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90.エリアノーラとサラ (3回目) 2

サ:「それは不思議ですわね。同一人物なのにそれほど違うのは。」


エ:「ええ、呪詛による影響かも知れませんわ。フェリオ王子様も十分魔力量が多いですし、魅力的な男児と思いますわ。」


サ:「初等学校でも、人望のある王子様ですわ。フェリオ王子様の周りにはお友達の男児が集まってきますわ。フェリオ王子様は、中心となって楽しく学校生活を送っているように見えますわ。ですが、女児は、遠くから見ていることが多いですわね。五星の王子様なので、積極的にフェリオ王子様に話し掛けようとする女児はいませんわ。フェリオ王子様からも、女児に話し掛けることもあまりないですわね。」


エ:「そうですか。まだ婚約者はいないとはいっても五星は厳しいですわ。私も五星なので、最初から諦めてましたわ。まぁ、まだ少し先の話ですわね。ところでフィオナ王女様の編入学の件ですが、どうなってますか?」


サ:「ええ、学長室の隣に会議室がありまして、その隣が保健室ですのよ。会議室と保健室を繋げて広い保健室を作りますわ。そして、その一部分をフィオナ王女様専用の別室に致しますわ。今改装計画と準備中ですが、三ヶ月ほどで工事を終わらせる予定ですわ。」


エ:「ありがとうございます。これでお二人揃って学校に通うことが出来ますわ。」


サ:「あの年齢で幻影魔法とは、凄い魔力ですわね。流石五星ですわね。幻影魔法は四星には出来ない魔法ですので。」


エ:「ええ、私も、練習を始めて僅か2ヶ月で出来るようになるのは凄いと思いますわ。私が子供の頃は完璧に出来るようになるまで半年近くかかりましたわ。母によく怒られましたわ。嫌な思い出しかないですわ。」


サ:「本体はフィオナ王女様で、フェリオ王子様の方が幻影と聞いてますわ。」


エ:「ええ、フィオナ王女様の体の方が魔力操作し易いらしいですわ。ただ、問題は、魔力が少なくなると男児のフェリオ王子様の体に戻ってしまうことですわ。なら、本体がフェリオ王子様の方がいいように思いますが、王女様の体の方が魔力の量も質も上なので。それに加えて、王女様にとって王子様の体の方が自然なのではないかと思ってますわ。」


サ:「私は、四星なので幻影魔法は出来ません。もう少し詳しく説明していただいてもよろしいですか?」


エ:「はい。幻影魔法は、所謂自分自身の分身を形にして作り出す魔法ですわ。全身を写す鏡の前で、最初は、そうですわね。指先だけ、とか、手だけ、とか、足だけとか体の一部分から始めて徐々に全身へと自身の体をコピーする範囲を広げていくのですわ。」


サ:「とてもたいへんだと思いますわ。」


エ:「ええ、最初は視覚的に覚えて頭の中でイメージして形作るのですわ。なので、少しでも違和感を持つと幻影魔法は出来ないのですわ。」


サ:「違和感ですか?」


エ:「ええ。例えば、そうですわね。とても愛する方がいたとします。その方の幻影を作ろうとします。まぁ、その方が目の前にいたとしてもいいですが、その方の例えば指先でもよくみて、触れて、イメージして、同じ形を作ろうとしても全く出来ないのですわ。」


サ:「どうしてですか?自分自身の幻影の指先なら、作れるのですわよね。」


エ:「ヒントは、今サラ教授の言った言葉の中にありますわ。」


サ:「えっ?」


エ:「自分自身ではないからですわ。自分とは違う人物を幻影で作り出すことは出来ないのですわ。自分の体と違う例えば手を作ろうとしても、心が『この手は私の手ではない』と思ったら、幻影魔法は出来ないのですわ。フィオナ王女様の場合、フェリオ王子様の姿の方が違和感なく自分自身だと思っているのではないのかと思いますわ。フィオナ王女様は、ずっと自分は男児だと思っていたと言ってましたわ。本当は女児で男児の方が呪詛による体と知ったのが一年半くらい前ですわ。そして、今でも男児として学校に通い、母との魔法の練習以外の時間をほとんど男児として過ごしています。フィオナ王女様にとって、男児の姿の方が自然なのですわ。女児の体の魔力量と質で普段の男児の姿の幻影が最適で、男児の体の魔力量と質では、普段と違う姿の女児の幻影は難しいと感じているのではないかと思われますわ。但し、男女の性別が違うと服装の問題がありますわね。着ている服装のままの幻影魔法は、自然体なので問題ないですが、着ていない服を幻影で作り出すのは難しいですわね。まさかすっぽんぽんは逆に不自然ですし。女児の服装のフィオナ王女様が男児の服装のフェリオ王子様の幻影を作り出すのは恐ろしいほど無駄な魔力を浪費するらしいですわ。」


