海中のダンジョン③
「………。」
「………。」
「………これなんこめのしま?」
「………20からはもう数えてない」
5個目の島ぐらいまでは目新しいことがたくさんあった。 モンスターだけでフロッグマンの他に、巨大な山椒魚やリザードマン、空を飛ぶペンギンや火を吐くシロクマなど様々な種類のモンスターがいた。 そして島ごとの地形も違い、本当に冒険をしているような気分になっていた。 5個目の島ぐらいまでは。
「もう飽きたよ」
「次の階段どこですかね……」
「そもそもおわりがあるの?」
そう、問題はそれ以降であった。 10個目の島まで行くと、もはや島の形もモンスターの種類も使いまわし。 もはや前に進むだけの作業となっていた。
「またこの地形ですね。 木々が生い茂ってかき分けていくタイプと、はいはい…面倒ですね~~~~」
元気なアニーちゃんの元気ももうないと思われたその時。
グエッ グエッ グエッ
「またこのカエルだね 【アイス】」
あることに主人公が気が付いた。
「それじゃあ次に………ん? またこのカエル? 同じ地形? ……なあ。 カエルの使いまわしの中に同じ地形ってあったか?」
「………そういうこと!?」
「「どういうこと?」」
サンも言われて気が付いたらしい。
「「にこめのしま(二つ目の島)だ」」
「もちろんたまたま同じになっている可能性もあるが、いつ終わるかも分からないなら…… 一度戻るぞ、ここのスタート地点に!!」
「「おーーー!!」」
ようやく島の攻略が終わる可能性が見えてきて、元気になったジャックとアニーだった。
「普通に前の島と繋がってるだけだけど?」
引き返した4人だったが、普通に前の島と繋がっているだけでガックリと肩を落とした……と思ったその時。
「【サンダーフォール】」
ジャックが左右の海に向かって魔法を使い始めた。
「どうした?」
「んーこっちでもないか【サンダーフォール】」
ブシュゥゥゥゥ!!!!
「おぉっ!?」
「あ、やっぱり当たった」
ジャックの雷の魔法は、海の上に居た見えない巨大な蛤のようなモンスターに当たった。 雷の魔法は巨大蛤に効果が抜群だったのか、まるで痛がるかのように水管から水を吹き出し、海に沈んでいった。 そしてそれと入れ替わるように、これまでは海だと思っていた場所に、最初に降り立った島が現れた。
「蜃気楼……のようなものか?」
目を凝らすと分かったが、最初の島の奥にはこれまで進んできた島々があり、実は最初の島を囲むようにして2個目以降の島々があった。
「なるほど!! 2つ目の島に木々が多くてこんなに進み辛かったのは、方向感覚を鈍らせて術中?に嵌めるためだったんですね!!」
「きがつかなかったら…ずっとぐるぐるしてた」
振り返ってみると恐ろしい魔法?であった。 実際に主人公たちは気付かずに2週目に行きそうになっていた。
「最初の島に戻っては来たけど……まさかそんなことあるか?」
「嘘だよね? 他の島に行った意味って………」
最初の島に戻ってみると分かったが、上から降りて来た階段の後ろに下へと降りる階段があった。 巨大蛤が隠していたと思えば分からなかったのもしょうがないが、探せば見つかったかもしれないことを考えると倒れそうになるのも仕方なかった。
「流石に休みましょう……精神的に疲れました…」
「うん……」
島々を回っているのに加えてこのダンジョンの中では日が沈まないからか、4人は今の時間も分かっていなかった。 既にダンジョンの外は朝に差し掛かるところで、実のところ4人は一晩中探索させられていたのであった。
「テントも張ったから休むから中で…って早いな」
「「「zzz.........」」」
主人公はダンジョンと融合したことで休む必要もなかったようだが、3人はもう限界を迎えていたようで、主人公がテントを張り終わった頃には砂浜で寝ていた。
「どれだけ疲れてたんだ…砂浜は体温も下がるし、危険なんだけどな」
≪一晩中探索していれば普通の人はそうなりますよ≫
「……そんなに探索してたの!?」
流石にラフィスは分かっていたようで、主人公もそう言われてようやく、真上にあった太陽の位置がずっと動いていないことに気が付いたようだった。
「とりあえず運びますか」
このまま置いておくわけにもいかないので、主人公は3人を抱えてテントまで連れて行った。
「まあセーフティエリアでもないんだ。 普通にこうなるに決まってるよな」
≪さっさと終わらせましょうかマスター≫
「だな。 ≪纏い≫」
3人をベッドに寝かせ、もう一度テントの外に出て来た主人公の目の前には、大量のモンスターが海岸を囲んでいる光景が映っていた。
「≪テントに近付かれたら負け? まあ余裕だね≫」
一斉に攻撃してきたモンスターたちの攻撃を叩き落しつつ、一定のラインを越えて来たモンスターから順に消し飛ばしていった。
「…………俺…死んだな…。」
どこかで見ていた謎の男も主人公の無双劇を見ながら死にそうになっていた。




