俺?ダンジョン!?
「ん......あ? どこだここ」
先ほどの洞窟の中から一変、中世の家屋の一室のような場所で目を覚ました。周りにはベッドしかなく、おそらく宿屋か何かの一室なのではないかと予想できる。
≪起きましたか、マスター≫
「オペレーターか、あの後どうなった? 俺が生きてるってことは【融合】が成功したってことか? それなら何故ここにいる?」
≪おそらく成功はしたのだろうと予測できます。 また、成功の後にダンジョンが消失しました。 結果、王都の手前の草原に排出されたマスターはこの宿屋の主人らしき人に拾われてここにいます≫
「……成功したのにダンジョンが消失したのはどういうことだ?」
≪自身の鑑定をしてみては?≫
「…【鑑定】」
===========================================
名前:斎藤 造 サイトウ ツクル
性別:男?
種族:ダンジョン?
職業:ダンジョンマスター
LV:1
STR:999
VIT:―――
INT:999
DEX:999
AGI:999
LUK:999
装備:冒険者セット
スキル:??のダンジョン 言語理解 ?? ??
===========================================
「盛大にバグってんな あれか、ダンジョンコアと融合しようとしたらダンジョンそのものと融合した的な感じだな」
≪おそらくその通りかと。ただ、バグを部分的に予測するならばスキルの??のどちらかに不壊が入ると予測できます。 そのせいでVITの表示ができなくなっているのだと思われます≫
「なるほどねぇ...どうすんだこれ?」
≪神が気づくのを待つしかないかと思われます。 レベルを上げることで表示の訂正ができればいいですが、望みとしては薄いでしょう≫
「それなら妹がこっちに来ることを選択するのを待つ方が早そうだな」
ダンジョンマスターとして呼ばれたのに、ダンジョンそのものになるとは中々の事態である。 と、そんな話をしていると…
「おぉ!! 起きやがったか!!!」
(バンッ!)という大きな音と共に3メートルはあろうかとも思えるほどの巨体の男がドアから入ってきた。恰好を見るに宿屋の主とは思われるが、手には血の滴った包丁を持っていて、傍から見れば殺人鬼と被害者の構図である。
「うおおおぉぉぉ!!!??? 人殺しィィィッ!?」
うむ。そりゃあそうなる。
「うおぃ! だ、だれが人殺しだ!?」
「ど、ど、どう見てもあんただろ!? 図体でかくて包丁を片手に持ってるって!?」
「む? おぉ!こりゃあすまん 調理の最中だったのを忘れてたな!」
よくよく聞いてみると、宿屋の主人はダンジョンに行った帰り道の草原で主人公を拾ったらしい。 そこから主人公を部屋に寝かせて仕込みを始めたのだから、タイミングよく起きてしまった主人公も主人公である(?)
「それで?ボウズはなんで草原なんかにいたんだ?」
≪マスター、ダンジョンの事は省いて話した方がいいです≫
「(おう)…家の部屋の中を掃除してたら突然?目の前が暗くなってな、気が付いたらここにいたってわけなんだが? そもそもここはどこなんだ?」
「ここか? ここは宿屋(冒険者の酒場)だ…ってこれを聞きたいわけじゃないよな ここは神都ユグドラシル、この世界のすべての国から干渉を受けない緩衝地域だ」
「なるほど…………???」
「わかってなさそうだな...そもそもボウズはどこに住んでたんだ? まさか異世界とは言わんだろうな?」
「しょ、しょんなわけないずぁないでしゅか!!」
≪マスター、ばればれです≫
悲報:主人公、他者からの想定外の事態にクソ弱い
「…はぁーーーマジでか? まあ詳細は聞かないでおいてやる …ってことは身分証とかも持ってないよな?とりあえずうちの宿屋で働かせてやるから接客とダンジョンでの仕入れを手伝え。 その方がボウズもいいだろ?」
「た、たしゅかりましゅ!! ん“ん”っ、助かります!!」
この主人公、騙されるという概念を知らないのだろうか。頭よさげな設定にしたはずなのにポンコツになったのだが???これもバグの影響だということに……ならない?…ならないかぁ
何はともあれ、祝!主人公ホームレス回避!!
「とりあえずそういうことで、自己紹介だ 俺はアラン この宿屋(冒険者の酒場)の主人をやっていて、副業で冒険者ギルドでSランクとやらをやらせてもらってる」
「Oh、Sランク…え、えっと 俺は斎藤 造
多分苗字とかはない方がいいだろうからツクルと呼んでくれ。 今日異世界から転生…転移?してきた」
「ツクルな、了解した。 とりあえず今日は身分証の作成ってことでギルドに行くか。 明日は昼まではダンジョンに潜って、そこからは食堂って感じでいいな?
(あいつと同じならおそらくレベル上げは優先してするべきだろうな。)」
この宿屋の主人 異世界を知っていたといい、何かを知っているらしい。
「了解です!!」
「あぁ、その前に仕込みだけさせてくれや それまではここで待っててくれ」
主人公が頷くと、主人も満足げな顔で仕込みをしに行った。




