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『ラジタニア王国・都市セルリム』
学校をでてから、俺とリアナは街の中央にある広場のような場所にきていた。
そこには、魔法を使い、さまざまな大道芸をしている人が集まっていた。
見渡す限り魔法で溢れている。
火を使い、空中に文字を浮かべる人や風を操り空を飛んでいる人、どれも魔法の国ならではだ。
「ねぇねぇ!あれ見て、綺麗!」と興奮気味に俺の肩をたたき、指をさしている。
その方向を見ると空に魔法で星のようなものをちりばめている光景をみて感動していた。
「き、綺麗だね」
「うん……、これだけでも、今日ここにこれてよかった」
「そうだね……。本当よかった……」
(いや、だめだろ……)
「…………」
なんだこの映画のハッピーエンドみたいな状況は!これじゃあ、本当にデートじゃないか。
ふと志帆ちゃんの顔が浮かび、罪悪感に教われそうになるが、考えてみれば志帆ちゃんと俺は残念ながらまだそういう関係ではない。
「あっちでなにかやってる!」リアナは大道芸に夢中だ。マリルを探すのはどうなったのだろう。
ふと目を離すと、椅子に座り鏡をもった、怪しげな男にリアナは話しかけていた。
「あなたは、何をしてるの?」
男はニヤリと笑い鏡をリアナに向けると、リアナが動揺している。
「え…… 」
鏡を見てリアナは泣きそうになっていた。
どうやら、映し出されたのはリアナの母のようだ。映し出された母が鏡の中で動いている。
「お母さん……」
「凄いな、これはどういう魔法なんですか?」と男に訪ねる。
「はい、この鏡は今一番心に思い浮かべている人を映し出します。是非あなたもご覧になってみてください」
「それじゃ…… 」と鏡を見る。
服を脱ぎはじめている志帆ちゃんの姿が映した出される。運がいいのか悪いのかわからない状況に動揺する。
「なに!? あ、えっと、これは……」
「…… 誰?」リアナの目が笑っていない。
「いや、その友達だよ」あわてて鏡から離れる。
「ふーん……」
リアナは軽蔑するような視線を向けていた。
「なんで服脱いでるのよ。変態」
「いや、それは俺のせいじゃ……」
あたふたとした俺をみて、男がクスクスと笑い、説明する。
「この鏡は、思い浮かべている人の現在の様子を映すんです。きっとお風呂にでも入るとこだったのでしょうね」
「現在の姿…… あの、もう一度……。鏡を見せてください」
「変態、最低」即座にリアナが反応するが、「そうじゃないんだ」と否定する。
俺が見たい理由は、断じてもう一度志帆ちゃんがお風呂に入るまでを見たいからではない。
思いついた名案をリアナに話す。
「じゃあなんで見たいのよ。あの子の着替えるとこがそんなみたいわけ?」
「いや、違うよ。この鏡が思い浮かべている現在の様子を映すなら、俺がマリルのことを思い浮かべてこの鏡を見れば……」
あ、とリアナはようやく理解をしめす。
「これで、どこにいるかわかるかもしれないだろ?」
「そ、そうね……」
渋々納得してくれたようだ。
鏡を持っている男に「やってくれ」とお願いする。
男が再び鏡を向けると、狙い通りマリルが映し出された。
マリルは座り込み、遠い目をして、川を見つめていた。
「やった、成功だ。ここはどこだろう 」
「なんか、川辺みたいね……」
川辺という言葉をきき、寂しげなマリルの後ろ姿が最初にこの世界にきたときの竹口と重なる。
「あ、ここって……、まさか」
「しってるの?」
「うん、多分俺が最初にメラさんと会った場所かも」
「教官と? なんで?」
「話すと長いんだよ。それより、ここにはどうやって行けばいいんだ?」
男にそうきくと、鏡を向けて、マリルのいる場所までの道を教えてくれた。
街はずれだが、ここからそう遠くない。
「これで行けるわね」
「ありがとう。絶対また、来ます」本心でそう言ってマリルのいる川辺へ向かう。
道中、リアナから、「また鏡を見に行く約束するなんて、よほどあの魔法が気に入ったのね」と嫌みのような言葉を言われながらマリルの元へ向かった。
川辺に座っているマリルを見かけ、声をかける。
「マリル!」
驚いた表情で俺をみる、そしてリアナを見てさらに驚いている。
「新人君! え?リアナちゃん!?どうしてここに?」
リアナは困ったように「私は、ホーリーの付き添いなの。だから、なんできたかはホーリーにきいて」と答えた。
「ホーリー?」マリルが不思議そうに呟き、首をかしげる。
「そう!新人君の名前。知らなかった?」
「し、知らなかったです」
心なしか、リアナが嬉しそうにも勝ち誇っているようにも見える。
「そうなんだね、でも呼び方は人それぞれだから、マリルちゃんは新人君でいいと思うよ」
変な空気を察して会話に割り込む。
「そ、そんなことより、マリル大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫だけど…… どうして?」
マリルはまだ動揺している様だった。
「あ、ごめん。そりゃ驚くよな、対戦が終わったあとのマリルが落ち込んでるのがわかったから、つい気になって…… 」
「ううん、ありがとう。私は大丈夫。やっぱり新人君は優しいね」
最初に出会った時と同様の笑顔を向けられ、俺は少し安心する。
「そっか、よかった……」
「まさか新人君とリアナちゃんが来てくれるなんて思わなかったから驚いちゃった。私…… 魔法士向いてないのかも。強い二人が羨ましいな……」
「羨ましい?、じゃあ落ち込んでたのは負けたから?」とリアナはストレートな疑問をぶつける。
「お、おい…… 」
マリルがうつむきながら反応する。
「そういうわけじゃ…… ないよ」
「じゃあなに? 故郷から逃げてきたから?」
「え?……」
「リアナ…… それは、いいすぎだぞ……」
「ホーリーは黙ってて」
「う、うん……」
マリルの顔つきが変わり、リアナを睨んでいた。はじめて見る表情だ。
「逃げてないよ…… 」
「そう? 私、あなたの戦い見てたけど、自分から降伏してたわよね?それって戦いから逃げったってことじゃない? 故郷でもそうしてきたんじゃないの?」
流石に止めようと、声を出そうとした瞬間マリルが立ち上がる。
「なにがわかるの?……」
「え?」
「あなたに私の気持ちのなにがわかるの?……」
マリルは両手をリアナに向けた。
「お、おい、やめろって!」
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