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謎を紐解いて  作者: キョンシー
第2章 3人の助手と絞殺死体、消えた犯人
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3人の助手と絞殺死体、消えた犯人 後編

 一度家に帰宅した。居間に入ると、姉さんはホラー映像みたく天井からぶら下がって

「おかえり~。」と言ってきた。今日も平常運転だ。…え?異常だって?姉さんは普段からこんな

調子だよ?可愛いからいいんだけど、最初見たときは心臓飛び出るかと思った。

「ただいまです。はい、姉さん降りましょうね?」

そう声をかけると姉さんは、素早く体制を整えなおして降りてきた。

「ふぅ…。降りるときなんか恥ずかしくなるよね。」

「恥ずかしくなる原因を作ってるのは姉さん自身でしょ。ってか姉さん、そんなことしてたら悪化

しちゃいますよ。」

姉さんは一気に真顔になり、顎をくいってされた。

遙申はるた、私はそのことを忘れていたいの。遙申と笑って過ごしていたいの。」

…今のは怒っているってさすがに鈍感な僕でもわかった。

「にしても、規則正しい生活してたのにこうなるなんて…ね。これが運命さだめっていうもの?」

「でもそんな運命さだめを覆すのが姉さん。」

 …とは言ったものの、こうやって過ごせるのはあとどれぐらいなんだろう。とりあえず疲れたから、

事件のことなんて忘れていたかった。こうやって姉さんと会話していることが、一番癒される。

昔っからそうだった。

「事件のことを忘れていたそうな顔だけど、そうはいかないよ。話してよ。」

「ふぇ。まぁ、姉さんの頼みならいくらでも…。」


 事件の一連を語った。すると姉さんは目を閉じてしばらく黙っていた。姉さんが頭の中で必死…

いや全然余裕そうだった。頭の回転が早く、何か閃いた感じでこう言った。

「犯人、絞られるね!しかも1人だよ!」

姉さんの考えを聞いた。…全部僕と同じ見解だった。つまり、合っているんだろう。ほんとだったら

姉さん引っ張り出してみんなの前で、事件を解き明かしてほしいけど、そういうわけにもいかない。

しばらく姉さんにもたれかかって、仮眠をとった。


 3時間後、姉さんもぐっすり寝ていた。しかもご丁寧に布団をかけてくれている。

そんな姉さんを申し訳ないと思いつつ、ソファにゆっくりと頭を降ろしてあげ、僕は警察署に

行く準備をした。ふと机の上を見ると、メモが置いてあった。

咲魂早姫さごんさきに要注意せよ】

…え?咲魂さん…に?まだ元暗殺者の月輪つきわさんに対して警告するのは分かる…。なんで?

