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カラオケ店の前にはすでに、桜田志帆と宮上梨華が少し不満げな様子で待っていた。
「おっそい男子!女の子二人待たせるなんて!なにしてたの?」
そういって宮上は竹口に詰め寄ったが、竹口は怒られながらも照れていた。
「ご、ごめん。色々あってさ。桜田もごめんな」
「ううん、大丈夫。気にしないで」と言って笑顔を見せている。
まさに天使だ、俺は今カラオケ店の前で天使を見ている。そんな事を思いながら俺はその光景を眺めていた。
宮上は少し不満を残しながらも、桜田に同調した。
「まぁ、志帆がそういうんだったらいっか」
すかさず、竹口が盛り上げ役を買って出たかのように豹変する。
「よっしゃあ! じゃあ今日は歌って楽しもう!」
恥ずかしげもなく右手を高だかとあげる竹口はそのまま動かなくなり、時間が止まる。
「えっ?……」
困惑していると、深いため息が後ろから聴こえてきた。
「はぁー……」
「なんだよおっさん。今いいとこだろ?」
「いやー、戻しすぎたわ」
「は?」
「いや、時間をじゃよ。少し飽きてきた」
「おい、ふざけんな。これからカラオケ行ってそこで花火に誘うんだぞ? これじゃあ誘えないだろ」
謎の男は癖なのかまたしても髭を擦りなから不思議そうに答える。
「うん、そうだね。でもそれでどうなるの?」
「え? どうなるって?」
「いや、だから誘ってどうなるの?」
「それは……、誘って花火大会に……」
「うんうん、フラ……」
「フラれてねーよ」
条件反射でつい食い気味に謎の男の発言を止めてから俺はあることに気づく。
「そうか……。これじゃなにも変わらないのか……」
「そういうことじゃ、お前さんがしなければいけないのは変化をもたらすことじゃ。でなければ未来は変わらん」
「で、でもさ。おっさんも言ってたろ?花火に誘ってオッケーしてもらった理由がわかればって。それがまだわかんないんだ。でもそれを調べる方法なんて……」
謎の男は「うーん」と考えながらチラッと竹口を見た。
「あの男は?」
「え? ああ、竹口っていって小学校の頃からの友達だよ」
「お主はこやつが大事か?」
「なんだよ急に。そりゃあ大事だよ。いいやつだし、面白いし。俺の唯一の親友なんだ」
「そうか……、ではやめとこう」
「いや、気になるだろ。言えよ」
「この男が犠牲になるかもしれんぞ。それでも聞くか?」
俺は息を飲んだ。
「あ、ああ」
「ワシがこやつに入って状況を変える」
「え?竹口におっさんが入るって?」
「そうじゃ、まぁこっちの世界でいう憑依みたいなもんじゃ」
「入ったら竹口はどうなるんだ?」
「どうもならん、ワシが入ってる間だけ記憶がなくなるだけじゃ。だが、この男の楽しいカラオケの記憶はなくなることになる。じゃから……」
「やってくれ」
俺は即答した。
「え?」
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