サ:「なるほど、そうなのですね。勉強になりましたわ。ありがとうございます。」


エ:「専門家のサラ教授にそう言われると、何だか恥ずかしいですわ。」


サ:「五星の女性の方と魔法についてお話するのは初めてですので、勉強になりますわ。男性のイーデアル公爵様やエドガー陛下とは全然違いますわ。」


エ:「男性は、力任せの大雑把になる方が多いですわ。適当に勢いで、はい出来た、はい終わり、みたいな感じであまり細かく気にしないように思いますわ。」


サ:「エドガー陛下は、特にそうでしたわ。」


エ:「幻影魔法は、比較的女性の方が得意ですのよ。男性は、特に男児は、鏡の前で何時間も自分自身とにらめっこなんて苦痛だと思いますわ。うちの息子たちは、二人とも四星なので幻影魔法の練習はしませんが、もし息子が五星なら、練習を嫌がって逃げ出すと予想しますわ。」


サ:「男児は、そうですわよね。どちらかと言えば遊びながら魔法を覚える感じでしょうか。子供の頃は、男女共に遊び心も大切だと思いますわ。」


エ:「子供の頃はそうですわよね。私の母はスパルタでしたわ。何度逃げ出したか分かりませんわ。ですが、フィオナ王女様の場合は、雑談が多いらしいですわ。私の時と全然違う正反対の魔法教育ですわ。私、母に聞きましたのよ。その理由を。母は、私に言いましたわ。『あなたと違ってフィオナ王女様は既に何でも出来るから特に何も教えることはないのよ。あなたは遣らせないと自分からしないタイプでしょ?王女様は、言われなくても自分から努力するタイプなのよ。そして、簡単に出来るのよね。私はタイプ別教育方針なのよ。おほほほほ。』私、子供の頃、母の期待通りになれるように努力しましたわ。一生懸命頑張りましたわ。ええ、それこそ、母の期待に応えられない出来損ないの五星なんだと劣等感を持つくらいに。ええ、よく分かりましたわ。幼い頃の私を母は全く理解してなかったことが。」


サ:「確かに、ミューラ様に少し問題がある気がいたしますわ。」


エ:「ですわよね。ありがとうございます、サラ教授。私、母が『おほほほほ。』と笑った瞬間に殺意が芽生えましたわ。『このクソババア、幼い頃の私の努力を返せ。』って、一瞬本気で母の魔力を拘束してノーストキタ領に閉じ込めてやろうかと思いましたわ。ですが、もちろん母にそんなことは出来ずに、後で一人で泣きましたわ。そして、ゆっくり考えて思ったのですわ。『母は、ワガママな子供のまま大きくなった元王女様なんだ。自分の興味があること以外関心がないのだ。そんな母に本気になったらいけない。母と同レベルに落ちて相手をするのは負けだ。私が大人になるしかないのだ。』と、そう思うことにしたのですわ。少し気持ちが楽になりましたわ。」


サ:「そうですか。良かったですわ。ノーストキタ公爵様、そろそろお時間ですわ。」


エ:「あら。本当ですわね。何だかサラ教授と話をしていますと、時間が経つのが早い気がいたしますわ。また、来週もお会い出来ますか?」


サ:「はい。ノーストキタ公爵様とのお話はとても勉強になりますし、楽しいですわ。こちらこそ、来週もまたよろしくお願いいたします。」


エ:「では、失礼いたしますわね。サラ教授。」


そう言って会議室を出て行ったノーストキタ公爵を見送った後、サラは思った。ノーストキタ公爵様が王都に戻られて、本当に良かったと。引きこもりは、99%母親が悪いと。王都に戻られて、僅か三ヶ月で四大公爵家第一位の権限や国外代表になられたと言うが本当にそれに値する人物だと。後半はやや過激な発言もあったが、人間味があると言えばそうだ。

サラは、また来週ノーストキタ公爵と会って話すことが楽しみになっていた。

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