86.エリアノーラとサラ (2回目) 2
エ:「一週間前に初めて会ったばかりの私を信頼しているなんて、私が悪意があってサラ教授に話を聞いていると思わないのですか?一応、私、これでもこの国の成人五星では一番強い魔力を持ってますのよ。フィオナ王女様を廃する危険な存在かも知れないですわよ。」
サ:「ふふっ。そうですわね。フィオナ王女様がお生まれになった時のお話を聞いて、ボロ泣きしていたと聞きましたわ。後は、そうですわね、ミューラ様とフィオナ王女様の隣の席を取り合っていたとか…。」
エ:「待って。ちょっと、待って。何故そのことを…?」
サ:「先週、侍女長のエルザとは、初等学校時代からの友人と言いましたわよね。エルザから聞きましたわ。後は、イーデアル公爵様からも。イーデアル公爵様は、ノーストキタ公爵様をべた褒めしてましたわ。フィオナ王女様をお守りできるのは、ノーストキタ公爵様しかいないっておっしゃってましたわ。あの二人がノーストキタ公爵様のことを信頼してお任せできる方と言うのなら、私が信頼する十分な理由となりすわ。それに、私も、先週お会いして、そう思いましたわ。ふふっ。」
エ:「私の知らないところで、そんな話が…。」
サ:「お顔が真っ赤になってますわよ。そうそう、フィオナ王女様も、ノーストキタ公爵様を『かわいい方』とおっしゃっていたそうですわよ。ふふっ。本当ですわね。引きこもりを止めて、王都に戻ってこられたのは、この国の将来とフィオナ王女様のためですわよね。戻ってこられてからのノーストキタ公爵様の評判は凄くいいですわ。」
エ:「分かりましたわ。もう、その通りですから、止めて下さい。恥ずかしいですわ。」
サ:「うふふ。まだ、真っ赤ですわよ。本当にかわいい。フィオナ王女様をよろしくお願いいたしますわ。王女様は私達にとってとても大切な方なのです。」
エ:「ええ、分かってますわ。そのために私は戻りましたので。魔力研究の権威であるヨーデキール一族のサラ教授なら、国王陛下や母ミューラの魔力の衰えをお分かりになると思います。」
サ:「私は、四星ですので、具体的に五星の方の魔力量がどうなのかは分かりませんが、だいたいの予想は出来ますわ。四星以下では、MRに限らず魔力量はだいたい成人年齢の16歳くらいまで増え続けますが、成人後は、鍛練をしたとしても魔力の増加は穏やかになり20歳くらいまでには安定します。そして、40歳を過ぎた頃から少しずつ減り始め、60歳頃になると若い頃の半分前後まで減少します。70歳頃になると魔力量は、若い頃の三割前後まで減少します。そして、加齢は、魔力の回復力も悪くします。若い頃は一晩寝れば回復しますが、50歳を過ぎれば一晩寝てもなかなか回復しません。」
エ:「ええ、五星も同じですわ。国王陛下も母も若い頃と比べてそのくらい減少してます。ただ、五星は、個人差が大きいですので、国王陛下も、母も西の公爵家の若い次期当主よりかはまだ多いですわ。」
サ:「それほど変わるのですか?四星以下ではせいぜい倍と半分前後ですわ。」
エ:「ええ、まぁ。一応、私の魔力は、母譲りの王族系五星ですが、私の魔力量は全盛期の母よりも少ないですわ。ほとんど同じですが。全盛期の国王陛下やエドガー陛下は、母よりも多かったですわ。」
サ:「四星以下では、直系長子の魔力量が一番多いですわ。」
エ:「ええ、五星も同じですわ。そして、五星の魔力量は、倍と半分などという生易しい差ではありません。王族系五星は、公爵系五星の三~四倍もしくはそれ以上あると思いますわ。」
サ:「えっ?本当ですか?」
エ:「ええ、まぁ。公にはしてませんが。一応、長年この国を支配してきた王族ですので。つまりは、四大公爵家が勝てない程度の魔力量があるのですわ。ですが…。」
サ:「私がお聞きしても大丈夫ですか?」
エ:「長年魔力を研究しているヨーデキール一族なら、予想の範疇と思いますわ。王族系五星は、だいたいの人数が決まっていますのよ。上限のみですが。Maxで8人くらいですわ。なので、歴代の国王陛下の妃は、ほとんど第一妃第二妃で終わりです。側室も認められていますが、側室までいた国王はほとんどいないのです。次世代が困るので。王族の男性も状況次第で第二妃もありますが、たいてい第一妃で終わりですわ。そして、降嫁した五星王女様の子孫が五星女性なら、王族男性の妃として王族に戻されるのですわ。王族は常に王族系五星系譜といえますわ。」
サ:「自然の摂理かも知れないですわね。MRを持つ者とMRを持たない者の数がほぼ一定なのと同様に。MRも各星の割合も常に一定ですから。」
エ:「ええ、まぁ、そう思いますわ。ですが、次世代は、フィオナ王女様だけなのですわ。私には、五星の子がいませんので。」
サ:「もしかして、それは…。」
エ:「ええ、この国の存続に関わりますわ。公爵系五星程度の魔力量では、この国を守れません。つまり、将来、フィオナ王女様に五星の子供が授からなければ、国家自体が危ういのですわ。私は、知らなかったのです。王家には、五星のフェリオ王子様がいて、静養中とは言え双子の妹王女様もいるので王家は次世代も安泰と思ってました。そして、私だけでなく、母も知らなかったのですわ。もし、母がその事をフィオナ王女様がお生まれになってすぐ知っていたなら、私は、今の夫と婚約状態のまま保留。もしくは婚約解消ですわ。そして、おそらく西の公爵家の五星嫡男と婚約。生まれた五星は、男性なら、フィオナ王女様の王配に、女性は、南か東の公爵家に嫁ぐことになるでしょう。ある程度、法と慣例で決まってますのよ。五星に関しては。って、そろそろお時間ですわね。」
サ:「いえ、今日は…。今日といいますか、毎週、光の曜日は朝の9時から王宮魔力研究所に出勤してますのよ。今日は前回のことがありましたので、少し遅れると連絡してますわ。もし、何かありましたら、この会議室に連絡があるはずですので、今日は、ノーストキタ公爵様のご予定にある程度合わせられますわ。」
エ:「そうですか。では、後、一時間くらいよろしいですか?続きは、また、来週の同じ時間にお話出来たらと思います。」
サ:「はい。よろしくお願いいたします。」




