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妄想の帝国

妄想の帝国 その34  首都トップ選挙劇開幕前夜

作者: 天城冴

某国の首都のトップ選挙を控え、とあるスタジオではコピーライター・イトイダとタレント・ズルノが怪しげな会話を…

「ああ、選挙よ、首都トップ選挙、久々の大イベントよぉ、うきうきしちゃう」

剥き出しのコンクリートのスタジオで、色鮮やかなスーツを着た男性がうれし気につぶやく。その横で麻のジャケットを着こんだ茶髪の男性がたしなめる。

「イトイダさん、何をはしゃいんでるんですか、選挙ですよ。この国の首都のトップを選ぶんですよ、都民が」

「なーにーをー、真面目くさって言っているのよぉ、ズルノ君。選挙なんてイベントの一種よ。だいたい今年は肺炎ウイルス感染症対策のせいで、主要イベントが軒並み中止なのよぅ。これで盛り上がらなきゃあ、ほんとにこの夏のイベントは全滅よぉ」

「そりゃ、選挙って、イベントみたいなところはあるんでしょうけど、都民の代表を選ぶんですよ。福祉とか経済政策とか決める人なんですよ、ただのお祭り騒ぎじゃないでしょ」

「あーら、ここ数十年、お祭り騒ぎも同然だわよぉ。私も、便通で広告とかのぉ、お仕事とかぁ、長年やってるからわかるけどぉ。近頃の都民ってぇ、公約の検証をして候補者を選んでないでしょぉ」

「それは、確かに、そうですね。言ってることをやってることが違うって人、いますけど、リコールなんてなってないし。選挙のときに公約を考えて投票してるはずなんですけどねえ?公約が実現されたかなんて気にしてないのかなあ」

「それにね、四年前都民で今も都民って人ってどれぐらいいるのぅ」

「ああ、そういえば、大学とか多いし、東京に出たものの地方に就職するって学生結構いますね」

「首都に憧れて上京して職につこうとしてもぉ、夢破れてってパターンもあるじゃない。失業したりぃ、ブラック企業でつぶされてぇ、仕事辞めざるを得なくなったりする子もいるでしょ。貯金も尽きてアパートの家賃払えなくてぇ、部屋を追い出されたって人はぁ住民票移せるのかしらねぇ」

「そんな状況で家主から追い出しくらったら、役所にいく余裕なんてないですよね。ネットカフェやらに実質住んでても役所に届けなんか出さない」

「元の住所にぃ、選挙ハガキがとどいてもぉ、受け取りようがないわよぉ」

「そうなると投票できない、行政上の都民じゃなくなるってことですか。そうすると、ずっと首都にすんでる人が有利ってことですね」

「それでぇ、このバカ高い固定資産税がかかる首都にぃ、持ち家があるってどういう人?マンションでもいいけど」

「結構金持ち、ですね。首都だって下町とかあるけど、やっぱり土地代高いから、先祖代々とか、親の代から住んでる人じゃないと家とか買えないですね。じゃ金持ち好みのトップになりがちってことですか」

「まあ、それ以外の人もいるから、金持ちウケのいいことばっかり言っている人も駄目だろうけどぉ。学生とかぁ、転勤とかで来た人もいるだろうしぃ。それでも派手でパフォーマンスがうまくて目立ちやすくないといけないわねぇ」

「それって政策とかと全然関係ないじゃないですか。公約とかだと、ウツミンヤさんとかいいですけどね、地味なおじさんだけど」

ズルノの言葉にイトイダは

「ま、良いこといってるしい、金持ち連中だって、結果的にはウツミンヤさんについたほうがいいとわぁ、個人的には思うけどぉ、華がないからね、あの人」

「華?」

「そうよお、目立つっていうかぁ、ちょっと目を引くっていうか。なんていったって、先進国、アメリカの同盟国なのぉ、この国は。だから、首都のトップだってぇ、華がないとぉ」

「そ、そんな理由で。ヨーロッパの首都で首長ってそんなに目立ってましたっけ」

「他はどうでも、この国の首都の人間、都民がそういうのを求めてるじゃない。だいたい首都に集まってくる人ってのはぁ、華やかさとか賑やかさとか求めてくるじゃない。有名店が多いとか、便利さとか。決して一生暮らしていけるとかぁ、住み心地がいいかとかぁ、福祉充実じゃないのよぉ」

「生活には大事ですけどね、子育て政策とか。そっか生活に根付いた政策は実はあんまり重視されてないんですね」

「そうなのよぉ。貴方は一応お父さんだから、福祉とか教育とか関心あるだろうけどお。首都にくる、特にぃ、若い人は生活がぁ、政策に直結するってことぉ、ちょっと忘れてるのよお。まあ都民の大半がそうかもしれないけど」

「この国全体がそうかもしれませんけどね。それで公約すべて未達成、すべて実現できてなくても大丈夫ってことですか」

「あーら実現できてないわけじゃあないわよぉ。まあ、ちょっと前の集計法と違ったやり方でやってるだけでぇ。ヨゴハマ市のぉ、パヤシ・ブンコ市長だってやったじゃない待機児童ゼロって」

「前と基準変えたっていうあれですか。そういえばオオイケさんの犬猫殺処分ゼロも保護犬猫を他県に押し付けてゼロ達成って話もありますね。まあ名目上は達成といえなくはないですけど、前のやり方と違うんだから比較しようがないっていうか、誤魔化しですよね。それでも今のオオイケリリィさんは、派手さと、パフォーマンスのうまさで人気があるってことですか。横文字キャッチフレーズで、惑わされてる人もいるし」

「ま、そういうことね。だからぁ、私たちはリリィさん再選を盤石にするためにぃ、耳あたりが良くてぇ心に残るキャッチフレーズを考えてあげてぇ、候補からお金をもらうわけよ、間接的にね」

「まあ、確かにそうですねえ。しかし若い連中も派遣切りとか雇止めとか、奨学金で苦しむことになるかもしれないのに、派手なだけで何も実のあることをしてないオオイケを支持して実直で自分たちのためになる公約を掲げるウツミンヤさんはスルーですか」

「実際に苦しんで初めてわかるんでしょうねぇ。ただ、カッコイイ言葉に騙されてただけだって、本当に首長としてやるべきことはやってないってね。もっともそのころには家なき子で住民票もなくしてウツミンヤさんに投票もしようがないのかもねぇ。だいたい大市場のヅキヂの女将さん連中だって騙されたわけだしぃ、上京したてのぉ若い子なんてぇ、簡単に騙されちゃうわよねぇ」

「先のこと考えて行動しないと駄目ですね、誰についたら儲かるかとか、番組でつかってもらえるか、とか」

「そうなのよぉ、今度ぉ、誰が勝ちそうかってこと、ちゃんと都民のおバカな特性考えて行動しないとぉ、お仕事もらえなくなっちゃうからねぇ」

と、イトイダは高らかに笑った。


どこぞの国の首都でも選挙中ですが、公約実現ゼロでも現首長が人気トップらしいですな。なぜか全国で調査ですが。論理的整合性も科学的根拠もなく、カタカナ文字の多用と意味不明の言い回しでごまかし続けてもリコールされないようですが、ホントにそんな人でいいんですかねえ、都民のみなさん。仮にこの先、都民でなくなっても首都のトップがそんなだと悪影響はあると思いますが。

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