ダンジョンへ出発
…たー…マスター!!朝ですよ!!≫
「ぅおぉ!?≪朝です、マスター≫おぉ、おはよう」
朝といっても周囲はまだ暗く、その上、頭にガンガン響き渡る声に強制的に起こされたようで、起き方は最悪と言えるだろう。
それに加えて、やはり異世界のためかベッドの質も良いとは言えず、軽くだが隈もできている。
今日からダンジョンに潜るらしいが、この様子だと少し心配である。
「まだ暗いけど…なんで起こしたんだ?」
≪おそらくアランさんは起きていると思われます。下から物音がするので。≫
「なるほどな…下降りるか」
不服だとは思いつつ起こされた理由に納得すると主人公は一階へと降りていった。 一階へ降りると厨房には明かりが付いていて、何かを焼くような音も聞こえてくる。
「おはようございま~す」
「おぉ!おはよう! よく起きれたな!?
とりあえず朝飯作ってるから食堂の方で待っててくれ!」
「了解です!」
アランは炒飯らしきものを作っているようで、フライパンをかき混ぜながらそう言った。 そこから十分程度待っていると…
「お待たせ、兎肉のシチューとオーク肉の炒飯だ。 今日からはダンジョンでこいつらの肉を狩るからな、美味さを知っていれば殺すときの気も楽になるだろうよ。」
「なるほど…いただきます………めっちゃうまぁ!!?」
兎肉のシチューは兎の旨味がシチューにしみこんでいて味に深みが生まれている。 その分兎肉自体の臭みも濃いのかと思いきや、それも全くない。それこそ万人受けするシチューといえるだろう。 それに対してオーク肉の炒飯は味の暴力!!とも言える味で、これぞ冒険者が食べる飯という感じだ。ガツンッ!とくる味ではあり、兎肉に比べると少し臭みがあると感じるが、それがむしろ炒飯にあっていて疲れている時に元気が出るような味だと思える。
寝起きが悪かった主人公にとっては最高の朝食であると言えるだろう。
「これはダンジョンに潜って狩ってくるだけの味はありますね! 今からダンジョンに潜るのがわくわくしてきましたよ!」
「だろ? それじゃあさっさと食っちまえ、少し早いがダンジョンに行くことにするからよ」
「…? いいんですか?ここって食堂なのに、朝食は?」
「冒険者は朝から飯なんて食っていかねぇよ、そもそも一日の金が無いやつだっているしな。 金のあるやつだっていちいち食堂で食わずに簡易食で済ます。」
そもそも金があるやつが冒険者なんてやっていることの方が少ないだろう。それこそ王族や貴族の道楽などはあるだろうが、今いる場所は緩衝地域。それらもいるはずがない。
そのような他愛もない話をしつつ薄く日が昇り始めたころ、アランの準備も整ったようで主人公とアランはダンジョンに出発することになった。
食材を狩るためのダンジョンに行くには街の中心部にあるテレポートゲートを使うらしく、移動方法のみを考えれば現代日本よりも便利だといえるだろう。
「そういえばツクル、お前武器どうする?とりあえず防具は今のままでも問題はないだろうが、流石にモンスターと戦うのに武器なしじゃあいかんだろ。」
「武器…どうしましょう?」
「とりあえず今日は俺の持っている適当な武器を渡す。
後で武器屋を紹介してやるからそこで買うか作ってもらってこい。」
いざテレポートゲートに着いたはいいものの、誰もいないようで、管理が心配である。 テレポートゲートの見た目は「ゲート」と名はついているが扉の形ではなく、円形の土台に魔法陣らしきものが描かれており、その中心には行く場所を選択するためだろうかモニターらしきものが浮かんでいる。
「これって管理とかしなくていいんですか?壊れたりとか…」
「そこは心配しなくて大丈夫だ。 ダンジョンから入手できるものの中には不壊や不変のスキルが付いているものが出ることがあるが、このゲートもそうだからな。
ほれ、さっさと中に乗れ。 一応言っとくが外側の線から外には出るなよ?
切れるぞ、体が」
「ひぇっ」
恐ろしいことを言われた主人公は急いで中心に近づいた。 なお、仮に主人公が線の上にいるとすると魔法陣の方が破壊されるのは内緒である。
内側に寄った時にアランがゲートを作動させたようで、魔法陣が淡い光を発しながらテレポートが始まった。
光が収まったころに二人は別の場所にいた。周りは村レベルの建物が建っていて、そのまた周りには盗賊対策だろうか、小さめの壁が建てられている。
しかし、どこを見回してもダンジョンらしきものが無く、転移するところを間違えたのだろうか?
「…? ダンジョンっぽいものはありませんが…?」
「………間違えた(ボソッ)」
間違えたんかいっ!!!
「……。」
「……。」
ばつが悪そうにアランはもう一度ゲートを作動させた。




