91.レリーリアラの憂鬱 4
1ヶ月に一度の予定で、レリーリアラは、フィオナ王女様と会う予定になっていた。8の月は二学期末休みにフィオナ王女様と会う予定だ。
前回、謎のアドバイスをしてくれたミューラ・マ・ノーストキタ様が気になる。少し前まで返事をせかされていたレリーリアラの婚約者の件は、フェリオ王子様とフィオナ王女様の婚約者候補の発表があるまでは、保留になった。
イーデアルのためには、五星の男性を当主として迎えたい気持ちもある。西の公爵家に乗っ取られるみたいで、嫌な気持ちもある。イーデアル領は、豊かな土地だ。だからこそ、五星当主が守っていないとすぐに他国の脅威に晒される。筆頭公爵家と言っても、五星当主あっての話だ。祖父は、今年いっぱいで父に爵位を譲り、自領に戻る予定らしい。イーデアル領海域で、他国の船が頻繁に航海していることの対策のためもあるとのことだ。祖父が元気なうちはまだいいが、祖父が対応出来なくなれば、イーデアル公爵家はどうなってしまうのか心配だ。
「大丈夫よ。フィオナ王女様とエリアノーラが守ってくれるわ。」
イーデアルが今まで代々持っていた第一位の権限も、孫のフィオナ王女様の後見人もノーストキタ公爵家になった。唯一残されているのは、祖父の持つフェリオ王子様の後見人だが、祖父が引退すればそれも分からない。将来、王太孫として立つフェリオ王子様の後見人が四星の父では、王位継承権第二位のフィオナ王女様の後見人五星元王女ミューラ・マ・ノーストキタ様よりMRが低くなる。祖父は、フェリオ王子様の後見人をノーストキタ公爵様に譲られるかも知れない。
次期当主が四星、ただそれだけの理由で、イーデアルは代々持ち続けていた四大公爵家第一位の権限を失った。フェリオ王子様同様イーデアル公爵家の孫のフィオナ王女様の後見人が、祖父でないのも次期イーデアル公爵の父が四星だからだ。
魔力が力の全てであるこの世界は、五星と四星では全然立場が変わってくる。今までの実績なんて簡単に覆される。
そして、それは、国家も同様だ。歴史ある国家でも強い魔力を持つ五星が国を守れなくなった途端、隣国に滅ぼされる。
イーデアルが再び四大公爵家筆頭に返り咲くためにも、自領を守るためにも、イーデアルは五星当主を再び得なければならない。そのためには、西の公爵家の条件をのむしかない。五星の未婚の女性は、西の公爵家の次期当主の三歳の長女とフィオナ王女殿下のみ。四星の弟に五星の女性が嫁ぐ可能性はないに等しい。
8の月頭に、驚きの発表があった。
王弟、バードット殿下が王族としての権利と身分を剥奪されたのだ。バードット殿下は、侍女に三星王子を生ませ、それを捨て置いたことが王族としてふさわしくないと判断された。バードット殿下は、実姉ミューラ様の降嫁先であるノーストキタ領に生涯幽閉。王姪であるエリアノーラ・マ・ノーストキタ公爵様の管理下に置かれることになった。
バードット殿下の王族としての権利と身分の剥奪に伴い、二人の妃と未婚の三人の娘、一人の息子も権と身分を剥奪された。そして、同じく、王姪エリアノーラ・マ・ノーストキタ公爵様の管理下に置かれることになった。そして、来年1の月から、未婚の三人の娘たちと一人の息子は、ノーストキタ公爵家のご養女ご養子となられることになった。
バードット殿下の第四王女様はおそらくフェリオ王子様の婚約者候補から外れるだろう。ノーストキタ公爵家のご令嬢となられるので、まだ分からないが。今、話題は、ノーストキタ公爵家一色だ。南の公爵家に嫁がれたバードット殿下の第一王女様は、ノーストキタ公爵様が後見人となられた。西の公爵家の当主、次期当主は二人同時にノーストキタ公爵様の魔力に敵わなかったと聞く。四大公爵家第一位の権限もノーストキタ公爵様だ。さらには、来年から国王陛下に代わり国外外交の代表もノーストキタ公爵様が務められる。何もかも、全てがノーストキタ公爵様だ。
五星の魔力量は、四星では分からない。ただ、多いと感じるだけだ。五星同士なら相手の五星の魔力量を測れるらしい。この国で今一番魔力量が多い成人五星は、エリアノーラ・マ・ノーストキタ公爵様らしい。
「三ヶ月前まで自領に引きこもり、王都にほとんどいらっしゃらない方でしたのに。」
ノーストキタ公爵様は、魔力が全てのこの国を象徴するようなお方だ。レリーリアラはまだ会ったことがなかった。
「フィオナ王女様に今度ノーストキタ公爵様がどのようなお方なのか聞いてみようかしら。話題の一つが出来たわ。」
レリーリアラは前向きに考えることにした。




