2年の部 本戦第1試合
「あはははは!! 最高だなヴェント!! あはははは!!」
観客席で対戦を見ている主人公も、生徒たち…主にヴェントの戦闘を見て笑っていた。
「女の敵じゃの」
「後でしばこうか!?」
「擁護できませんね…」
他の観客もヴェントの動きを見ている人は冷めた目をしている。
「まぁ全員予選は突破できたようでなによりだな」
「こっから本戦か~楽しみだね!!」
「本戦からは実況も付くので、もっと楽しめますよ」
「またヴェントあたりがやらかしそうじゃな…。」
「さあさあさあさあ!! 始まるよ本戦第一試合!! 実況は生徒会長のルインちゃんがもらったぜ!!」
予選がすべて終わり、何か所かに分かれていたステージも本戦用に1対1のリングに変化した。
「ラインの妹がルイン…まあそんなもんか」
「いや、流石に略称じゃろ。 あんなのでも一応王族じゃ」
「確かラインさんの本名はラインハルトだったと思いますよ」
「かっこいい名前だね!?」
ノエルもラインハルトという名前を知っているあたり、貴族だろうなと予想はしていたのだろう。 実際は王族だったが。
「学園長~モニター付けてモニター!! ……サンキュー!! それでは観客諸君は空中のモニターに注目してくれ!!」
空中に巨大なモニターが現れ、全方位の観客が本戦を見られるようになった。
「まずは右コーナー!! 槍使いのジャック君です!! 実は魔法もそつなくこなせるオールラウンダーらしいぞ!! おっと、今入ってきた情報によると私よりも強いと噂の新任の先生の授業を先に受けていた5人の内の1人だ!! ちなみに他の4人も本戦に出ているから、戦闘の教師としての実力はしっかりあるらしい!! 楽しみだな!!」
額に手を当てて、がっくりしているジャックが入場した。 まさか生徒会長からばらされるとは思ってもみなかったのだろう。
「そして左コーナー!! 双剣使いのサイズ君だーー!! 特に話すことはない!! え?そうじゃない? あっごめんね!! 実はジャック君はサイズ君に勝ったことがないらしいぞ!! 武器のリーチ差あるのに? マジ? まあいいか。 とりあえず皆大好き、因縁の対決だーーー!! 果たしてどちらが勝つのか!! 私はジャック君に明日のお昼ご飯を賭けよう!!」
同じく額に手を当てたサイズが逆サイドから入場した。 今回ばかりは実況をぶんどった生徒会長が悪い。 ご愁傷である。
「あー、ご愁傷様?」
「なんで今年は生徒会長が実況やってんだろうな…。」
「おそらく先生のせいだな」
「そういえば新任の先生の授業先に受けたんだっけ? どうだった?」
「強いぞ。 異常にな。」
「それでは第一試合開始っ!!!!」
話している二人には悪いが、一応本戦である。 多少グダグダになりながらも向かい合う二人は武器を構える。
「それは何よりだっ!!」
唐突にサイズが双剣の片方をジャックに投げつつ、距離を詰める。
ジャックに弾かれた双剣の片方は魔法で手元に引き寄せ、多少のフェイントを交えながら連撃を仕掛ける。
だがしかし、前までのジャックなら反応しきれなかったフェイントも今のジャックは難なく避け、槍で横なぎの攻撃を放つ。
「あっぶねっ!! 結構強くなってんじゃん」
サイズもしっかりと横なぎを躱し、槍の間合いから距離を取る。
「おおぉーー!! 一戦目から中々熱い近接戦が繰り広げられているぅ!! だが忘れてないだろうか、ここは魔法学園だぞ~!!」
「だとよ?」
「いや、双剣引き寄せたのは魔法じゃないのかよ」
「地味だからじゃないか?」
「はー? それなら見せてやろうじゃねぇか!!」
そういうとサイズは懐から大量の矢じりを取り出した。
そしてその矢じりをジャックに向けて全て投げつける。
「全方位攻撃だ!! 避けれるもんなら避けてみろよ!!」
ジャックに余裕で弾かれることも想定内だったらしく、サイズは矢じりを操作して全方位から攻撃をする。
「お前の方に近付かれた時はどう対応するんだ?」
サイズの方から飛んでくる矢じりを中心に危険なものだけ弾きつつ、ジャックは敢えて近づく。
「ちっ」
「流石に操作しながら近接戦闘をするのは難しいか? 自爆する可能性もあるからな。」
大量の矢じりを操作するのは、結構な集中力を要するらしい。
「同時にできなくても、近接同士ならどうとでも」
「甘いな」
「はっ? がはっ!?」
サイズは後ろに下がりつつ、向かってくる槍を双剣で受け止めようとしたが、何故か双剣は槍を流れるように滑った。
そして受け止められなかった槍はサイズの胴体を貫いた。
「名付けて【魔力付与 流水流し】って所かな。」
「……ダサい…ぞ。」
「第一試合決着!! 勝ったのはジャック君でした!! だれか私に明日のお昼を奢りなぁ!! ジャック君は次の試合まで控室で待っててね!!」
無事にジャックは一回戦を突破できた。




