やらかし?
そして翌日、昨日言っていた通りに一行は一度宿屋に戻ることにした。
一応異界の出入口は仮で寝室のクローゼットに作ったらしい。
「いってらっしゃいでやがります」
「「「「おう、行ってくる(行ってきま~す!!)(行ってきます)(行ってくるのじゃ)」」」」
そしてテレポートゲートに辿り着いた主人公はある大事なことに気が付く。
「………これどうやって動かすんだっけ?」
「なんで知らんのじゃ」
「私がやりますよ」
「ノエルちゃんはインテリだった…!?」
ノエルのおかげで無事にゲートを動かせたようだ。
そして宿屋の前に着いた一行の目には、ミノムシのごとく縄でぐるぐるにされて吊るされているアランが映っていた。 その顔はボコボコで、首には反省中という札が掛けられていた。
「……おぉ…ツクル…昨日ぶり…とりあえず降ろしてくれるか…?」
「ちなみにアリスはどこにいるのじゃ?」
「…アリスは宿屋の中n「先に中に入りましょうか。」え?ノエル?マジで?」
一行はアランを見捨てて宿屋の中に入っていった。後ろから降ろしてくれぇぇぇぇーーー.........と聞こえた気がしたが、気のせいだ。
「皆さん!!良かったです!!行方不明になったかと思えばあのバカが転移させたなんて聞いたから心配してたんですよ!!」
ついにはアリスにまでバカと呼ばれる始末である。
「転移はさせられたのじゃが、その代わりに屋敷を貰ったのでの、許してやってくれんか?」
「…まぁ一晩置いておいたし、いいでしょう。」
アリスが人差し指をクイっと曲げると、影から手が伸びていき、アランを回収してきた。
「ちょっ、首を掴っ!!擦れてる!!頭が!!机が当たってる!!いてっ!!」
「…兄さん、もしかしてアリスさんてめちゃ強?」
「分からんけど…ノエル知ってる?」
「…アリスさんはSランクで二つ名持ちです。」
「何をコソコソ話してるんですか?」
「「「なんでもないです!!」」」
実はアリスが一番強いのではないだろうか。
「そういえばアランさんの屋敷って神都にないはずでしたよね?ギルドに来る際などは使い辛くないですか?」
軽食を用意した後にアリスは疑問に思ったのかアランに尋ねる。
「……問題ない。 俺の屋敷には簡易的な転移ゲートがあるからな。 ギルドの使っていない部屋にでももう片方を置けばいいだろう」
「へ~ そうなんですね。」
「「「「(嘘だな)(嘘だね!)(分かりやすい嘘ですね…)(ようバレないの。)」」」」
アリスがしっかり考えていたら防犯上そんなことは絶対にしないと分かっていただろう。
「それじゃあギルドに行くか。 それとアリス、宿屋の代理も今日まででいいぞ、ありがとな。」
「別に宿屋も私がもらってあげてもいいんですよ? 売り上げもそっちの方が良いでしょうし「え゛?」ふふっ、冗談です」
アリスさんも冗談なんて言うんだな~……え?正論?……勘のいいガキはゲフンゲフン。
「おっ、アラン 生きていたのかい?」
「勝手に殺すな」
ギルマスの部屋に移動した一行は先ほどのアランのセリフを振り返る。
「それでアランさん? さっきの嘘は俺がギルドに出入口を作れってことですよね?」
「おう、流石に俺の屋敷からギルドにいちいち来てもらうのも面倒だからな」
「……つまりは部屋を用意しろってことだね? は~、これだからアランは自分勝手なんだよ………まっ、予想はしてたけどね。 おいで。」
アランの考えなどお見通しだったらしい。 モノエルは一行を連れて事前に用意していたらしき部屋に行った。
「ここでいいだろう?」
モノエルに案内された部屋はギルド職員だけが使える資料室の隣の部屋らしく、そもそも資料室自体があまり使われないため、人が来ない場所らしい。
「まあいいんじゃないか?」
「適当だね!?アラン!?」
「いや、そもそも普通はギルド職員しか入れない時点でどこの部屋でもいいだろ。 どうせ後で中から鍵でも掛けるはずだしな。」
う~ん正論。 アランなのに。 モノエルどころか主人公一行も驚いている。
「それじゃあこの部屋は勝手に改造してもらっていいよ、特に置いてあるものもないからね。」
それだけ伝えてモノエルはアランを連れて執務室に戻っていった。 会合のせいで執務が溜まっているらしい。
部屋には本当に何も置いていなく、普段も使われていない部屋だということが良く分かった。
「勝手に改造していいと言われたのじゃが、【侵食】もしていいということかの?」
「いえ…流石にギルドなんですからそこまでは…」
≪しますか≫
「≪侵食≫」
「「「「あ。」」」」
部屋が黒く侵食されていく。
「……やらかした?」
「…これはやっちゃったんじゃない兄さん?」
「…改造していいとは言ってましたが…」
「…この部屋だけじゃし…セーフかの?」
≪気にしたら負けですよ≫
「「「「やったのはお前だ(フィーちゃんじゃん)(あなたです)(ラフィスじゃの)」」」」
まぁやってしまったものはしょうがない。




