入学式
入学式前日に色々あったようだが、なんだかんだで当日である。
「おお!? 人多いね!?」
ミウも驚いているように、バカでかい講堂のような場所に集められた全校生徒並び保護者、来賓の数は多すぎた。
「学園長この前で挨拶するって中々度胸あるな…。」
主人公も愕然としているが、忘れていないだろうか。 ここは舞台袖であり、主人公達も新任の先生である。
「あら? あなたたちも挨拶するのよ?」
「「「え゛?」」」
「一言でいいんですよ一言で。 長すぎても逆に怒られますよ? 魔法学園の入学式は長すぎるって有名なんですから。」
ノエルは分かっていたようだ。 流石は卒業生である。
「ほら、始まるわよ」
その言葉と共に入学式が始まった。
「長い…」
「長いよ…」
「長いのじゃ…」
「ふふっ、懐かしいです」
さて、長い長いと主人公達は言っているが、まだ新入生入場である。
現代日本のように開式云々あった後の“新入生入場”である。
「ちなみに高等科はまだ来てないわよ」
「「えぇ…」」
「帰るのじゃ」
「ダメですよ!?」
死ぬほど待ってから学園長式辞。
「「「よし、帰る」」」
「ダメですって!!」
学園長の挨拶は長い。 全世界共通事項と言っても過言では無い。
「……………最後に、この後の学内戦は要注目よ。 出場してくださる新任の先生の戦闘を参考にすれば、魔法使いが一番強いなんて考えもなくなるかもしれないわ。 在校生の皆も恥をさらさないように頑張りなさいよ? じゃあね~」
「ま、魔法学園学園長カルテ様でしたーー!!」
あのアホ、笑顔でぶち込んできやがった。 入学式をなんだと思ってやがる。 進行の先生もやけになってんじゃねえか。
「…兄さんがんば。」
「ドンマイなのじゃ」
「ご、ご愁傷様です?」
「この後に挨拶するってマジ?」
残念なことにマジである。
その前に来賓の祝辞や在校生代表挨拶はあるがな。
来賓の挨拶はサラッと流しつつ、問題の在校生代表挨拶である。
舞台袖から壇上に上がる際に、生徒会長は主人公の方を見ながらニヤっと笑った。
「ははは…まさかあいつまでやらかすとか言わないよな…?」
むしろなんでやらかさないと思ったんだ。
「やっほー!! みんな大好き生徒会長だぞ!!」
こいつマジかよ。
「うっそだろおま!?」
「格式高い入学式…なんですけどね…あはは」
ノエルですら苦笑いしている。
「新入生のみんなは入学おめでと!! なんだこいつって思った在校生のみんなや来賓の皆さんは、後悔しな!! 私を生徒会長にしたことをな!! なんてことは置いといてと。」
急にスンッってなるな。
「確かに学園長の言うことは一理あるぞ。 魔法使いの多くは傲慢になるやつが多い。 自分は人よりも才能がある~ってね。 甘いぞ魔法使いの卵諸君!! 人を見下したいなら私みたいに魔法を無詠唱かつ近接戦も戦闘職並みにできるぐらいにはなってみせろ!! ま、別にできなくてもいいんだよ? 私が最強になるだけだからさぁ~?」
煽り散らかしてんな。
「そういうことだからさ、自分に才能があると思ってんなら人のことを気にする前に自身を磨きなよ。 頂点で待ってるから。」
在校生からはしっかりと歓声があがっているあたりを見ると、会長としての人気は高そうだ。
「あっ最後に、学園長から言われたんだけどね 私よりも強いらしいよ? 新任の先生。 楽しみだよな!!」
最後にお約束である。
「………オワタ」
ハードルが上がりに上がった主人公の口からは魂が出かけている。
「さて、閉会の前に新任の先生方の紹介です。 去年、戦闘の授業を受け持っていた先生がお辞めになったため、その代わりとして英雄の一人として名高いモノエル様直々に紹介してくださった先生です。 誰とは言いませんがお二方のせいでハードルは上がり切っていますが、拍手でお迎えください。」
進行の先生からの最後の一押しに絶望しながらも、主人公、ミウ、ニコル、ノエルの順に壇上に上がる。
どうぞ。と渡された拡声器を受け取ったのは最後に上ったノエルだった。 主人公は自分が最後に話すことを察し、目が死んでいった。
「あーあー 皆さんこんにちは。 この度戦闘の授業を受け持つことになった一人のノエルと申します。 主に専門は回復なので、ヒーラーの皆さんは一緒に頑張りましょう。 これからよろしくお願いします。」
ノエルは無難な挨拶だったが、次に拡声器を受け取ったニコルがやらかした。
「ニコルという。 よろしくの。 で、話は変わるのじゃが……今、新入生に限らず外見を見て侮ったアホどもは実戦では死ぬと思え。」
圧倒的な威圧感が講堂を埋め尽くす。
「お主らは魔法の才能が一番とでも思っておるのじゃろ? それなら何故外見で侮ろうとするのじゃ? 言っておくが、我からすれば貴様らもあの学園長も総じて凡才、ただの雑魚よの。 ま、そんな雑魚でも学ぶ気があるのなら我の授業を受ければいいのじゃ。 “絶対に”強くしてやろう。」
……これは挨拶をする順番を間違えてますねぇ...
最悪な雰囲気でミウに拡声器が渡る。
「うわぁ…雰囲気最悪だねー ま、いいか。 私の名前はミウ。 よろしくね!! 多分この中だと一番弱いから、学園のみんなと一緒に魔法の勉強をしていこうと思うよ!! 一緒に頑張ろうね!!」
ササッと流して最後に主人公の挨拶。
「あー、ツクルって言います。 皆さん宜しく。 学園長と生徒会長が学内戦で出るって言っていたのが俺です。 まあニコルよりも弱いし、魔法も使えないので、それこそ近接戦闘の見本にしかならないとは思います。 それでも皆さん全員と俺一人が戦っても無傷で完勝出来るぐらいには強いですよ? 是非とも俺から少しでも戦闘技術を盗んでくださいね。 張り合いがないとつまらないので。」
満面の笑みで煽りよった。
仮にニコルが威圧していなかったらブーイングが出ていたな。
この後は何事もなく閉会式をし、学内戦へと移行していった。




