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「だって俺の能力はゼロなんだろ? どうやってなるんだよ?」
髭をさわりながら、おっさんが答える。少しダルそうにしているのが気になるが、まぁ、いいだろう。
「んー、まぁ、なんていうかー、才能ない君でも? なれる? それが魔導師? みたいな?」
「ムカつくな…… なんだよ、その一昔前のチャラ男みたいな話し方は…… 」
「なかなかじゃろ? 人間の世界であらゆる時代にいき、観察して身につけたんじゃ。お主知っとるか? 腰パン」
「死語だぞ、それ。そんなの身につけんなよ」
メラさんが、苛立ちながら話しはじめる。
「燃やされたくなかったら、話をきけ。お前にはまず、3ヶ月後に控えた魔法士認定試験を受けてもらう」
「えっ!? だから、ちょっと待ってくださいよ。俺魔法使えないんですよ。どうやって試験受けろっていうんですか。それにおれは、志帆ちゃんにふさわしい男になるためにきたんであって別にこの世界で魔導師になろうだなんて…… 」
「なにをごちゃごちゃと、調子にのるなよ、小僧」
「え?」
瞬間、赤い光を浴びたかと思えば、右手が激しく燃える。
「うわぁ!火が……」
俺は慌てて川に飛び込む。
なんとか、火を消すと、おっさんの声が聴こえ白い光につつまれる。
気づけは、元の位置に戻っている。
「あれ? どうして? 服も濡れてない、それに火傷もしていない…… たしかに、燃えたはず…… 」
「やれやれ、今のは流石に疲れたわい……」
俺はおっさんの方へ顔をけると、おっさんはくたびれたように腰をおろしている。
「時間を戻したんじゃ……、老体にあまり無茶はさせんでくれ」
「ちょっとおじいさま!なんでこんなやつ助けるのよ」
メラさんは不満げにそう言った。
「なんでって……、ここで死なれちゃ連れてきたワシもばつが悪かろう。よくきけ少年、魔法は誰にでも素質があるんじゃ、当然お主にだってある。それを開花させるかさせないかはお主次第じゃ。ここにきたのは、好きなおなごを振り向かせるためじゃろ? 魔導師の世界は厳しく険しい道じゃが、それだけの価値がある。きっとお主が思う理想に近づけると思うがの……」
(理想の自分…… そうだ、俺は今の自分を変えたくてこの世界にきたんだ。逃げてちゃ今までとなにも変わらない……)
「メラさん、素質ゼロの俺でも死ぬ気で訓練したら魔導師になれますか?」
「!?」
「ええぞ、ええぞ、そのいきじゃ」
メラさんのよりいっそう鋭い目が俺に刺さる。
「それはお前次第だ」
「よろしくお願いします」と頭を下げる。
こうやって誰かに頭を下げてお願いしたのはいつ以来だろう。
魔法とは、本来人間が持つオーラ(エネルギー)のようなものを実体化したものらしい。
そのため、個人の性格や性質によって魔法は変わり、どの魔法が適正かは見てみないとわからないとメラさんは説明してくれた。
「手をみせろ、魔法の性質をみてやる」
そういわれて、俺は手をだした。また燃やされそうで怖いです、とは口がさけても言えない状況だ。
メラさんがなにやら呪文のようなものを唱えると手が白く光る。
「おお!これが魔法か」
「なんと!…… 」
おっさんが驚いた顔で立ち上がる。
「お前、この魔法…… 」
メラさんが驚いた表情を浮かべている。
「どうしたんですか?」
「F素材の光魔法とは面白いやつじゃのう」
おっさんが嬉しそうにそう話すがなんのことかさっぱりわからない。
「なんだよそれ? いいってことか?」
「当たり前じゃ!ワシと同じってことじゃ」
「…………」ますます、いいのかわからない。
ふっ、とメラさんが笑う。
「どうやらただのゴミではなさそうだな」
「二人だけで納得してないで、教えてくださいよ」
「光魔法と闇魔法は特殊魔法とも呼ばれていて、唯一決まった性質を持たない魔法だ」
「えっと……、つまり?」
「本来、私のような火や、水、電気などの個性魔法はその性質の能力しか使えない。だが、光と闇だけは例外として、光や闇の他に様々な魔法が一通り使える。もちろん限度はあるがな」
「チート魔法ってことか……」
「チート?」
「すみません。なんでもないです」
「よし、明日から訓練を開始する」
「え?今からじゃないんですか?」
「ここでは、できる事に限界がある。それとお前に魔力を少し与えといた。これで街にでても不審がられる事はないだろう」
「あ、ありがとうございます」
「ふむ、そうじゃな、今日はもう帰ってええぞ」
「帰るってどこに?」
「明日また迎えにいくでな」
おっさんは右手を向ける。
「だから、帰るってどこにだよ。宿なんてとってないぞ」
体が光り俺は意識を失った。
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