青空〜第5話〜
彼が、悲しい顔をしているなんて、思わなかった。
彼の、あたしに対する思いも、知らなかった。
そういえば、アタシは、彼の何を知っている??
転校生で、超能力者…
それだけ?あたしが知っているのは…
「おは。」
彼は毎日話しかけてくる。
あたしの気持ちも、知らずに。
「お…おはよ…。」
「飛ぶ?」
「・・・・・」
「そのほうが早いぞ!トロ!」
「なによ、そのあだ名は!!」
「…よし、戻った。」
「・・・・?」
「お前、明るいほうがいい。」
「はあ〜?何言って…。」
「俺、お前のこと…」
心臓のドキドキが、止まらない。
「なーんちゃって!びびったべ?」
「な、何よ…!!」
…ビビッタァ〜〜…
告白されるかと…
思った…
のに…
「飛ぶ??」
「うん…」
アタシは、彼の肩につかまった。
彼の温かさが、ぬくもりが、あたしに伝わってくる。
好きなんだ…アタシ…。
彼のこと、好きになっちゃったんだ…。
彼は屋上に降り立った。
ずっと彼の後ろにいたい…
ぬくもりを、温かさを、感じていたいよ…
だって、好きなんだもん…
「いつまでくっついてんだよ、ト…!?」
彼の手が、おでこにくっつく。ひやりとして、気持ちいい。
「お前…熱あんぞ!?」
「何言ってんだよ…。ちゃかすなよ…。」
「いや、マジであんぞ!?やべぇ・・・」
彼は、あたしを寝かせると、手を合わせた。目が、怖い・・・・。
「はっ・・・!」
彼が叫ぶと、あたしのおでこに、水をかけた。
「今は、これが精一杯。」
「サンキュ・・・。」
「保健室、行くか?」
アタシは迷った。
行けば、いい手当てをしてもらえる。
でも・・・
「いい。」
「は?なんで・・・」
一緒にいたいから・・・
ずっとそばに、いてほしいから・・・
「ったく・・・・」
その少年は、目の前にいる少女が、眠りにつくまで、そこにいた。
そして
そっと少女の口に、キスをした…




