意外としっかり先生をしている②
「さあてお二方~ 助けてくれませんかね~ いや、ちょ、そろそろヤバい!! なんかバチバチいってるよ!?」
自称天才のロウ君でも合成魔法は一回で成功するほど甘くなかったらしい。
「しょうがないのぉ」
ニコルがパチンと指を鳴らすと、バチバチと鳴っていた魔法が空気に溶けるように消えていった。
「「「おお~」」」
これはかっけぇ。 ロリなのに。
「自称天才のくせに魔力の操作が甘いのじゃ。 見ておれ」
そういうとニコルは両手に炎と水を出し、二つを併せる。
「そもそもなんでお主が炎と水を選んだのかわからんのじゃが。 どう考えても相性の悪い二つを無理やり混ぜ合わそうとすると反発しあうに決まっとるじゃろ?」
先のロウと同じようにニコルの手の中でバチバチと音が鳴りだす。
「此処からどうするかはお主の勝手じゃが、今回は真似やすいように回転させる形にするの?」
ニコルは混ざりあうかと思われた赤と青の魔法を、球体を作るかの如く回転させる。 そして手の中で二色の螺旋を形作る。
「名付けて、【螺旋 アクアフレイム】って所かの?」
誰もいない方に打ったその魔法は地面を抉り取るように進んでいき、着弾点で混ざりあい爆発した。
「「「か、かっけぇーー」」」
もはやミウも生徒側になっている。
「極論じゃが、すべての魔法を螺旋の形にすれば合成魔法もどきにはなるからの。 一旦練習してみよ。」
「了解です!!」
楽しそうに練習し始めたロウは放置して、次はフロンの番だ。
「フロンは具現化魔法じゃったかの?」
「そうそう!! オリジナル魔法らしいよ!!」
あくまで人の中でのオリジナルである。
「それで、魔法陣を映した紙を具現化するんじゃよな。 ほれ、これを見ながら練習してみよ。」
一つの魔法陣が書かれてある紙を具現化させたニコルは、その紙をフロンに渡す。
「私の…オリジナルゥ…」
「あまり驕るなよクソガキ?」
う~んこれは魔王。
このあと滅茶苦茶練習した。
最後にカノンとノエル…
「え、えっと よろしくお願いしますカノンちゃん」
「よろしく。」
「カノンちゃんは何が出来るんですか?」
「輪唱魔法。」
「…どういう魔法なんですか?」
「一番キレイな魔法。」
これは…アホほど会話が進まないね…
「………。」
「…ひゃなしへ。」
「もう少し話す言葉数を増やしましょうね????」
「むぃ。」
ほっぺを引っ張られるカノンちゃんかわゆい。
「…もーしょうがないですね。 ゆっくり話しましょうか。 うりうりうりうり」
「あうあう。」
ほっぺをムニムニした後に、ノエルは校舎の壁に寄りかかり、カノンを後ろから抱きかかえる形をとった。
「言葉が少ない理由とかあるんですか?」
皆の練習風景を俯瞰しながら、ノエルはそう尋ねる。
「絞らないと喉がつぶれる。」
「…魔法の反動ですか?」
「そう。」
「詳しく聞いてもいいですか?」
「(私の魔法は歌の効果で)対象を幻惑させる。」
「音階は魔法で変えるから」
「(喉の)消耗は少ないけど」
「(歌えば歌うだけ)喉を酷使する。」
括弧の中は話していないので、まあ詳しくはない。
中々生きづらい人生を送ってそうだな。
「う~~~ん、一つ質問いいですか? 音そのものの大きさは魔法で変えられないんですか? 声を張らないようにすれば喉もつぶれないと思いますが?」
「私は魔力が少ない。」
魔力が少なくて維持できないだけなら…
「出来ないことはないってことですよね!?」
「!?…うん。」
「それならすごい簡単な解決策があるじゃないですか!! ツクルさーーーん!! あのゴミを有効活用する時が来ましたよ!!」
何か思いついたのか、戦闘中の主人公に大声で話しかけた。
「≪えっ何っ!? ちょ、タイミングが≫」
「「今だーーーー!!」」
「≪甘いねっ!!≫」
「「うわぁぁぁぁぁ」」
楽しんでんな近接組。
「≪それで? 何の用かなノエル?≫」
「あのガチャで出た魔蓄器ってこの子にあげてもいいですか?」
「≪ああ、いいよ。 はいこれ≫」
そう言って主人公は虚空から魔蓄器とやらを取り出した。
「ありがとうございますツクルさん。」
「≪それじゃあ俺は戦闘に戻るね≫」
瞬時に主人公はジャックとヴェントのもとへと戻っていった。
「はいこれどうぞ!!」
「なにこれ。」
テンションの高いノエルに、カノンは若干引いている。
「魔力をため込むだけの魔道具ですね。 私たちには使い道がほとんど無かったので、ここで有効活用できるなら魔道具からしてもありがたいですよ。」
「ありがと。」
そうして、ネックレス型の魔蓄器とやらをカノンは首にかけた。
「あー ぁぁー おぉ魔力の消費がない。 これなら多分喉もつぶれない。」
喉の部分に魔法をかけたカノンの声は、ASMRのように囁いている声だった。 確かに聞こえてはいて、喉も安全だろう。 但し、学園の男子の股間が危ない。 家族の前ではイヤホンを付けなければ聞けないような、ゾワゾワする声だ。
「ひょわっ、魔力は貯められるときに貯めてください。 私たちが学園に居るうちは任せてもらってもいいですよ。」
「ありがとうノエルせんせー。」
「ひゃわぁぁぁ ぞわぞわします!!」




