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82.レリーリアラの憂鬱 1

「はぁ~~。」

自宅に帰ったレリーリアラは、今日、ソフィアがため息をついていたのと同じように深いため息をついていた。


ソフィアは、何でもないと言っていたが、その後二人でした会話の内容から察するに、おそらく、将来の結婚相手についての悩みだろう。ソフィアは伯爵家の四星。お相手は、侯爵家以上の嫡男の第二夫人以上か、自分が爵位を継ぎ親の選んだ相手を婿養子に迎えるか。いずれにしても、自分で相手を決めることはできない可能性が高い。


「ソフィア様は、誰か好きな男児でもできたのかしら?最近、アーロン様とご一緒にいるみたいですけど。もし、アーロン様を好きになっても、厳しいですわね。」

アーロンは、子爵家嫡男。次男以下なら可能性はあるが、おそらく父親の爵位を継ぎ、フェリオ王子様にお仕えすることを望むだろう。爵位のない婿養子にはなりたくないと思われる。


「私も、自由に相手を選んでみたいわ。でも、無理よね。はぁ~~。」

好きな相手と結ばれたい。誰だってそう思うだろう。しかし、公爵家の令嬢が相手を選ぶなんてほとんどない。両親と相手の男性側が選ぶのだ。


「フェリオ王子様は、私を選んでくれるかしら?」

別に、フェリオが好きではない。マシだと思っているだけである。一番嫌なのは、西の公爵家の次男との件だ。イーデアル公爵家としても悩んでいるみたいだが、筆頭公爵家イーデアルに五星当主がいないことは数世代なかった。しかも、二代続けては、前代未聞だ。イーデアル公爵家を思うなら、西の公爵家の条件通り西の公爵家の次男ガラドックをイーデアルに迎え入れるべきだろう。


「結局、フィオナ王女様次第になる可能性もあるし。」

フィオナ王女様の婚約者候補には、弟も入るだろう。二つ年下の弟がフィオナ王女様の婚約者になれば、レリーリアラとガラドックの件は、ほぼ決定だ。


「フィオナ王女様かぁ~。はぁ~~。」

イーデアル公爵領の本宅でお預かりしていたはずのフィオナ王女様は、いつの間にか王宮に戻られた。レリーリアラは、会ったことがないままだ。しかも、ずっとイーデアルでお預かりしていたにも関わらず、フィオナ王女様の後見人は、父や祖父ではなく、ミューラ・マ・ノーストキタ様だ。そして、祖父は、四大公爵家第一位の権限をエリアノーラ・マ・ノーストキタ公爵様にお譲りになった。イーデアルが筆頭公爵家でなくなってしまったことに等しい。公爵家の当主が五星でなくなるのは、そう言うことだ。


五星は少ない。公爵家でも一世代一人か多くて二人。その貴重な一人が代々公爵家を継いできた。故に、一度五星を失った公爵家は再び五星を得るのが難しい。そして、五星を再び得る一番多い機会は、五星王女様の降嫁だ。しかし、法が変わり、フィオナ王女様は降嫁されず王族のままだ。フィオナ王女様がイーデアルに降嫁されれば、こんなことにならないのに。王家には、フェリオ王子様がいらっしゃる。なのに、何故祖父は、率先して法を変え、全てを父ではなく、ノーストキタ公爵家にお任せするのだろう。四星と五星の差を感じない訳にはいかない。おそらく父は、ずっと辛い思いをしていることだろう。自分が五星でないことを。そして、全てをノーストキタ公爵家にお任せした祖父も同じく辛いはずだ。


フィオナ王女様だけでなく、将来も五星王女様は、降嫁されないなら、やはり、西の公爵家の条件通りが一番いいように思える。


「私が我慢すればいいことは分かるわ。私が、お父様にその条件通りでお願いします、と言えばおそらくその通りになる、だけど、嫌なものは嫌なの。」

レリーリアラは、一人で涙を流して泣いた。

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