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俺?ダンジョン!?  作者: 東歌
帝国動乱編
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絶望の日

大学の対面授業が増えるせいで毎日投稿は出来なくなりそうです。 毎日楽しみにしてくれていた人は申し訳ねぇ...



 ≪今更なんですが、ニコル様に転移させてもらった方が速かったのでは?≫


 「いや、今それ言う!?」



 現在主人公高速移動中である。 意外と時間がかかる道中のせいか、冷静さを欠いた結果無駄に走っている主人公はラフィスにいじられていた。



 「マジで時間かかりそうだな…纏っていいか?」


 ≪しょうがないですね≫


 「サンキュー。 ≪それじゃあ急ごうか≫」



 魔法学園の授業で戦闘を教えているおかげで主人公自身の練度も上がったのか、纏った後の主人公は速度だけならアランすらも凌ぐほどだった。


 仮にここで“纏い“を使っていなかったら、ジャックは死ぬこととなっていただろう。 結果的には良かったのだろうが、むしろここで使ったことで間に合ってしまったとも言える。


 これまで主人公はほぼ無敵な状態だったため、”死“と向き合うことなんて無かった。 見知った生徒が死にかけることで、主人公の死に対する意識は変わっていくこととなる。











 「≪ギリギリ間に合ったね≫」



 遠くにある砦の傍に見たことのある魔法が見え、ホッとした主人公だったが、それで速度を緩めたことが絶望へと繋がる。




 「勝ったけど…やりすぎた!!」


 「これって賠償しなきゃいけないかな!?」




 ヴェントやフロンの声が耳に入ってきて、クスリと笑った主人公は、その数秒後の焦った声に驚愕することとなる。




 「ジャック!!!!」


 「サン!!!!」




 「≪!? 間に合えっ!!!!≫」





 グシャッ



 速度を上げてしまったせいで、主人公は兵士がジャックの顔面を貫く瞬間を目撃することとなった。











 「あ……え?…じゃっく…くん……あ…あ」



 「≪アホか!! さっさと回復魔法をかけろ!!!!≫」



 ジャックを攻撃した兵士を消し飛ばし、倒れているジャックへと近付いた。 当のジャックは顔の半分が潰れ、ビクンビクンと痙攣していて、もう間に合わないとも思えるほどだった。



 「は、はい!!【パーフェクトヒール!!】」



 「ツクル先生……これはもう回復魔法をかけても…」



 「≪ここで使わないでいつ使うんだって話だよね。 使えるか分からないけど、ほい。 世界樹の雫≫」



 既に回復魔法も効かなかったため、主人公が虚空から取り出したのは某ゲームのHP全回復アイテム…のようなもの。 ガチャで出たはいいものの、この世界で使えるのかすら分からず放置していたアイテムだった。



 「≪あ、こんな感じなのね≫」



 キュポッと蓋を外してジャックに振りかけるとジャックの体は光り出し、光が収まった後は無傷のジャックが倒れていた。



 『ええぇぇぇぇぇぇ!?』



 魔法よりも魔法しているそのアイテムに、顎が外れるほどに驚く5人だった。



 しかし、無傷になったはずのジャックは…数日間、目を覚まさなかった。











 場所は変わってある川の傍、一人の子供が呆然と立ち尽くしていた。



 「ここはどこ? 僕は昨日までお母さんと一緒にいたはずじゃ…?」



 その姿はどこかジャックに似ていた。 そんな子供に近寄る一つの影があった。



 「おぉ? また一人来やがったか、おいお前。 こっちについてきな」



 その姿は鬼と呼ばれるもので、その子供の3倍ほどの身長があった。 そしてついて来いと言ったあと、その鬼はズンズンと歩き出し。 ……見えなくなった。



 「おいおいおいおい!? ついて来いって言ったよな!?」



 帰ってきた。



 「お母さんが知らない人にはついて行くなって」



 「いい子ちゃんかよ!? なんでこんな奴に限ってすぐ死ぬんだろうな…」



 仰々しいリアクションで四つん這いになった鬼であった。



 「すまんがお前さんをここに置いてくわけにもいかないんだ。 落ちないようにしっかりつかまっとけよ!!」



 子供を肩に抱えた鬼は、先ほどと同様にズンズンと歩き出した。






 そうして歩いていると、子供たちが集まったような場所があった。 その場所まで行った鬼は立ち止まると…



 「おぅい先輩!! また一人連れてきたぜぇ!!」



 「おぉ、最近多いよな。 愛されてるくせに親より先に死ぬガ……キ……?」



 先輩と呼ばれた鬼は子供をチラッと見ると、何故か汗をダラダラと流し出した。



 「おおおおおおい、おま、お前、いや、君? 家族か誰かに恐ろしく強い黒髪の奴がいたりする…かな?」



 「? いないと思うよ?」



 「ほんとか? 嘘言わないよな? 俺大丈夫だよな?」



 「何言ってるんですか先輩?」



 挙動不審な先輩鬼を心配したのか、子供を連れてきた鬼がそう聞くと…



 「そうか、お前はいなかったよな。 あの“絶望の日“と呼ばれた時は。 あの時…俺たちはいつも通りに死人を向こう岸に運んだり、子供に石を積ませたりと仕事をしていたんだ。 そうしていると、どこからか一人の黒髪の男が現れ、賽の河原を一瞬で消し飛ばした…。 ………その男の匂いがその子供には付いてるんだ!!!!」



 「何言ってんですか先輩? 夢を見るのは寝てるときにだけにしてくださいよ」



 何をほざいてるんだと後輩鬼が適当に返事をしていると、抱えていたはずの子供から光が溢れ出した。



 「やっぱりそうじゃねぇかぁぁぁぁ!!!!」



 先輩鬼は防御を固めるが攻撃するわけではないのでその意味もなく、光が収まると子供の姿はどこかに消えていた。











 「ん? 鬼さん? あれ?」



 「じゃっく!! だいじょうぶなの!?」



 「ごめんなさい……誰ですか?」



 死ぬ寸前だったジャックは数日かけて目を覚ましたが、目の前で心配するサンを見るジャックの目は、知らない人を前にした子供が恐怖で怯えるような目をしていた。



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