100.ヤバい状況だって思って貰えたら良いね
「なんだ。ここ住まないのか?お前のおかげで盗みもしばらく少なくなるだろうし、治安は良くなると思うぞ。定住するには良い条件の場所だと思うが」
「うんうん。僕もそう思うよ。……でも、もうしばらくは旅をしていたいかなぁ。この旅が終わったら、また軍に戻るつもりだし」
「そうなのかぁ。それは残念。まあ、いつでも俺たちは待ってるぜ……ん?ちょっと待て。軍に戻るのが、またって言うのはどういう事だ?」
ノガワの言葉に違和感を憶えたようだ。男性が質問をしてくる。
因みに、最近ノガワが過去に軍へ行ったことを話しているのは、わざとだったり。
ーー僕みたいな子供でさえ、戦争に行かなきゃいけないほど、ヤバい状況だって思って貰えたら良いね。
「僕、ちょっと前まで兵士だったんだよぉ。ただ、イジメがひどかったから、一旦離れてきたの。ほとぼりが冷めて、配置換えが何回かされるまで、旅をしてるんだよぉ~」
「な、なるほどな。………お前も大変なんだなぁ」
「お、思ってたよりお前、苦労してんのなぁ。どっかのボンボンの息子なのかと思ってたぜ。ある程度金も持ってるみたいだし」
男性たちが同情の視線を向けてくる。ノガワはそれを見て。こちらの国でも変わらず手応えがあることを感じた。
ーー僕が軍にいたこと話すと、みんな同じような顔をするからねぇ~。北だけかと思ってたけど、こっちでも通用するのかなぁ~。良かった良かった。
ノガワは、この話は何処に行っても使えるかも知れないとまで思い始める。
ーーコレがいわゆる鉄板トークってヤツなのかな?
ちょっと微妙なラインだ。そうかも知れないし、そうじゃないかも知れない。
と、そんなことを思っていたら、男性たちは、
「それじゃあ、俺たちはそろそろ奴隷商の所と教会に行ってくる。ガキも、元気でな」
「あっ。うん。ばいばぁい!」
ノガワは手を振る。それに軽く振り替えしながら、男性たちは、捕まえた子供たちと共に歩いて行った。
子供たちの数は、大体20人ほど。かなりの収入になるだろう。
ーーでも、お兄さんたち、明日からの収入はどうするのかな?奴隷に出来る子供の数が減ったら、その分お兄さんたちの収入も減ると思うんだけど。
ノガワはそれを心配したが、子供たちのことを引き連れていく男性たちからは、一切そんな気配は感じ取れなかった。
ーー気付いてるのか、気付いてないのか。気付いてないなら、可哀想ねぇ。
ノガワはそう思いつつ、衛兵などから話を聞いて、宿へと行った。
その後は何かあるというわけもなく、いつも通り宿で客と話をしたり、その客の記憶を変えたり。
夜が明け、朝がやってくる。
ノガワは朝食を食べ、準備をして次の町へ移ろうと、村を出た。
「次はもう町なんだねぇ。特産品は、確か近くの温泉を使って作った温泉まんじゅうだったかな?」
温泉があると言うことは、近くに火山もあるのだが、そちらには行く気が無いので今はあまり考えないでおく。火山には、マグマに適応した人魚とか言う凄い種族もいるらしいが、今回は無視だ。
ーーっって、そんなわけないじゃん。今回も、ちゃんと仲違い狙っていくよ
国と火山の所で争いを起こすつもりだ。ただ、今回はメリットがあまりない。
元々人魚たちはマグマがないと生活できないので、前線に出てくると言うことはないのだ。そのため、簡易人側の大幅な戦力低下を期待することは難しいだろう。
ーーそれに、魔王軍に死者を出すのも難しいだろうから、すぐに鎮圧されちゃいそうだよねぇ。
さて、ではそんな人魚たちだが、戦えないなら何を行っているのか分かるだろうか。
彼らがやっている事。それは、鍛冶だ。
マグマの熱で鉄などはよく溶けるため、鍛治をするには非常に適した環境にあるらしい。
ーーまあ、鍛冶をしてるのは間違いないよね。ただ、本当に適してるかどうかは謎だよ。だって、きっと火山は……この燃えてる町より、熱いんでしょ?全然固まらなさそうじゃん。
ゴォォォォ!!!!!
ノガワの目の前の村は、激しく燃えさかっていた。あちこちに火の粉が舞い散り、ノガワの近くまで飛んでくる。あまり近づきたくはない。
ーー近づきたくはないけど、………人がいるんだよねぇ~。
ノガワの目には、1人の倒れている女性が映っていた。
ノガワは少し悩んだあと、覚悟を決めてその女性に近づいていく。
「大丈夫?」
「うっ。に、逃げな。速く」
ノガワの大丈夫かという質問には答えず、女性は逃げるように言ってくる。
ーー何があったんだろ?逃げろって言うって事は、誰かが放火した可能性がある?……い、いや。考えすぎかな?もしかしたら、ただ炎に焼かれないように、逃げろって言いたいのかも知れな、っ!?
ノガワは素速く横に飛んだ。そして、燃えている家の裏に隠れる。
直後、ノガワの話しかけていた女性の上を、人間の身体らしきモノが通り過ぎていった。
ーーひょ、ひょぇぇ!!????




