1.自分でやれよ
「ギャアァァァァ!!???」
悲鳴を上げながら落ちていく男子生徒。
その胸は、巨大な槍で貫かれていた。
どうしてこうなったのか、少し時間を戻そう。
『あなたたちには、これから異世界に行って貰います』
輝く女性が、清らかな笑みを浮かべてそう言った。
彼女の前にいる学生たちは、訳が分からないといったような表情をしている。
さっきまでいつも通り授業を受けていたのに、突然白い空間にいて、知らない人が異世界とか言ってるのだから不安は当然だろう。
『ふふっ。状況は理解できていなくて当然でしょう。でも、あまり慌てすぎるのも良くないですよ。この光景は、全ての電子機器で生中継しているのですから』
「はぁ?」
「生中継?」
「なんかの番組とかなの?ドッキリとか?」
学生たちは、ドッキリか何かであることを願った。
だが、その願いは届かない。
テッテレ~!ドッキリ大成功!!なんてことにはならなかったのだ。
「私は神。あなたたちを異世界に召喚するモノです」
「神?」
「自分のこと神って言うのかよ」
「うわぁ。厨二病じゃん」
学生たちは割と言いたい放題。
だが、そんなことは神なんだから気にせず、女神は説明を続ける。
「さて、先ほども言いましたが、あなたたちには異世界に行って、世界を救って貰います」
それから始まる、異世界の状況の説明や、召喚される場所の説明など。
学生たちは、それを半信半疑ながらも聞いていた。
そして、そんな中で、
「それでは、皆さんのステータスを確認して頂きます。ステータス!と叫んでも良いですし、念じて出しても構いません」
女神の指示に従って、各々の学生たちが、ステータスを確認していく。
それからの反応は様々で、誰かに自慢したり、効果を確認したり1人でじっと見つめたり。
数分間して確認が一段落すると、
「されでは、最後に質問を受け付けます。コレが終わったら、召喚しますねぇ」
質問タイムとなった。
とは行っても、まだ状況を完全に飲み込めていないモノが大半なので、質問を出しづらい雰囲気になっている。
だが、その空気を壊すようにすっと1つの手が上がった。
「あのさ。神なら俺たちに頼らずに自分で出来るだろ?自分でやれよ」
「「「……は?」」」
それを聞いた学生たちは唖然とする。
神なら何でも出来るし、俺たちいらなくね?
といわれれば、確かに正論だが、
『……そういうわけにもいかないんですよ。私は沢山の世界を管理していますから、こんな1つの世界に集中することは出来ませんし』
「は?それくらいやれよ。神なんだろ?というか、これくらい出来なきゃ神って言えねぇだろ」
神が絶対的な存在であると捉えるのなら、それは確実に出来ること。
というか、こんな学生たちに異世界のことを説明している時間があるなら、その時間で世界などいくらでも変えることが出来るはずだ。
そこまで考えた学生たちは、男子生徒の意見に納得したような顔をし、女神へ疑わしげな視線を向ける。
『……面倒ですね。何もしないならまだしも、召喚されてから平和につながらないようなことをされても困ります。ということで、あなたには見せしめもかねて消えて貰いましょう』
「え?」
パチンッ!
と、女神が指を鳴らす。
すると、後ろから羽の生えた女性が出てきて、手に持っていた槍を投げた。
その槍はまっすぐに飛んでいき、
ドシュッ!
と、男子生徒の胸を貫いた。
「ギャアァァァァ!!???」
悲鳴を上げながら、穴などないはずなのに白い空間の下へ落ちていく男子生徒。
学生たちは、ただそれを呆然と見つめることしか出来なかった。
その空気を、女神は壊す。
『私に逆らうようであれば、ああなるので気をつけてくださいね。……さて、それでは他に質問はありますか?』
女神が質問を促すが、手を上げるモノは誰一人としていない。
男子生徒と同じように殺されるかもしれないのに、手など上げられるはずがない。
それを見て女神は満足そうに微笑み、
『では、これから召喚を行いますね。それでは、良い異世界ライフを』
女神が手を振ると、白い地面から光があふれ出した。
数名の生徒が驚いて悲鳴を上げる。
そのまま光は強まっていき、生徒たちの姿はその空間から消え去った。
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