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「ここにきたのは、メラからお前を連れて来るようにたのまれての。今からきてもらうぞ」
「わ、わかった。今日はどこにいくんだ?」
「お前は今日から魔法士官学校に入るんじゃ。同じように魔導師を目指すやつもおるじゃろ。そやつらと魔法を競いあって能力を磨いてくんじゃ」
「な、なんか、怖いな。 どんなやつがいるんだ?」
「そんな事しるか、もう遅刻しとんじゃ。最初の印象は最高じゃな」
「なんだよそれ、いつもみたく時間戻せばいいだろ?」
「それは無理じゃ。あの世界ではむやみに時間は戻せん」
「え? そうなの?」
「いいからゆくぞ」
そういって、おっさんは右手を俺に向けて、光を浴びせる。
光が収まると、俺は荒々しく人々が行き交う道の真ん中で目を覚ました。
周りには俺を囲んで人だかりができている。
「お、生きてんな」と人だかりから声がきこえ慌てて起き上がる。
「す、すみません」と頭をさげ、その場を立ち去る。
次からはもっとマシな場所にしてくれとおっさんにキツく言おう。
魔法でここにつれてこられたが、そのおっさんが見当たらない。
恐らく、と明らかに異様に目立っている建物の前にむかう。
門番とおぼしき二人に睨まれながら、建物を見上げる。
中世ヨーロッパの建築物を思わせる外観をしていて、小さな城のようだ。そして、校章と思われるエンブレムが屋根のすぐしたについている。
この建物の外観を見ているだけで、すでに重々し空気が体にまとわりつくようだった。
「ここが、魔法士官学校…… だよな?」
「なんだ貴様、なんのようだ」
門番の一人が槍を片手に前にでる。
「え? あ、すいません。魔法士の訓練をしにきました」
「貴様が魔法士? 見たところただの人間のようにみえるが? ん? だが、少なからず魔力はあるようだな」
きっとメラさんの魔力だ。
「まぁ、そうなんですけど、今から魔導師を目指すためにここにきたんです」
門番二人が顔を見合せて高々と笑う。
「魔導師だって!? 魔導師がなんだかしって言ってるのか?」
「いや……」
立ち止まっていると、光とともにおっさんが現れる。
「なにを、ぐずぐずしておる。早くなかはいれや」
「どこ行ってたんだよ。それが、門番の人が通してくれないんだ」
門番二人がおっさんに気づき目を丸くして急に姿勢をただした。
「シルバさま!? どうしてこちらに!?」
「シルバ?」
(おっさんのことか……)
「うむ、今日はこやつをここに連れてくるようにメラから言われていてな」
「メラさまに!? それは、気づかず失礼いたしました。どうかご無礼をお許しください。すぐに門を開けさせます」
変なおっさんとしか思っていなかったが、やはりこのおっさんは凄いらしい。
「じゃあ、メラさんのとこいこうぜ」
「いや、ワシはここまでじゃ」
「は? なんで!?」
「なんでって、修行するのはお主じゃろ?」
「そ、それはそうだけど、じゃあおっさんはこれからなにするんだ?」
門番が俺に対し、無礼なやつだ、と言っているのが聞こえるが、気にしない。
「そんなことお前さんには関係ないじゃろ。ほれ、さっさといけ」
「急に冷たいな、わかったよ」
俺は決心をして、門をくぐり建物内にはいる。
「遅い!! なにをしていた!」
中に入るとメラさんが待っていた。今日も刺激的な格好をしている。
「ごめんなさい。ちょっと色々ありまして」
「まぁ、いい。次は燃やす」
「は…… はい」
(燃やされるのを承諾する日がくるとは……)
「これから、貴様のクラスに案内する」
「クラス…… ですか?」
「そうだ。貴様は今日からこの学校で他の生徒同様訓練を受けてもらう。何か不服か?」
「いや、不服じゃないんですけど、僕まだなにも魔法が使えないんですが」
「ごちゃごちゃうるさいやつだ。いいからこい」
メラさんにつれられ赤いカーペットの敷かれた長い廊下を歩く。いくつかの部屋を通りすぎ、「ここだ」と足を止める。
メラさんが扉を開ける。
「席につけ。貴様らとこれから訓練を受けていくことになった、編入生を紹介する」
ざわざわとしていた教室が静まり、視線が俺に集まっている。人数はさほど多くない。だが、この静けさはまるで、あの日の学校のようだと、矢鍋に絡まれ教室を飛び出した記憶を呼び覚ます。
おかげで緊張は最高潮だ。
「は、はじめまして。今日から訓練に参加することになりました、桐島鳳理です。よろしくお願いします」
頭を下げると、「おい!お前人間だろ? 多少魔力があるようだが、俺にはわかるぜ」
丸太のように太い腕に分厚い胸板、そしてふてぶてしくも男らしい顔つきの男が不服そうにそういった。
「に、人間ですから……」
声をあげていた男の顔つきがかわる。それだけじゃない、クラス全体が重い空気になったのがわかった。
(この世界で、人間はタブーなのだろうか?)
「ゼファルド、やめろ」
メラさんが注意をする。もちろん手には炎がまとっている。
チッと舌打ちをして、静まるが、獣のように鋭い眼光をむけている。
「お前は、あそこにいるマリルの隣にすわれ。ちょうど席もあいている」
メラは、最前列の左端を見ていた。毛先の丸まった栗色の髪、頭には星マークの帽子をかぶった女の子が手をふっている。
「は、はい」俺は指示通り、席についた。
マリルは笑顔で歓迎してくれた。近くで見ると、目鼻立ちをハッキリとさせ、小さい顔をしている。まるでお人形さんみたいだ。
「新人君よろしくね」
久々に人の笑顔を見た気がした。緊迫した日常が続いていたせいか、その笑顔が今の俺には凄く嬉しい。
「よ、よろしく。マ、マリルさん」
「マリルでいいのだよ、新人君。気を楽にしたまえ、君が思うよりもここは厳しいとこだよ」
「厳しいんですね、なおさら気を抜けないです」
あはは、とマリルは笑う。
トリケラトプスによく似た恐竜のぬいぐるみをフワフワと浮かせ、俺の顔を角でつついている。
「それと、君と私はクラスメイトだ! 敬語はやめたまえ」
「よろしくマリル。話せてちょっと気が楽になったよ。ありがとう。それより、さっきから角…… 刺さってるよ」
なんとか笑顔をつくりそう言うと、「トキシーも君を歓迎しているのだよ」とトキシーと名付けられたぬいぐるみを今度は俺の目の前で浮かせている。
「あ、ありがとう。トキシー」
マリルの第一印象は優しく、笑顔の可愛い子だ。そして…… かなり変わった子だ。
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