「早姫さんは…、油断してると何もできなくなるよ。実際私がそうだった。」

「?!起きた…?!」

「まぁ、遙申がどう対策するかは任すけど、元暗殺者よりやばいよ。私の良き友でもあるし、

良きライバルでもある。」

「そうなんですか…ってか僕って、咲魂さんとか元暗殺者について話しましたっけ?」

「そんなの…言わなくたって分かるよ。」

姉さんは笑顔になった。…別に気色悪いとか、嫌だなんて思っていない。ただ単に凄いと思った。


 警察署に向かうと、青海あおみさんが待機していた。

「中月先輩、なんか事件の真相に気づかれたそうですけど…?」

「はい…、でも未だに信じたくない犯人です…。」

「信じたくない犯人…?」

「…とりあえず、ほかの2人に加え、南斉なんざいさん、玄武げんぶ課長も呼びましょう…。」

 空いている会議室に、僕が言った人物を青海さんはテキパキと集めた。

「すみませんいきなり呼び出しちゃって。…ですが今回の事件の犯人が()()()()分かったので。」

「中月さん早いねぇ…。」と南斉さんが言う。

「…僕の姉さんのほうが早かったです。事件の一連を聞いただけで、僕と同じ考えにすぐたどり

着きましたから…。」

「やっぱり中月先輩のお姉さんは凄い人なんですね。」咲魂さんが嬉しそうに笑う。やっぱ姉さんと

同格なんだな…。

「では、一連の流れをおさらいしてみます。被害者は華村美琴はなむらみことさん20歳。死体は、

かごめ屋付近の路地裏にて、近隣住人が発見しました。被害者の死因は絞殺で、手首にロープを

巻かれたような跡がありました。これは予想ですが、睡眠薬を飲ませなかったことから、突発的な

犯行だったのかと考えられます。ですが、ある程度のものは用意してた…というより現地調達です。

現場には、劣化したロープと、模様が入ったロープがありましたが、最初、犯人は殺すことを

躊躇ためらっていたんだと思います。だから命を奪ったロープは劣化したほうを使ったんだと。」

「…なるほど、本当は殺したくなかったんですかね?」

「職業柄だと思います。…これも予想ですが、被害者に見られてはいけないものを見られたんだと。」

「あるもの…?」

そう、何故ここにあったのかが分からなかった。でも確実に重要な証拠だと思って保管しておいた。

()()()()()です。」

「暗殺リスト…だと?!それはどこで…?」

「鉄梯子がついている建物の屋上です。実は、足跡もそうなのですが、リストも見つけていて、

青海さんには隠しておいたんです。もし、これが見つかった場合、月輪さんが狙われてしまうので。」

「…あ?」そう声を出したのは玄武課長だった。

「お、おいちょっと待て。月輪は元暗殺者だったんだろ?だったら怪しいのは月輪じゃねぇか…?」

「えぇ、この時点で怪しいのは月輪さんです。ですが、定点カメラの映像・目撃証言と全然違う

んですよ。」

「確か、定点カメラは路地裏を挟んだ位置にあり、その定点カメラから被害者の死亡推定時刻も

ほぼはっきりしたんでしたよね?」

「咲魂さんの言う通りです。」

「いやでもよぉ、中月さんが調べたのは23時30から0時20分までなんだろ?だったらその前に既に

いたんじゃねぇか?」

「………、僕は月輪さんが犯行時刻時、現場にいなかったなんて一言も言ってないですよ?なんなら、

月輪さんのアリバイは、上層部の方々や、2人が証明してくれるでしょう。」

「えーっと、殺されたのが0時10分ぐらいでしたっけ?その時は3人で刑事部長といろいろしてて…。」

「簡潔にまとめると、月輪さん及び、我々に殺人はできないんです。」笑顔で、そして冷酷な感じで

咲魂さんがそう言った。

「玄武課長、もう一度確認したいのですが、本当にかごめ屋右の道…つまり銀行がある通りに

いたんですね?」

「あぁ、そこにいて通報を受けてすぐ向かったからな。」

「玄武課長、路地裏がある通りに定点カメラがあると言いましたよね?そして、奥側…つまり銀行

方面にあるカメラに、玄武課長が建物の間の路地から出てくるのが映っているんです。」

「…?!な、中月さんよ、まさかとは思うが、この俺が犯人とか言うんじゃないよな?」

「いえ?まったくもってその通りです。華村さんを殺害したのは玄武課長です!」


「どういうことなんだ?」

「あの建物は正面…つまりかごめ屋の入り口があるところにしか扉がありませんでした。そして、

正面から路地につながる道も、殺害現場通り以外にカメラに映るところにはありませんでした。

その代わり、建物に上る梯子はあったので、殺害後、そこから上って逃げたんでしょうが、反対側の

ところまで映るとは知らなかったんだと思います。あとは、僕らが屋上に上ることは無いと思って

しまったんでしょうが、そうはいきませんでしたし、住人に話を聞くつもりでいたので、結局は

分かっていたと思います。」

 玄武課長は黙った…。一連の犯行を認めるかどうかは分からないが、状況的に玄武課長しかいない。

「…、そもそもその暗殺リストって俺のものって決まったわけじゃないだろ…?」

「いえ、実は暗殺リストに指紋が付着していると思い、調べてもらいました。そして玄武課長の

指紋と照合した結果…一致しました…。」

玄武課長は愕然とした。

「チッ、バレたなら仕方ねぇな。そうだ、俺があいつを殺したんだ。」

「なんでなんですか?」青海さんが聞いた瞬間、僕が持っていた暗殺リストを指さした。

「それを見られたんだ。しかも、運の悪いことに警察手帳も見られてしまった。職質だったんだがな、

手帳を出すときにそれを落としてしまった。」

「だから殺害に及ぼうと…?」

「だいぶ前に言ったが、俺も月輪と同じ身で、暗殺者だった。だが、命を奪うことを嫌だと感じた

俺は警察になった。なり始めの頃は、なんともなかったんだが、ある日殺人依頼が出てきてな。

俺は警察になったことを、組織に言っていなかったんだ。…でも暗殺の対象が中月さんの姉だった。」

…は?

