5
グラウンドにはメラさんと、この学校の職員達が勢揃いしていた。強面の強そうな人ばかりだ。
中央には炎の線がひかれ、リングのような正方形ができていた。
「これより、魔法士対抗戦を行う!順番は決めていない。戦いたいやつがいたら前にでろ」
メラさんのかけ声とともにゼファルドが中央に向かい、リングの中に入る。予想通りの展開だ。
なんならこのあとは……
「おい!人間!てめえも前にでろ!」
やっぱりな。こうなりそうな予感はあった。
ここで逃げるわけにもいがず、渋々グラウンドの中央にいき、ゼファルドと対面する。近くで見ると迫力が桁違いだ。
身長は2メール以上はあるだろうか、体格は二回り以上違う。
こんな化け物どうしろっていうんだ……
「おい!お前ぐちゃぐちゃにしてやるよ」
恐怖で顔がひきつり、言葉が出ない。
怖すぎる……。
今話すと、声が震えそうだ。
「よし、準備ができたら始めろ!」
アバウトなかけ声で戦闘が始まった。ルール説明もなにもない。これじゃあ本当にただの公開処刑だ。
ゼファルドの体が先ほど見たのと同じように黒くなっていった。光沢を帯びて金属のように硬度を増していく。
「ちょ、ちょっとま…… 」
(うっ……)
腹部に激痛が走る。
風圧が来てすぐに鈍い音が身体中に響いた。ゼファルドの拳があばらに突き刺さっている。まるで鉄球でも当てられたみたいだ。
息ができずうずくまっていると、次々と背中に拳が降り下ろされた。
「どうやって紛れ込んだかしらねぇが、人間の分際で魔法士の世界にきてんじゃねぇよ」
こっ、殺される………
「ゆ、許してください」とうずくまりながら、命乞いをするが、ゼファルドの表情からは許す気配は感じられない。
「はぁ? なに言ってんだ? こんなんでやめるわけねぇだろ」
さらに、攻撃は激しさを増した。
「もう少しやれると思ったが、やはりこいつはつかえんな。そろそろとめるか……」
落胆したメラさんの声が微かにきこえる。
よかった……
安心して意識が途絶えかける刹那、また違う声がきこえる。
「おい!お主は本当にそれでよいのか!? このままじゃ戻ってもまたフラれるだけだぞ」
おっさんが叫んでいる声だった。
来てるのか……
おっさんの登場によってメラさんの驚く声がきこえ、職員がざわついているのがわかる。
「ワシはお主のいる世界にいって確かめてきた!」
確めた? なにを? 痛みで意識がもうろうとしてくる。
「お主がボコボコにやられたのは、お主が好きな桜田というおなごがお願いしたからじゃ」
「え……」
「お主に諦めてもらうよう、矢鍋という小僧に頼んだのじゃ…… つまり!!」
それは…… ここで言うことなのか……
「お主は元から嫌われていたんじゃ!!」
よりいっそう声を張り上げている。
クスクスと笑う声もきこえるようになった。そうか、おっさんは肉体だけじゃもの足りず俺の精神も破壊しにきたのか……
「ああ、すまん!それとこうもいっとったぞ。本当にごめんなさい…… とな」
!?
力を振り絞り立ち上がる。情けなさ過ぎて笑えてくる。
俺は謝ってほしかったわけじゃない……
「くそ…… なんだよそれ。結局フラれてんじゃねぇか」
「お、まだやるのか? 本当に死ぬぞ? お前?」
「うるせぇ」
「なに!?……」
もうどうでもいい、となげやりにも似た感情になっている。そうなりざる終えない。
志帆ちゃんのために異世界にきて、こんなゴリラに殴られて、結局嫌われてましたってオチだ。
「本当、自分が嫌になるよ。全てがバカらしく思えてくる……」
「ああ? 何言ってるかわからんが、お前はもう終わりだ」
おっさんの方を見る。
「おい!おっさん。こいつ倒す魔法あるか?」
「うむ、お主は自分で気づいていないだろうが、もうすでに魔法を使えるはずじゃ。気を落ち着かせて、集中することじゃ…… そうすれば、体をめぐる魔法の流れがわかる」
俺は目をつぶった。集中……
俺の体が白く光る。
「なっ!!? なに? 光魔法だと!?」
ゼファルドが驚くとどうじに歓声がきこえる。
「それじゃ!そのまま一ヶ所に光がいくように集中してみろ。変な妄想はするなよ……」
変な妄想? この状況でするかよ。
集中だ………。確かに魔法が体をめぐっているのがわかる。
……… おっさんの言う変な妄想ってなんだ?
そういえば、メラさんの衣装凄かったな……特に胸の辺りが……
光が男の大事な箇所に集まり輝きを放つ。
「ぎゃはは。あやつはやっぱりおもろいワイ」
見ていた生徒も爆笑している。
「おい、てめえ……ふざけてんのか?」
ゼファルドが完全にキレる。
「くっ……」慌てて拳に集中する。
これを外したら殺されるだろうな…… もう体力は残っていない。
チャンスは一度きり……
ゼファルドが躊躇なく拳を振りかぶる。
「もうくたばれ!人間!」
「今じゃ、拳をつき出せ!」
おっさんの声とともに拳をつき出すと、ゼファルドの顔にあたり、ゼファルドは凄まじい勢いでとばされ気絶する。
「うむ、まぁまぁじゃな」
周囲が唖然とした表情で俺を見ていた。
「かっ…… た?」
「凄い!新人君!」
マリルがおれに飛びつく。
「あ、ああ。ありが……と」
足に力が入らずそのまま倒れこんだ。
「新人くん!」
そのまま視界が暗転した。どうやら意識がなくなったらしい
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