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85.エリアノーラとサラ (2回目) 1

前回会った一週間後の同じ時間に、再びエリアノーラはサラと会って話をすることになった。


エ:「サラ教授、再びすみません。お忙しいのにこんな朝早くからありがとうございます。」


サ:「いえ、ノーストキタ公爵様。私の方こそノーストキタ公爵様のお時間に合わせられなくて申し訳なく思っています。早速ですが、エルザにはお会いになりましたか?」


エ:「ええ、会ったわ。あなたの言う通り、エドガー陛下は毎日お腹の双子の魔力に触れていたわ。『サッシー(左四星)とウーゴ(右五星)』という愛称でお腹の双子を呼び、ウーゴには魔力を抑えるように語りかけていたらしいわ。ウーゴがそれに反応するととても喜んでいたと聞いたわ。魔力干渉があったと思って間違いないわね。」


サ:「『サッシーとウーゴ』…エドガー陛下らしいネーミングセンスですね。マリアンヌ様がおっしゃってました、エドガー陛下が最初に考えた双子のお名前が『マリガー』だったと。双子らしいお名前に考え直してくれてよかったと。」


エ:「えっ、『マリガー』ですか?…ちょっと、ないですわね。フェリオ王子様がそうならなくて、よかったですわ。」


サ:「ええ、その後双子らしいお名前を考えてくださったそうですわ。男女二つずつ。フィオナ王女様もフェリオ王子様も、エドガー陛下が考えていたお名前のうちの二つですわ。

話は変わりますが、前回の続きを、分かりやすく説明するために資料を作成してきましたのでお受け取り下さい。」


エ:「ありがとうございます。お忙しいのに申し訳ないですわ。」


サ:「いえ、ほとんど私の研究論文の抜粋ですので、それほど時間がかかったわけではないですわ。」


エリアノーラはサラから資料を受け取り、パラパラと見ると、前回のサラの説明が分かりやすく図解されて解説されていた。


サ:「ここまで調べるのに、10年かかりましたわ。もう少し早く調べていれば、もっとたくさんの命が救えたかも知れない、と思う時もありましたわ。」


エ:「マリアンヌ様が双子をご懐妊された時にはまだ研究中だったと聞いてますわ。」


サ:「ええ、正常に生まれてきた僅かな事例を調べ、正常に生まれなかった場合と何が違うのかを比較しているところでしたわ。しかしながら、MRの違う双子は無事に生まれてくる可能性が低い上に母体も危険となるために、MRが違うと分かった時点で諦めてしまうことが多いのです。また、家族も悲しい話をしたくない気持ちも分かりますので、研究のためとはいえ、踏み込んで話を聞くことも出来ずにいました。事例が極端に少なくて、苦労しました。なので、結局、マリアンヌ様の出産には間に合いませんでしたわ。ですが、私自身のケジメとして研究は続けていますわ。今後のためにも、亡くなられた方々のためにも。

そして、研究結果から申しますと、MRの違う双子を授かった場合、産むことはお薦めしません。双子が無事生まれるためには、母親よりも高いMRの者、一番は父親が身近な存在ですが、父親でなくても大丈夫です、が、必ず毎日胎児に魔力干渉する必要があると考えられるのです。そして、そのように協力者がいたとしても、無事に生まれてくる可能性は、1%程度、いえ、実際にはもっと低いと思われます。命の選択となってしまいますが、産むことを選択するのは、かなり厳しいと思います。」


エ:「そう、ですわよね。」


サ:「私は、この研究論文を発表することによって、わざとMRの違う双子を妊娠させ、母親の命より、僅かの可能性の強い魔力の子供を得ることを優先する世界にならないかと危惧しているのです。この世界は、魔力が全てですので。

私が調べたのは、自然の形での研究結果ですが、人工的にはいくらでも違った形で発展して研究出来るのです。例えば、魔力干渉をする者が母親よりも2星以上上ならどうなるのか、とか。単体児に魔力干渉したらどうなるのか、とか。所謂、人体実験ですわ。

しかし、人体を人工的に管理するような研究は、人としての倫理に反すると、私は、思っています。

MRの違う双子を助けたいと思ってし始めた研究ですが、その結果が逆に人工的な存在を作り出すようになってしまったらと思うと恐ろしいですわ。」


エ:「サラ教授…。」


サ:「MRの違う双子が生まれてくることが出来ないのは、自然の摂理かも知れません。ですが、MRの違う双子を授かった夫婦が無事に生まれてくることを願い、それにお腹の子供が運よく答えて生まれてくるのは、奇跡的なことであると私は思います。そして、それは、人工的であってはいけないのです。

私は、研究者ですので、双子の魔力についての論文は発表するつもりでいますが、MRの違う双子の場合については、発表しないつもりです。私がノーストキタ公爵様にこの事をお話した理由は、ノーストキタ公爵様を信頼しているからですわ。」


エ:「一週間前に初めて会ったばかりの私を信頼しているなんて、私が悪意があってサラ教授に話を聞いていると思わないのですか?一応、私、これでもこの国の成人五星では一番強い魔力を持ってますのよ。フィオナ王女様を廃する危険な存在かも知れないですわよ。」

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