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「んじゃ、やり直すぞ」と謎の男は髭を触りながら、答えた。
魔法なんて信じたことはないが、事実、俺は魔法のような状況を見せられている。もし、本当にやり直せるとしたら……
「ちょ、ちょっと待ってよ。今やり直したって結果は同じだろ?」
男は考える素振りをみせる。
「うーん。それもそうじゃな……」
「だろ? それにやり直すっていったいどっから……」
「そうじゃ! 心の声がそのまま口からでる魔法をかけてやろう」
名案だ、と言わんばかりの満足気な表情をしている。
「心の声? 嫌だよ! 恥ずかしいだろ?」
「お前さんのあの口下手な告白の方がよっぽど恥ずかしいわい。女の子は口先よりも心が伝わるほうが嬉しいんじゃよ。お前さんが心から思っていることを言えばきっと思いは通じる!」
この謎の男には妙な説得力がある。
「……なるほど、じゃあ、お願いします」
「うむ……。時間よ、戻れ。戻りなさい」
「なんだその呪文」
謎の男の体は白く発光して、その光は次第に大きくなり、目の前を白く染めた。
気がつくと、あの謎の男はいなくなっていた。
周りを見渡していると、鋭い重低音が響きわたる。
「綺麗……」
彼女の呟いた言葉に、ようやく状況を理解した。俺は告白する前に戻ったんだ。
次の花火が上がり、俺は彼女の方を向いた。
「あのさ……」
「どうしたの? 花火見ないの?」
「実は伝えたい事があって……」
「なに?」
「花火よりも綺麗な君の隣は僕だけの特等席だ。この夜空に永遠を願ってる。あと胸が……」
「えっ?き」
「ご来場の皆さまに申し上げます。市民花火大会にお越しくださいまして誠に……」
「ププ……」と不快な笑い声が後ろから聞こえる。
「おい……」
俺が振り向くと謎の男は吹き出したように笑った。
「ぎゃははは。なんじゃおぬし、そんな事考えとったのか。思わず女の子もきも……」
「いうな!それにこれはあんたの提案だろ。責任とれよ」
「いやいや、笑ってすまなかった。ププ、胸好き特等席君」
「こ○すぞ」
「いや、わるかった。そうじゃな、いきなり告白の場面からやり直すのは酷というもんじゃな」
「最初からそう言ってんだろ。どうすんだよ。巨大な黒歴史つくらせやがって」
「うむ……。それにしても、告白しても無理な男のお主となぜ彼女は一緒に花火大会に……それも二人だけで」
「それは……。俺にもわかんないよ。誘ったらその時は嬉しそうに……」
「それじゃ!! 彼女と花火大会に行く約束をした日に戻れば、なにかわかるかもしれん」
「……確かに、でもそんな事って」
「可能じゃよ。わしは魔法使いなんじゃから」
「…………」
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