冒険者ギルド
「ふむ、何とか寝床は確保できたわけだ」
≪今更かっこつけてドヤ顔で言っても遅いですよ。マスター≫
本当にこんなのが主人公でいいのか?部分的な敬語といい頭脳派なキャラはどこいった? まあ、それはさておき…
「アラン…アランさんが言うには明日からダンジョンに潜るって話だったけどさ、実際ダンジョンマスターって他のダンジョンに潜って大丈夫なのか?」
≪大丈夫なわけないじゃないですか≫
「……やばくね?」
≪一応付け加えておくなら、ダンジョンマスターが知的生命体でないダンジョンならば問題はありません。 ただし、知的生命体がダンジョンマスターである場合だと、【集会】に呼ばれていると予想できるので、最悪の場合戦争になります≫
「集会?なんだそれ、そんなもの神から聞いてないが?」
≪【集会】とは、知的生命体のダンジョンマスター達が原初のダンジョンマスターのダンジョンに集められ、情報の共有及びダンジョンごとのランク付けをされる会合のことです。 仮にマスターが知的生命体の保有するダンジョンに入り、モンスターを討伐すると、その生命体が集会内で同盟を組んでいるグループとは確実に敵対することとなります。≫
「……なるほどな……その時はその時!! 今から考えてもどうしようもねぇ!」
確かに正論ではあるが、事前に対策はしておくべきだろう。
そんな話をしていると、下の階からアランの呼ぶ声が聞こえてきた。どうやら仕込みが済んだようで、これから冒険者ギルドとやらに行くのだろう。
「じゃあ行きますかね!」
主人公が下に降りると、アランは何かの袋を片手にギルドに行く準備をしていた。 1階はTHE異世界の酒場!の様になっていて、奥からはスープだろうか?いい匂いが漂ってくる。
「来ましたよ、アランさん!」
どうやらアランの前では敬語でいくらしい。
「おぉ!それじゃあギルドに行くか!」
と言いながらアランはドアから出ていった。その後ろに主人公もついていくが、なぜかアランはドアから出てすぐに立ち止まってしまった。
「アランさん?忘れ物か何かしましたか?なんでこんなところで止まっ…」
「いや、目の前がギルドだぞ」
「…目の前かいっっっ!!」
冒険者の酒場という名前なだけある。ギルドで依頼を終えた冒険者が行きやすいためか、道を挟んだ向かいに位置していた。
荒くれものが多そうなイメージの冒険者ギルドの前とはいえ、そこそこ人通りが多く、一度立ち止まったのも納得である。
「それじゃあ今度こそ行くか」
アランは少し笑いながらそう言い、ギルドへと歩いて行った。
カランコロン という小気味いい音と共に主人公達はギルドの中へと入っていった。 アランの酒場があるからか、よくあるような酒場隣接型のギルドではなく、依頼の掲示板とそれごとに対応した受付があるようだった。2階へ上がる階段もあったが、冒険者に使われないようにか受付の奥に作られている。
今の時間が2時か3時ぐらいだからだろうか、受付に並んでいる冒険者は少なく、アランもいるためかキョロキョロしている主人公に絡む人はいなかった。
「あら?どうかしましたかアランさん?先ほど持ってこられた解体の依頼はまだかかるので、もう少し待ってほしいのですが?」
Sランク専用の受付なんだろうか。一番キレイな受付嬢さんがアランに話しかけてきた。
「いや、それはまた後で取りに来るが、今回はこいつの登録だ。 門の前の草原にぶっ倒れてたから拾ってきたんだがな、身分証の一つも持ってないようだからとりあえずギルドには登録させようかと思って連れてきた」
「はぁ...アランさんの紹介だし大丈夫かとは思いますが、一応聞いておきます。 犯罪を犯したことはありますか?」
といいながら主人公の方を見てきた。……ちなみに異世界からの呼び寄せって拉致になったりする…現在の地球に神がいないからセーフ?…(ほっ)
「もちろんないです」
主人公がそう言ったと同時に、受付嬢さんの手元にあった水晶が青く灯った。
「問題ないようですね。それならこの紙の空欄部分をうめてください 書きたくない部分は書かなくても結構です。」
と言われて渡された紙には氏名や住んでいる場所、所持しているスキル、使用武器などを書くようだった。とはいえ空欄のままでもいいということなので、あくまで登録のための情報ということらしい。
~~~書き込みタイム~~~
「これでお願いします!」
満足そうに提出した主人公であったが、受付嬢は呆れたようにため息をついた。
「はぁ…まあいいか、これで本当に登録しますが大丈夫ですか?後で変更点があれば言ってくださいね?」
それもそのはず、主人公が提出したものには、名前とスキルしか書かれていなかった。そのスキルも【言語理解】とあってはパーティーを組むのにも一苦労だろう。
「ん?そんなに変なこと書いたのか?」
「変も何もアランさん、これじゃあこの子パーティーひとつ組めなくなりますよ?」
「まあいいだろ、こいつには宿屋を手伝ってもらうからな、ひとまずはパーティーを組むのも俺だけだろうよ」
「うわぁ…私どうなっても知りませんからね」
なんでアランさんとパーティーを組むと後悔するのだろうか?などと主人公は考えていたが、後々になって言った意味を理解することとなる。
「はい、これがツクルさんのタグになります。首からかけるなどしてなくさないようにしてください。」
そういいながら渡されたのはツクルの名前と大きなFの文字が書かれたタグだった。
「一応説明すると、ギルドにはS、A、B、C、D、E、Fのランクがあります。
また、A、B、C、Dにはそれぞれ+と-のランクがあり、そのランクがタグに記載されます。
ギルドの依頼はその掲示板から選び、達成できると思った依頼の紙を上から一枚だけはがしてお持ちください。緊急の依頼や重要な依頼に関してはギルドマスター及び受付嬢が人選をして受付から渡すという形をとっているので、長期の依頼をする際には連絡をお願いします。
あ、あと一応冒険者同士の争いごとは禁止となっており、もしやった際には、審判の水晶(さっきの青く光ったやつ)を用いて判断をするので、このギルドにいる場合は被害者は問題になりません。このギルドにいる場合は、ですがね」
「了解です!ありがとうございます!」
「それじゃあ今日はギルドで登録するだけって言ったからな、戻って休んでおいていいぞ。草原にぶっ倒れていたことだしな、そのまま働かせて何かあった方が問題になる。
明日の朝からはダンジョンに潜るからな、ちょいと早いが、夜更かしすんじゃねえぞ?」
「はいっ!」
そんな会話をしながら主人公は先に宿屋へと戻っていった。残ったアランがギルドの2階に上って行っているとも知らずに。




