出したい。
だが、
ーーここで来た道に走ったら、明らかに犯人?人かは分かんないけど、主犯にバレるよね?
それならばどうするか。この炎の中へ、駆け抜けていくしかない。ノガワは、足に力を込め、一か八か煙の中へと駆け出していった。できるだけ姿勢を低くして駆ける。
ーーうわぁぁぁ!!!凄い煙があああぁぁぁぁ!!!!一酸化炭素中毒になるぅぅぅぅ!!!!!
「………っと、あれ?煙が、晴れた?」
ノガワは周りを見渡し、不思議そうに声を出す。
四方を全て煙で囲まれてはいるが、なぜかいるところにだけ煙がない。ノガワは、その原因を、
ーーもしかして、炎の中心がここだったのかな?ここから周りに燃え広がっていって、ここは完全に燃え尽きた、とか?
色々考えることはあるが。取り敢えずノガワは一旦それを中止する。
その目に、映ったからだ、人らしきモノが。
ノガワはすぐに地面を蹴り、倒れている人のそばへ寄る。
「大丈夫?何があったの?」
「……うぅ。お、女が、女が鉄球を振り回して」
倒れてる男性に話しかける。
男性は必死に話そうとするが、7秒ほどで力尽きたようにぐったりとしてしまった。そうして顔を上げると、他にも倒れている人たちは沢山。
ーー1人1人話を聞いていって、1番助けられそうな人を助けようかな?
「お兄さん。大丈夫?もう少し我慢できそう?」
「お姉さんはどう?立てそう?」
色々な者たちに話をしていく。数人は長く話せるものもいたが、隣町へ行けるほど軽症でもなさそうだった。体の部位の一部を失っているものも多く、手足がすべてある方が珍しい。
ーー凄い惨状だねぇ。犯人は、鉄球振り回すとか、なかなかすごいけど
ノガワはこの惨状を作り上げた犯人の存在を考え、苦笑いを浮かべる。相当何かしらの恨みがあったのだろう。
「………ふぅふぅ」
遠くから、荒い息遣いが聞こえてくる。耳を澄ますと、ゆったりとした足取りの足音も聞こえてくる。
ーーおっと!?例の犯人のお姉さんかな!?出来ればお顔を拝見しておきたいところだけど。
そう思いつつ、ノガワは灰になった建物の影に隠れる。そして、少しだけ顔を出して、やってくるモノを観察する。
「…………それでは皆さん。どうぞ、天へ昇ってお幸せに」
やってきたのは白いローブを着た女性。彼女は町のモノたちを見回してそう言い、また歩き出そうとする。
だが、ノガワの意識は彼女の発言ではなく、別の所へ向いていた。それは、
ーーあ、あのお姉さん、3日前くらいにあった人じゃん!?
ノガワはなんと、その女性と顔を合わせたことがあった。とは言っても、少ししか話してはいないが。
彼女と会ったのは、ノガワが来てから魔王領に帰ってくる日。宿を出たときに、走ってくる彼女と激突したことを憶えている。
ーーそういえば、あのとき教会で火事が起きてたね。あれも、お姉さんがやったのかも!?
「ねぇ。お姉さん」
そう思ったときには、身体が動いていた。
ノガワは隠れていた場所から姿を現し、女性を呼び止める。
ーーかなり怖いけど、ここが1番の勝負所!ここで成果が出せれば、更に僕の目的へと近づけるはず!
「あらぁ~?まだ生き残りが………ん~?あなたはぁ、この間のぉ~」
女性の方も、ノガワのことを思い出したようだ。
ーー黒髪は珍しいって言ってたからねぇ。憶えやすいんだろうなぁ。
ノガワはそう思いつつ、女性に話しかけていく。
「お姉さん。どうしたの?そんな危ないモノを持って」
「こちらですかぁ~?」
ノガワが彼女の手元へ視線を向けると、彼女もまた自分の手元へ視線を向けた。
そこには、所謂、モーニングスターというモノがにぎられていた。トゲのついた銀色の鉄球と短い棒が鎖でつながれており、その棒の方を女性はにぎっている。
ーーそういえば、本当のモーニングスターはアレじゃなかったんだよね?………まあ、今はどっちでも良いかぁ~。それよりも、
「こちらはぁ、皆さんを天へ導くために使うんですよぉ~。……こんな風にぃ~」
「っ!」
女性は腕を振る。モーニングスターをにぎっている方の腕を。
ノガワはすぐに後ろへ跳び、建物の影へ隠れた。
直後、
ガンッ!
「ひぇぇぇぇ!!?????」
近くにあったモノが吹き飛ばされ、ノガワの口から悲鳴が出る。
次が来たら、確実に命を落とす。ノガワはそんな予感がしていた。
だが、その2回目は来なかった。
「何ですかぁ?あなたたちはぁ~。動けないはずですよねぇ~」
ノガワは隠れていたモノの影から、ひょいと顔を出す。
そこには、血まみれの光景が広がっていた。
女性の周りに、沢山の町の人たちが集まり、彼女へと迫っている。腕や足などを失っているモノも多いが、それでもボロボロになりながら、這ってでも彼女の下へと進んでいく。
「ふふっ。まるでゾンビだねぇ」




