無意味な殺人 前編
3月13日、現時刻5時。朝食を作るために1階に降りた。するとそこには小遙姉さんが
朝食を食べていた。いつもは6時ぐらいに起きる姉さんが居たので驚きだった。
「あ、遙申おはよー。なんかこの時間に起きちゃったから、ついでに朝食作っちゃおうって
思ったのよ。」
食卓を見ると、すでに朝食ができていた。
「ありがと!けっこー朝食作るの大変ですからねぇ。」なんでこう言ったのか数秒前の自分に
問いただしたい。
「あ、やっぱ大変だよね…。いっつも作らせちゃってごめんね…?」
「え…えっと、そんなこと無いですから!大丈夫ですから!」
「…、やっぱ遙申は私に甘いなぁ…。もっと厳しくてもいいんだよ?」
「それはたぶん…ってか絶対無理ですね…。僕の性格的に。」
姉さんは苦笑しながら、朝食を食べ終えた。
約1時間後、ついついいつもの癖で姉さんを起こしに行こうとしていた。目の前で座っているのに。
「ふふ…慣れだね。とりあえず遙申、そろそろ出勤時間でしょ?準備は大丈夫かな?」
そう問いかけた姉さんの声は普段以上に優しかった。なんか元気が出てきた。
「最近、和食作るのにハマってね、昼以外は和食しか食べてない。」
姉さんは教師なので、学校での給食がある。それを除けば和食しか食べていないので、体調は良さそう。
「結構姉さんも、栄養バランスと鮮やかさ気にしてましたよね?やっぱ作るときって、そういうの
意識しちゃうんですかね?」
「ん~、私の場合だと遙申と教師の影響が大きいかな。まぁ、性格も関係してくるんだと思うけど。」
そんなこんなで出勤時間になったので、家を出た。自宅から警察署までは10分程度の距離。
7時までに警察署に行けばいいのだが、僕のところの班の人は来るのが早い。中には5時ぐらいには
着いている人もいる。いくらなんでも早すぎだと思ったけど、別にいっか。
警察署まであと数メートルという時、警察署の駐車場にシボレーインパラ似の車があった。怖い。
まぁ、誰が乗っているのかはなんとなく分かるけど。
「あ、中月先輩おはようございます!」わざわざこっちまで来てめっっっちゃ丁寧に
挨拶をしたのは咲魂早姫さん。さすがご令嬢です。
「おはようございます。…なんでわざわざこっちまで…?」
「え?これが普通ではないのですか?」
「ん~、普通って言ったら普通だと思うんですが…、でもそうでもないような…?」
「まぁ私はこうしろって教わってきたので、何を言われようがこれは貫き通しますけどね。」
「咲魂さんらしくていいと思います。」
「あ、ありがとうございます。」深々と礼をした。
このまま咲魂さんと一緒に部屋の方へ向かった。
「中月先輩、咲魂さんおはようございます。」青海影木さんが後ろから挨拶を
してきた。
「おはようございます。なんか資料持ってますね…しかも割と新しいっぽいですが…。」
「えぇ、実は昨日起きた事件の簡単な調書です。この事件は上から俺らが担当するようにとのこと
でして…。」
「上からの命令なら仕方ないですね!見してもらっても?」
咲魂さんは青海さんから調書を受け取った。調書を見た瞬間、顔色が変わった。
「…相当危険な事件じゃないですか…?正直これをやるのは気が引けますが…。」
どんな事件なのか見してもらった。…これは下手をすれば死人が出るな…。
内容はというと、12日の22時半ぐらいに、藍丸市にて銃声が起きた。周りにいた人々が駆け付けて
見ると、胸を撃たれた女性がいた。救急と警察に通報するも、その女性は息絶えた。
数時間後、今度は事件現場から3キロぐらい離れた場所の住宅街で銃声がしたとの通報。被害者は
またもや女性だった。その上、胸を撃たれていたので同行犯と予想された。結果的に、弾丸とタイプが
一緒の為、断定された。
「無差別に女性を殺害しているんですかね…?もしそうなら、女性陣危ないと思うんですが…。」
「私は大丈夫ですよ。いざとなったら対抗できると思うので。」そう言ったのは月輪希々さん。
「まぁ、月輪さんなら対抗はできそうですが…相手は銃を持ってますからね…。」
月輪さんは元暗殺者という前歴を持っている。強制的に暗殺者にさせられたそう。
「あ、咲魂さんは私がちゃんと護りますから!」
「え?あ、ありがとうございます…。」
…護らないといけないような状況にならなければいいのだが…。
とりあえず、調べてみることにした。現場付近の防犯カメラを調べてみたところ、身長は170㎝、
男性だと思われる人物が映っていた。右手に銃を構え、ある程度離れたところから撃っていた。
どうやら、そこそこの腕利きらしい。前科があるのだろうか…?もしくは銃を撃つような仕事に
就いていたか…。
次に僕たちが調べたのは第1の被害者と第2の被害者の接点だ。……配属は違うものの、警察官で
あった。だから僕らに頼まれたのか…?これは警察に対する宣戦布告と見ていいのだろうか…?
もしくは単なる偶然…?
「やっぱ女性陣営は今回に限って捜査から外れたほうがいいかもですね…。もし警察の女性を狙って
いるなら…ねぇ?」
「確かに…ですが、怯むわけにはいかないですし…。」咲魂さんはそう言った。
「先ほども言いましたが、ある程度でしたら対抗できるので、戦力にはなると思います。あと、
咲魂さんを護らないとですから。」
次は事件が起きた1つ目の現場に行ってみることにした。事件発生から12時間も経っていないので、
若干血の跡が見えた。硝煙反応があった場所と被害者の位置の距離を測ってみるとわずか2メートル。
じゅうぶん返り血はつくなぁ。…そしてものすごく見えにくいが、血が一定の方向へ点々と落ちて
いっているのが分かった。位置的に犯人が返り血を浴びてそのまま車に乗って移動したのだろう。
だが、その車の特定はできなかった。実質詰みだ。