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青空  作者: かなえ
5/10

青空〜第5話〜

彼が、悲しい顔をしているなんて、思わなかった。


彼の、あたしに対する思いも、知らなかった。


そういえば、アタシは、彼の何を知っている??


転校生で、超能力者…


それだけ?あたしが知っているのは…




「おは。」


彼は毎日話しかけてくる。


あたしの気持ちも、知らずに。


「お…おはよ…。」

「飛ぶ?」

「・・・・・」

「そのほうが早いぞ!トロ!」

「なによ、そのあだ名は!!」

「…よし、戻った。」

「・・・・?」


「お前、明るいほうがいい。」

「はあ〜?何言って…。」

「俺、お前のこと…」



心臓のドキドキが、止まらない。



「なーんちゃって!びびったべ?」

「な、何よ…!!」


…ビビッタァ〜〜…


告白されるかと…


思った…



のに…



「飛ぶ??」

「うん…」


アタシは、彼の肩につかまった。

彼の温かさが、ぬくもりが、あたしに伝わってくる。



好きなんだ…アタシ…。



彼のこと、好きになっちゃったんだ…。




彼は屋上に降り立った。


ずっと彼の後ろにいたい…


ぬくもりを、温かさを、感じていたいよ…


だって、好きなんだもん…


「いつまでくっついてんだよ、ト…!?」


彼の手が、おでこにくっつく。ひやりとして、気持ちいい。


「お前…熱あんぞ!?」

「何言ってんだよ…。ちゃかすなよ…。」

「いや、マジであんぞ!?やべぇ・・・」


彼は、あたしを寝かせると、手を合わせた。目が、怖い・・・・。


「はっ・・・!」


彼が叫ぶと、あたしのおでこに、水をかけた。


「今は、これが精一杯。」

「サンキュ・・・。」


「保健室、行くか?」


アタシは迷った。


行けば、いい手当てをしてもらえる。


   でも・・・


「いい。」

「は?なんで・・・」


一緒にいたいから・・・


ずっとそばに、いてほしいから・・・


「ったく・・・・」








その少年は、目の前にいる少女が、眠りにつくまで、そこにいた。



   そして



そっと少女の口に、キスをした…

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