パーティーグッズ 鼻メガネ
「な、何故死なない!! バケモノめぇぇぇぇ!!!! 打てぇぇぇぇ!! 打ち続けろぉぉぉぉ!!」
ダダダダダダダッという銃声が響き渡り、すべての弾丸が一人の男に降り注ぐ。 それにもかかわらず攻撃の中心で俯いているロングコートの男は無傷で、その肩には大剣が抱えられていた。
「どうしてこうなったんだろうな~ラフィス~」
≪運が悪かったですねマスター≫
そう、打たれ続けている男とは皆さんおなじみ主人公である。 そんな主人公が最前線の真っ只中に現れた理由は数十分前に遡る。
「そういえば兄さんって武器使わないの?」
そろそろ帝国軍の進軍も激しくなり、離れで遊んでいるわけにもいかなくなった主人公たちも前線に行こうかという話になっていたところ、突然ミウがそんなことを言い出した。
「いや、籠手を使ってるだろ」
「嘘は良くないのじゃ。 使ってないじゃろ」
なお、主人公が使っていると言い張っているアランからもらった籠手だが、“纏い”を使うようになってからは倉庫番となっている。
「それじゃあ兄さんは今からみんな一回ずつ引いたガチャから出た物を“絶対に”使って、戦争を戦い抜いてもらおうか!!」
「それマジで言ってんのか、美羽?」
そうそう、主人公はどこぞの配信者とは違…
「まあやってみるか」
うせやろ?
「それじゃあまずは私からね!! ポチッとな」
まずはミウが引くが、流石の運の無さ。
「たわし……どう使えと?」
「……おまもり?」
「じゃあ次は我じゃの。 ほいっ」
押した瞬間ガチャの画面が光り出し……
「おぉぉぉぉ!! 流石はわ…れ?」
「ぶふぉっ は、鼻メガネって…ククッ、あはははは!!!!」
主人公よ…笑ってるが、付けるのはお前だ…。
≪安心してくださいマスター。 効果は強いです。 完全隠蔽の効果があるので、付けてもマスターだとは誰も分かりません≫
「ん?……ちょっ、え? これ着けて戦うの俺!?」
気づくのが遅い…。
「それじゃあ私も引きますねっと」
絶望する主人公の手前、虚空から現れたのは…
「ノエルぅぅぅぅ!!!! 最高だぁぁぁぁ!!!!」
「ちっ」
「せっかくの鼻メガネなのに!?」
現れたのはフード付きのロングコートのような防具だった。
「あっ、私も引いていいんですか? それじゃあ…」
「あべしっ!?」
皇女が引いたものが空中に現れ、主人公の頭を強打した。
「お、大きいね」
「大剣…使えるかの?」
「ご、ごめんなさいツクル君!!」
引いたものは主人公の2倍以上の長さの大剣だった。
「それじゃあ最後に俺だな!! 頼むぅぅぅぅ!! 普通の!! 普通の何かを!!!!」
≪あっ≫
何かを察したようなラフィスの声がその場に響き渡る。
「………ラフィス? 何だった?」
≪どうぞ。 マスター≫
ポロッと主人公の手に出てきたのは……
「なんだこれ?」
何かわからない球のようなものだった。
「なんか押すとこあるよそれ?」
「ん? そうだな」
ミウに言われて小さなボタンのようなものを押すと……
「な!? なんだ貴様は!!?? 戦場に突然現れるなんぞ、亡霊の類か!? 打て!! 打てぇぇ!! こちらは魔法銃だ!! 亡霊の類でも効くはずだ!!!!」
主人公は転移し、草原の中心に現れる。 魔法銃を撃ちまくる軍の逆サイドには、おそらく王国の魔法兵らしき軍団が並んでいて、そちらもそちらで警戒はしているようだ。
「な、何故死なない!! バケモノめぇぇぇぇ!!!! 打てぇぇぇぇ!! 打ち続けろぉぉぉぉ!!」
ダダダダダダダッという銃声が響き渡り、すべての弾丸が主人公に降り注ぐ。
「どうしてこうなったんだろうな~ラフィス~」
≪運が悪かったですねマスター≫
「はぁぁぁ……まあ一応王国軍を助けにきたからな。 帝国軍に攻撃するかぁ…」
主人公は大剣を両手に持ち、振り上げる。
「流石に大剣の扱いなんて分からんな…ラフィス」
≪了解です。 マスター≫
「≪纏い≫」
見た目は中性的に変わるはずだが、今回はロングコートで隠れていて分からない。
「なぜ倒れない!! 大砲部隊も打て…? ど、どこに消えた!?」
刹那。 目の前にいたはずの主人公が消え、帝国軍は銃撃を停止する。 直ぐに将軍らしき人物がキョロキョロと辺りを見回そうとすると、将軍を覆いつくすように影が出来る。
「上かっっ!?」
「≪ほいっさっと≫」
ボフンッッ
適当な掛け声とともに振り下ろされた大剣は、刃の部分ではなく大剣の腹?の部分を下にしたため、土埃が巻き上がった。
「くっ!? クソッッ!! ゲホッゴホッ!! ど、どこに!?」
「≪おりゃっ≫」
「ぐおっ!? ぐっ、がっ、がはっ!!……」
主人公に大剣の腹で薙ぎ払われた将軍は、肋骨が折れる音を聞きながら地面と平行に吹き飛び、地面をバウンドしつつ生えていた木に叩きつけられた。
ちなみにだが、知覚はできていないため問題はないが、大剣を叩きつけた時にちらっと見えた鼻メガネのせいで絶妙にダサい。
そして将軍が気絶すると命令をする人物がいなくなったためか、帝国軍は動きを完全に停止した。




