停電に起きた悲劇 後編
解決編です!!
昨日の姉さんの言葉が蘇る。
“「役に立てたならよかったよ。」”
これが何を意味するのか…。姉さんのことだから何かしらの意図はあるはず…。深く考えてしまっているだけというのもあるけど。
そうこうしているうちに福水邸に着きそうだった。そう、福水邸で起きた事件を解決するためだ。
姉さんを推理を聞いてみたが、僕でも分かるような内容だった。なんで自分はこれを解けなかった?
姉さんに無駄な考え事させちゃっただけだった。僕は…“仮定”するということを嫌っているのだろうか分からないが、仮定で話を進めなくなってしまった。けっこう致命的な気がする。
20分ぐらいたって福水邸に着いた。どうやらここには全員ちゃんといるみたいだ。
「で、私の弟を殺した犯人は誰なんですか!」兄の近之助さんは叫ぶ。
「その前に、皆さんに確認したいことがあります。まず、パーティーの主催者は誰でしょうか?」
全員黙り込む。しばらくの沈黙のあと、参加者の木野山さんが発言した。
「凛之助氏です。」
「えっと、それはどういった経緯か分かりますか?」
「もともと、俺らと凛之助氏は仲が悪かったんですが、さすがにそろそろ親睦を深めようということで開催されることになりました。」
…どうやら姉さんの推理は正しいようだ。
「じゃあ最後の質問です。テーブルの下からケースが発見されたんですが、誰が持ってきたのか分かりますか?」
「いや?そんなもの刑事さんたちに聞いてやっと知ったぐらいですから。」と参加者の若松さん。
「………ありがとうございました。では、この事件の謎を僕が代わって紐解いていきます。まず、被害者の凛之助さんを殺害したのは、厨房にいた後堂さんです。」
「は?おめぇふざけんじゃねぇよ!なんで俺なんだよ!!」危うくとびかかってくるところだったが、他の警官に抑えられてた。ありがとうございます。
「まぁまぁ。とりあえず聞いてください。最初我々は、停電は犯人によって仕組まれたものだと思い
こんでました。ですが、それは違ったのです。停電を仕組んだのは…被害者本人だったのです。」
一同が唖然としていた。
「え?!凛之助氏が…?!」
「はい、被害者はケースを予めテーブルの下に隠しておき、次に停電の作動準備にとりかかったのです。話によると、別館はあまり電力が使えないようにできているようですから、全室電気を点けていられるのがやっとだったと思います。ですが、それを知っていた被害者は、物置で強に設定した扇風機を4台設置しました。そうすれば、大広間、厨房の電気ぐらいしか点けていられない状況だったと思います。ですが、そこに0時15分起動のエアコン4台を設定しておけば、過度の電力が使用され、ブレーカーが落ちるはずです。…どうやら、予備電力があるようですが、主電源が切れた約3分後に起動するそうなので、被害者は3分もあれば、とあることができたはずなのです。」
「とあること…?」
「はい、被害者は持参したケースの中に、暗視ゴーグルが入っており、壁際のテーブル…被害者が亡くなっていたところのテーブルの裏にナイフ、夜光塗料がついていました。」
「えっと、あの…それってもしかして、凛之助氏は…。」
「そうです、あなた方を殺害しようと企んでいたのです。停電が起きたまでは、被害者の作戦どおりでしたが、ここで出てくるのは犯人…後堂さんの妨害です。たぶん、被害者が、停電やケース、ナイフの準備をしているところを偶然見てしまったのでしょう。そして仲が悪かったということもあり、皆殺しにされてしまうと思った後堂さんがとっさに思いついたのは、凛之助さんの殺害です。後堂さんは、個室に床下に降りれる道があったのを知っていたんだと思います。ですから、そこから入って、床下から殺害してしまおうと…。そこで後堂さんは殺害するために、準備をしていきます。
