84.レリーリアラの憂鬱 3
「では、レリーリアラ様、失礼しますわ。」
そう言って、立ち去ろうとしたミューラだったが、レリーリアラの顔を見て、立ち去るのを止めた。
「フィオナ王女様、先に戻って、フェリオ王子様を呼んできていただけますか?私、レリーリアラ様と少しだけお話したいことがありますの。」
「はい。分かりましたわ。では、レリーリアラ、私もまたあなたとお話したいわ。今日は、来てくれてありがとう。」
フィオナは、今日の幻影魔法の出来についてかな?と思い、自分がいない方がいいと判断し、挨拶をして一人部屋を後にした。
フィオナが部屋を出た後、ミューラはレリーリアラに話し掛けた。
「レリーリアラ様、先ほど、フェリオ王子様とフィオナ王女様と一緒に初めてお会いした時より、目元がきれいに戻ってますわよ。フィオナ王女様の魔力に触れられましたか?」
「えっ?はい。でも、ミューラ様もフィオナ王女様もすぐお分かりになられるなんて。自分では治したつもりでいましたわ。少し気にはなってましたが、初対面の方なら分からないと思ってました。お恥ずかしいですわ。」
「理由をお聞きしても、よろしいですか?」
「たいした理由はありませんわ。特に話すことではないです。少し考え事をしていただけですわ。」
「フィオナ王女様にも、そのようにお答えしたのですか?」
「はい。そうですわ。本当にご心配をしていただくほどのことはございませんので。」
「そうですか。分かりましたわ。私は、あなたくらいの年齢の公爵家のご令嬢が夜泣き明かしてしまう理由は、おおよそ婚約者候補についてくらいなことかと思いましたわ。自分ではどうすることも出来ないことですものね?分かってはいても。」
レリーリアラは、目を見開き、何も言えなくなってしまった。
「あら?当たりですか?」
「……」
「夜、泣き明かすほどお嫌ですの?そのお相手の方は?」
「申し訳ありません。ミューラ様。これ以上はお許しください。私だけでなく、お相手にも、その他の方々にもご迷惑をおかけすることになってしまいます。お願いいたします。」
「まぁ、私も、その気持ちは分かりますわ。私が何とか出来そうでしたら、少しくらいお手伝いしますわよ。」
「ありがとうございます。ミューラ様。ですが、私も自分の立場くらい心得ております。不満を言うつもりはございません。ただ、夜、一人で泣くくらいのことは、お許しください。」
「あら。なかなかいい心がけじゃない。うふふ。気に入ったわ。そうね、あなたが泣くほど嫌な相手、当ててあげましょうか?」
「お許しください。ミューラ様。お願いいたします。」
「大丈夫よ。あなたの見方になってあげるわ。あなたを気に入ったって言ったでしょ。どうせ、西の公爵家の次男坊あたりじゃないの?西の公爵家が無理難題な条件を押し付けてきてるんでしょ?爵位は次男坊に継がせろとか、年齢的に第二夫人があなたで、先に別の女性を第一夫人とするとか。」
「……」
「あら。やっぱりそうなのね。あの男の言いそうなことだわ。大丈夫よ。心配しなくても誰にも言わないわよ。ところで、フィオナ王女様の魔力は、どう思いました?これなら答えてもらえるかしら?」
「私は四星ですので、五星の方々の違いは分かりません。ですが、フィオナ王女様の魔力は、暖かくて、心地よくて、安心できるそんな優しい魔力でしたわ。」
「でしょ?フィオナ王女様の魔力は、五星の中でも、特別極上の魔力よ。もし、フィオナ王女様のお側にお仕えする覚悟があるなら、そのお相手はお断りしなさい。」
「ですが、そのようなこと、私には…。」
「今のイーデアル領のことなら、聞いているわ。大丈夫よ。フィオナちゃんとエリアノーラが守ってくれるわよ。」
「えっ?フィオナ王女様とノーストキタ公爵様ですか?」
「そうよ。だから、あの男の言うことなんか聞かなくていいのよ。ねぇ、フィオナちゃんの魔力は、凄いわよ。それと、あの子は、無自覚に人たらしだから、いろんな人が近付く前の方がチャンスよ。あの子を落とすなら早い方がいいわ。今のうちよ。そうすれば、あの子があなたの心配事を全部解決してくれるわよ。」
「えっと、全くおっしゃっている意味が分かりませんわ。フィオナ王女様は、女性ですわよね。」
「そうよ。かわいいでしょ?」
「はい。とてもかわいいと思います。…ではなくて、私も女性ですわ。どうして、女性が女性を落とすことになるのですか?」
「あの子は…。そのうち分かるわ。あなたがあの子を落とせば、だけどね。」
「はぁ?全く分かりませんが、お友達にはなりたいと思いますわ。」
「そうね。先ずは友達からよね。私のフィオナちゃんをよろしくね。」
「はい。ありがとうございます。ミューラ様。」
「あら。かわいいわね。やっぱり素直な女の子はかわいいわ。どうしてうちのエリアノーラは、わがままで、反抗的でかわいくなかったのかしら?不思議だわ。甘やかされ過ぎたのね。あの子。」
『ミューラ様がなかなか強引な方だからからではないでしょうか?私も娘なら疲れますわ。』
レリーリアラはそう思ったが、黙っていた。
「ごめん、ごめん。お待たせ、レリーリアラ。あれ?ミューラ大叔母上、まだいらっしゃたのですか?レリーリアラに何か余計なこと話してないですよね?」
フェリオがそう言いながら戻ってきた。
「何も話してないわよ。女同士の秘密よ。ね、レリーリアラちゃん。」
「はい。ミューラ様。秘密でお願いします。」
「えっ?何、何?気になるなぁ。」
「秘密よ。秘密。女は、少し秘密を持っている方が魅力が増すのよ。では、またお会いしましょうね。レリーリアラちゃん。」
『『全く意味分からないです(わ)。ミューラ様。』』
まだ子供の二人に意味不明の言葉を言い放ち、ミューラは部屋を出て行った。




