12
俺は覚悟を決めた。やるしかないと拳を握る。いつのまにか震えがおさまっていた。きっとマリルやリアナが近くにいるからだろう。二人を危険な目にはあわせられない。
メラさんの体はより強い炎に纏われていく。熱気だけで体が焼けそうだ。
「マリル!リアナ! ここは俺がなんとかするから逃げて」
我ながらカッコいいこことを言っている。
言いながら、関連した映画のワンシーンが頭によぎる。その役者も同じような台詞を言っていた。仲間を守るため、暴漢に立ち向かっていく姿はカッコよく、憧れを抱くほどだった。しかし、この映画には問題がある。そのあとあっけなくやられてしまったのだ。
この台詞を言って助かるパターンなどないのではと言った事に後悔が押し寄せる。
どう考えても、みんなで戦ったほうがいいに決まってる。
「え?」と二人が驚き、顔を見合わせる。次の台詞はきっとこうだ。
なにいってんの! そんな事できるわけないじゃない。
しかし、予想は外れる。
「そうね、光魔法のホーリーならなんとかなるかもしれない」
なるわけがない。
マリルが助け船をだす。
「新人君、むちゃだよ。三人でたたかおう」
その言葉をまってました。心でそう呟いたはずが口からはあの映画の台詞が飛び出す。
「いいんだ。俺なら大丈夫だから」
(終わった…… )
メラさんからの攻撃を覚悟し、息を飲み込む。この世界にきて何度目かの、死ぬかもしれないを経験している。
攻撃にそなえ体をかたくし、身構える。しかし、炎が徐々に弱々しくなっていった。
「え? なんで?…… 」
ついに炎が消えて、メラさんがため息をついた。キョロキョロと周りを見渡している。
「もうそろそろいいでしょ? おじいさま」
マリルやリアナはもちろん、俺も状況が飲み込めず混乱する。
「うむ、そうじゃな…… 」
気まずそうに木の影からおっさんが姿を現す。枝や草が髭についていて、ふざけてるのかと思ったが、どうやらただ隠れるのに失敗していたようだ。
「おっさん!?」
「さっきぶりじゃな」
「これはどういうことだよ!?」
思わず声を荒げる。
「私が説明しよう」とメラさんが口を開く。
「お前ら三人は、これからチームとなって合宿に参加してもらう」
「合宿!? 」
「そうだ。魔法士認定試験まで日にちがない。そこで、本当に受ける資格があるのか、一番不安なお前らを試させてもらった」
「そんな、話が唐突すぎて、めちゃくちゃですよ。それに合宿って…… なにするんですか?」
「内容は同じだ。魔法戦をやってもらう。ただし今回お前らはチームであり、戦うのは生徒ではなく、本物の魔法士だ」
「え!?」
「本当は、お前らは今回の試験は出さないつもりだった。対抗戦をみて、今回受けるのは無謀だと思ったからだ」
(試験内容は知らないが、ごもっともだ。是非そうしてほしい)
「だが、おじいさまたっての頼みで、お前らを出すことにした」
(余計なことを……)
リアナが口を開く。
「そ、それで私達を試したってことなんですね」
緊張がとけて気がぬけたのか、リアナはその場にへたるように座った。
「そうだ。あの程度の魔法で臆して逃げていたら当然試験に出す気はなかった」
おっさんの視線を感じる。目線でお前は逃げようとしたがな、と言っているのが伝わる。
「じゃあ、機嫌が悪く暴れてるっていうのは?」
おっさんを無視してそう質問する。
「機嫌が悪かったのは本当じゃ」
「ちょっと、おじいさまは黙ってて」
「うむ、すまん」
マリルが周りを見渡して草木が燃えていないことに気がつく。
「そういえば、教官があれだけ炎を出していたのに、木や草が燃えていない…… よかった、これなら動物たちも大丈夫」
「ここは、昔、魔法士が訓練をするのに使っていた場所だ。そんな場所を私が燃やすわけないだろ」
やりかねんよ、あんたなら、そう思ったのは俺だけじゃないはずだ。
だが、もちろん口にはださない。
「確かに燃えかたが不自然だった。なんだ…… 本当に最初から仕組まれたことだったのか…… でも、なんで俺達がここに来ることがわかったんですか?」
「それは後々わかるじゃろ」とおっさんは話をはぐらかし、メラさんが改まる。
「お前ら三人は、対抗戦で一番課題が残る三人だ。まずお前は圧倒的な魔力不足と後先かんがえない短絡的思考」
「うっ……」
返す言葉もない。
「そして、マリル、お前は精神的な弱さと状況判断能力の欠如。リアナは魔力にムラがありすぎる」
はい、とリアナもマリルも落ち込んでいた。
メラさんが、話をまとめる。
「合宿の日取りは追ってしらせる。言われたことを意識して、その日までにお前らは鍛えておけ、以上だ」
メラさんは、そう言って森の中へと姿を消した。
「ごめんなさい。私、あなたのことなにも知らないのに酷いこと言って……」
リアナがマリルに謝っていた。
「ううん、いいの。私のほうこそ色々とごめんなさい」
二人の仲直りしている様子を見て安心する。
「よかった……」
「お主は帰るか、そろそろ?」とおっさんが聞いてくる。
「うーん、そうだな……」
帰ろかと思っていると、リアナとマリルが俺の方に近づいてきていた。顔を赤らめているように見えるのは気のせいだろうか。
「あのね、ホーリー」
「どうした?」
「ホーリが私達を守ろうとしてくれたとき凄くカッコよかったよ」
「なっ……」
「これからは同じチームだから頑張ろうね」
「う、うん」恥ずかしさから目を反らす。だが、俺にはわかった。マリルも同じ事を言おうとしていると。
「うん、新人君かっ……」
いいところで、俺は光につつまれた。
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