まず、壁際のテーブルにあるナイフを取りに行くであろうと考えた後堂さんは、天井に夜光塗料を塗ります。床にべったり塗ってしまったら、被害者にバレると思ったはずです。かと言って、停電が起きたら天井を見上げる可能性があるので、迷ったはずですが、被害者に皆殺しにされるなら、まだ天井に塗ったほうがいいと考えたと思います。
そして停電になる直前ぐらいに、凶器であろうアイスピックと壁に掛けてあった懐中電灯を持っていき、床下に潜んだはずです。そして停電になり走る音が聞こえ、アイスピックを構えます。天井をずっと見て、夜光塗料が見えなくなった場所…つまり、そこに誰かがいるということです。テーブルの低さ的に、床を這ってじゃないと入れないですから、空振りすることはなかったはずです。返り血を防ぐために使われたと思われる布が、床下から見つかりました。被害者の腹部には何回か刺されたような跡がありました。アイスピックでも何回か刺してしまえば十分命を奪える凶器になります。…これが事件の一連です。」
唖然としていた。そして当の本人の後堂さんは…。
「………ぐっ…、わりぃのはあいつだ…。あいつは俺が見ていたのを知っていて、“0時15分頃に停電が起きるように設定した。連中を殺すためだ。黙っていればお前は見逃してやる。”とか言いやがって…。でもどうせ裏切って俺ら全員殺されるだろうから逆に殺したんだ…。でもこれって正当防衛に近くねぇか?俺らあと少しで殺されてたんだぞ?なぁ刑事さん!」
「…は?何言ってるんですか?」僕は気付いたらこう言っていた。止めようとしても口が勝手に動いてしまう…。これが警察のとしての反論…?いや違う、罪に関するこの冷酷さは…姉さん…?
「いいですか?正当防衛だろうがなんだろうが人殺しは人殺し。正当防衛で勢い余って殺してしまった事例もありますが、後堂さんの場合は、明確な殺意持って殺害しましたよね?しかも、攻撃されて反撃したのでは無く、待ち伏せしましたよね?どこが正当防衛なんですか?え?」
「……は?なんだよお前…。俺らは死ぬ可能性があったんだぞ…?!そんな状況にいても!お前は、平常心でいられるのかっ!!」
「いられるわけ…無いですよ。そんな時に平常心でいられるのは、姉さんぐらい…あ、すみません、私情がまじいりました。…ですが、計画実行まで間があったし、停電を阻止した後にほかの方々に相談することもできたはずです…。でもしなかったんですよね?しなかった結果が悲劇を生み、あなたは人殺しという罪を背負っていかなければならなくなった。すべて…自己責任です。」
「…くっそ…!」後堂さんは諦めた…いや、素直に受け止め、罪を償うことを決心したようだった。
それは過去の自分を見ているようであり、過去の姉さんを見ているようでもあった。
姉さんは一時の勘違いから事件を引き起こし、僕はそれを幇助した…。だから、本来自分がここに立って、悠々と事件を解き明かしているのはおかしいんだが。
自分だったら同じことを引き起こしかねないと思いつつ、自宅に帰還した。また5時間後に署に行かないといけないので、疲れが溜まってたので帰還させてもらうことにした。
「ただいま帰りましたぁぁぁぁ。」
「おかえりー。…合ってた?」
「合ってました。さすがですよ姉さん!資料とか読んだだけで推測しちゃうなんて!」
「こういうことにしか長けてないからね…。別に推理小説を読むのが好きとか、警察とか、探偵でも無いのにね…。」
確かにそうだ。いくら教員とは言え、こんな推理力があっても邪魔なだけだし…。姉さんは探偵になりたいわけでも無いのに、なんでなんだろう…?でも助けてくれるから嬉しいんだけど…。
風呂からあがって、しばらくぽけーっとしてたら、メールが届いた。
『明日以降、事件の捜査などを手伝ってくれる助手的存在が3人来る。詳細は明日に伝える。』
上司的存在の南斉さんからのメールだった。…3人か…。性別は書いてないけど、僕も含めて4人で捜査するってことになるなら、男2、女2になるだろうから…。
まぁいいや。今日はとりあえず再出勤までのんびりしよう。
次回、2人の頼れる助手と、恐怖のもう1人。