「姉さんが…?」

「あぁ、中月さんをそこまで動かしているのは姉が原因だと思った組織が命令を出したんだが、

さすがに殺さなかった。まぁ、中月さんの姉はだがな。ほかの人物を暗殺しろとか言う命令は

受け入れたんだ。」

…月輪さんの目の色が変わった…というより殺気を感じた。

「だが、こう暴かれた以上、潔く捕まる……予定だが、この際だ。中月さんを()()()()()()。」

なんだって…?!

「すまねぇな中月さんよ。これも俺の命が掛かってるんだ。死んでくれ。」

銃を取り出して、トリガーを引かれた。僕は反射的に横に逃げた。

「っ?!玄武課長!そんなことして意味があるんですか?!」

「あぁ、俺が抹殺されてしまうからな。安心しろ、ここにいるやつ全員道連れにする。」

場の空気が一気に悪化した。

「玄武課長…?!それ以上罪を重ねないでください!」青海さんの説得もむなしく、再度

発砲の準備をした。

 …ここの部屋は防音性に優れている。だから銃の音は響いていないだろう…。そして運の悪いことに

避けた弾丸が、電話機に当たってしまっていた…!万事休す…そう思っていた。でも事態は変わった。

月輪さんが投げる用のナイフを取り出した。

「ここにいる皆さんは殺させないですから!反抗したって組織は許さないと思います。」

「ふん…そんな小さなナイフで何ができるんだ?」

「投げナイフを甘く見過ぎなのでは…?投げナイフだけでどれぐらいの人を殺めたか知ってます?」

その空気は異様だった。まさか月輪さんと玄武課長が対立するとは…。

「お前1人にほかの4人を護れるのか?」2発目を発砲した。

月輪さんは投げナイフを盾にしたが、ナイフは曲がった。だが、それが狙いだったかのようにナイフを

玄武課長に向けて投げる。自分はずっと隙をうかがっているが、隙が全然生まれない…。

「せめて死ぬなら私だけだよっ!」そう言うと投げナイフを10本ぐらい飛ばした。

自分はその一瞬の隙を見逃さなかった。玄武課長がリロードしながら避けているところを。

その不意をついて、銃めがけて蹴りをいれた。

 銃が月輪さんのところまで飛んだ。

「っ?!…何をした…!」

すぐさま南斉さんが手錠をかけた。

「殺人、殺人未遂、銃刀法違反で逮捕ね?」

「…。」月輪さんが口を開けたままポカーンとしていた。


 動機は玄武()()が話した通りで、暗殺リストを見られたことによる突発的な犯行。

そして、月輪さんと玄武さんは、同じ組織に所属していた。だが、月輪さんは未だに玄武さんが活動

していることは知らされていなかった…というより、知ることができなかったはずだ。

ちなみに、玄武さんと対立したときにもっていた投げナイフは、本来は1本護身用で持っているのだが、

玄武さんの前ということでストックを増やしていたらしい。


「いやー月輪さん凄かったなぁ。俺には何もできないので見ることしかできなかったっすけど。」

「さすがです!護ってくださりありがとうございました!」

そう青海さんと咲魂さんに言われてもまだポカーンとしたままだった。

「月輪さん固まってるけど大丈夫?」南斉さんはそう声をかけた。

「…たぶん月輪さんは非難覚悟で対立したんだと思いますよ。でも非難されるどころか感謝されている

から、驚いているんだと…。」

どうやら月輪さんは図星のようだった。

「正直、非難ばっかしだと思っていました。でも暗殺者として得た才能がこんなところで役立つ

なんて思っていなかったです…。」

月輪さんは照れながらそう言う。

 そして、警察署は玄武さんのことでどよめきが起きた。まぁ仕方ないだろうな…。

次回、月輪希々の謎について迫ります

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