食材のダンジョン
今度こそダンジョンの前に着けたようで、二人の前には洞窟のような形のダンジョンが建っていた。 周りには冒険者ギルドらしき建物に連なるようにしていくつかの建物が並んでいる。 また、ここも小さな壁に囲まれてはいるが、出入口らしきものは見当たらず、ゲートだけが移動手段のようだ。
「ここが今日行くダンジョンですか?」
主人公は今度こそ間違えていないだろうなと考えながら、少し冷めた目でアランを見た。
「うぐっ、今回は問題ない。 ここで合っている」
未だに気まずいようで、少し呻きながらもアランは同意した。
「そ、それじゃあ入るか」
ダンジョンに入る際の登録は既にすましたようで、入り口の前に立っているギルド職員に紙を見せると二人はダンジョンの中に入っていった。
「ほぇ~~」
洞窟から入ったはずだが、ダンジョンの中は青空が広がっていて、地面には草が生い茂っている。 初めて入ったからか主人公はまるで草原の中にいるような感覚がしているようだ。 外はようやく明るくなり始めたころだったことを考えると、ダンジョンの中は昼夜の概念もないと思える。
「ほれ、今日はこれを使え」
その言葉と共にアランは背負っているカバンから一つの剣を取り出した。 地球でいうところのアーミングソードだろうか、冒険者には一般的な武器らしく、初心者に使わせるには最適らしい。
「おぉ、ファンタジーだぁ」
剣を手渡されたのはいいものの、主人公の目線はアランのカバンに向いているようだった。 それもそのはず、アランのカバンは剣を入れるのには小さく、ファンタジーの代名詞であるアイテムボックスそのものだった。
「アランさん!! それどこで買えるんですか!?」
目をキラキラと輝かせながら言った言葉に覚えがあったのだろうか、アランは苦笑しながら話した。
「このバッグは高難易度のダンジョンで入手したやつだから買える物じゃねぇな」
「なん…だと…(ガクッ)」
異世界ならありふれているとでも思っていたのだろうか? 現実はそんなに甘くない。
そんな主人公にアランは笑いながらも二人は歩き出した。
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少し歩くと様々な動物の姿が見えてきた。 それらはすべて草食動物のように思えたが、刀のように鋭い角や爪を持っていたり、明らかに毒々しい見た目をしているものまでいた。
「気を付けろよ、そろそろあいつらのテリトリーに入るぞ。」
「どうするんですか? めちゃくちゃ数多いですけど…」
「普通の冒険者だったらこの群れから離れたやつのタゲをとって少しづつ倒していくんだがな、今回は俺がいるから……減らす。」
その言葉と共にアランは目の前から消えた。 覚えているだろうか?主人公のステータスは現状ではあるがカンストしていた。にもかかわらず文字通り“消えた”
…………刹那、ダンジョンにドゴォォォォッンという轟音が轟いた。
後に残っていたのは3体のモンスターのみだった。
「なん……だと……? (見えてたか?オペレーター?)」
≪ええ。 しかし、ぶれていました。 神に作られた能力をもってして“ぶれて”いました。≫
「ははっ、当てになんねぇなステータスも」
それだけでもアランが神に近しい能力を持っていることがわかる。Sランクは化け物の巣窟なのだろうか? そう考えているとアランがゆっくりと戻ってきた。
「ほれ、減らしてきたぞ 異世界人ならレベル1でも3体ぐらいいけるだろ?」
「が、頑張ります…」
あの大虐殺の後だと主人公も不憫である。ちなみにドロップ品はアランが回収してきた模様。
というわけで主人公のターンである。 もちろん異世界での戦闘は初であり、ステータスがどれほど現実に影響を及ぼすかわからないからか、慎重に行くらしい。 アランのように瞬間移動ができるわけではないので、ソロリ、ソロリと距離を詰めていく。 ダンジョンだからだろうか、モンスターも逃亡をせずにしっかりと身構えている。
「さーて頑張りますかね。 (オペレーター、そっちでも鑑定ってできるか?)」
≪もちろん。 右からホーンラビット、ラッシュバイソン、ドリームシープです。 ホーンラビットは角を持っているだけの兎、ラッシュバイソンはスキル“突進”を持っているバイソン、ドリームシープはスキル“悪夢”を持っている羊です。≫
「(とりあえず一番危険そうなのはドリームシープか?)」
≪いえ、悪夢も対象に向けて使うスキルの括りに入るので、すべての攻撃は無効化されるかと≫
「………とりあえず斬ってみるか。」
おそらくすべての攻撃は無効化されると知ったからだろうか?脳死で攻撃してみるらしい。
そういいながら3体のモンスターに向かって足を踏み込んだ。




