青海影木の謎を紐解いて 後編
17時。そろそろ勤務時間も終わりそうなので、ささっと片付けした。
「あ、中月先輩、これ一緒に持って行ってくれませんか?」そう言ったのは青海影木さん。
「了解でーす。…これどこから持ってきたんですか?」
「2階の資料室ですね。五十音順には並べてあるんで。」
青海さんの仕事の速さは、咲魂早姫さんや月輪希々さんは勿論、姉さんまでも認めるほど速い。
やっぱりできる人なんだなぁ。
資料を片付けて、上に戻るときに南斉さんと出くわした。
「あ、中月さん、馴染んだかい?」
「えぇ、だいぶですね。というか、皆さんが僕に合わせてくれてますね…。」
「そうかい、俺の時もそうだったなぁ。」
「わざわざね、合わせなくたっていいのに…。」
「でも中月先輩に合わせていくと、けっこう物事が進むんで、合わせたいですね。」
とかいう会話をしていたら、15分が経っていた。
捜査一課の部屋に戻ったら、女性陣営がお茶会をしていた。
「あ、おかえりなさいませ。」
「おかえりなさいませっ?!」
「え?私変なこと言ってしまいましたかね…?」咲魂さんは不思議そうな顔をしていた。
「まぁ…“おかえりなさい”とは言われたことありますけど、“おかえりなさいませ”は言われたこと
無いので驚きましたね…。」
「もしかして咲魂さん、そういう家柄で…?」
「えぇ。あ、もしかして姫魂電力をご存じでないですか…?」
「姫魂電力…たしか昔は藍丸市をはじめとする複数の都市の電力を担って、今では全国に広まっている
けっこう有名な電力会社ですよね。」
「で、私の名前の漢字思い出してみてください。」
「えっと、咲く魂に…早い姫…。あっ?!早姫さんの姫っていう漢字と、苗字の魂が一致しますね…。」
「へぇ~、ってことは早姫さん、ご令嬢か何かなんですね。あとはなんか使用人って感じもします。」
「あ、さすが影木さん。あってますよ!」
…仕事が速いのもそうだけど、推理もできるし速いし…羨ましい限りです…。
「ご令嬢で、使用人で、警察官…。大変ですね…。尊敬します。」青海さんは深々と頭を下げた。
こう見ると、青海さんも礼儀が正しい人だと再認識させられる。できる人だからって、自分の能力を
誇張することもなく、礼儀を正して活動をしている。当たり前のことが当たり前にできるからこそ、
動けるし、頼りにされる。青海さんはまさにそうだ。
19時15分。帰宅した。
「帰りました~。…姉さん、玄関で寝てたら風邪ひくんでリビングで寝るか、自室で寝るか選んで
寝てください。」
「ふぁぁぁぁ…、なんで私ここで寝てるんだろう…。ふぁい、寝室に戻ります…。」
そういうと、姉さんは半分眠りながら階段を登ろうとした。が、止まった。
「…その様子だと、今日は事件が無かったから助手について調べてきたかんじかな?」
「正解です!さっすが姉さん~。」
「そっか。で、誰を調べてきたの?」
「青海さんですね。まぁまぁ凄い人だってことが分かりましたよ…。」
「やっぱり~?仕事する速さは速いし、けっこう丁寧に書類とかまとめていたし、いい人だとは
思っていたけど…。」
姉さんさえも思うほど、青海さんは凄い人だ。
「あんなに仕事を真面目にする人初めて見ましたよ。」
「ねぇ~。凄いよね~。」姉さんは目を細めて笑っていた。…笑顔ではあるのだが。どこかヒヤッと
する表情である。
そんなこんなで、姉さんは就寝に入った。あんなすぐに寝るということは、疲労が溜まっている
証拠だ。ゆっくり休んでてほしいな。