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8.呪詛

主人公視点に戻ります。

 次の日、再び祖父王を訪ねると、祖父王ともう一人の祖父、母方の祖父ゴルディオ・マ・イーデアル公爵がいた。


「お祖父様、ご機嫌いかがでしょうか?

あれ?イーデアルお祖父様もご一緒なのですか?」


 母方の祖父、ゴルディオはフェリオの魔法の先生だ。

昨日、普段と変わらず魔法を習ったが、今日のことは特に何も言ってなかった。


「イーデアル公爵殿は、急遽、わしが呼んで来てもらった。そなたは、そこに座りなさい。」

祖父王がフェリオに声をかけた。



「いいか。落ちて聞きなさい。そなたのその体の痛みと不思議な現象の正体は『呪詛』なのだ。」


「えっ?呪詛?呪詛って、どういうことですか?」

フェリオは驚いて、不安になった。

「何でですか?ぼく、何か悪いことしたのですか?誰かに恨まれるようなこと、ぼくはしたのですか?」


『呪詛』…五星の者が強い魔力で相手を呪うこと。相手のMRが四星以下なら、五星の者の体に影響ないが、呪詛をかける相手が五星の時は己の全ての魔力と命を失う。


 フェリオは知っていた。五星の呪詛について。

思わぬ話に動揺しているが必死に考える。


『ぼくを恨んでいる人がいた?誰?誰だろう?五星は、国中でも数人しかいないはずだ。そして、その五星は既に亡くなった人、ぼくが生まれて以降の亡くなった五星。まさか…。』


「…父上。」



「そうだ。そなたに呪詛をかけたのは、そなたの父親、わしの息子のエドガーだ。」


「どうして、父上がぼくに呪詛をかけたのですか?

父上はぼくが生まれてすぐの頃に病気で亡くなったのではないのですか?」

フェリオは、悲しくなって涙が溢れてきた。

「どうして、どうして……」

涙が止まらない。



「フェリオ王子殿下、殿下は何も悪いことはしてません。泣かなくても大丈夫です。」

ゴルディオがフェリオを優しく慰めた。


 少し落ち着いてきたフェリオを見て、祖父王が再び話始めた。

「そなたが双子であったのは知っておろう。そなたの兄は死産だった。」


「兄?ぼくには妹がいるんですよね?体が弱く、イーデアルお祖父様のところで養生しているのですよね?」


「そなたに妹はいない。いや、いないと言うか、そなたがその双子の妹だ。」


「えっ?」

フェリオは、混乱した。祖父王の言っていることが全く理解できない。


「落ち着いて聞きなさい。…そなたたちは、MRの違う双子、そなたは五星だが、そなたの兄は四星だったのだ。MRの違う双子は正常に生まれてくることがほとんどない。無理に産もうとすれば、子だけでなく、母親も亡くなってしまう危険性が高い。医師団は、息子に母親の命を優先すべきと進言した。息子も医師団と同じ意見だった。息子は、そなたの母親に『危険だから子は諦めろ』と言ったのだ。」


 フェリオは、震えた。自分たちがそんな危険な存在だったなんて考えたこともなかった。


「だが、母親はそなたたちを産むことを望んだ。最初は反対していた息子も妃に同意した。そして四星のそなたの兄は死産。五星のそなたは早産で産まれた。そなたたちを産むとすぐに母親は亡くなった。絶望した息子は、女児であったそなたを男児に変える呪詛をかけ、死んでしまった。」


「ぼく、本当は女の子なのですか?」


「そうだ。フィオナは、そなたがいずれ本当の姿を取り戻した時に困らぬように用意したそなたのことだ。」


 そして、ゴルディオがフェリオの体の不思議な現象を説明してくれた。


「殿下、魔力は夜寝ている時に一番回復します。殿下が夜中になると体に痛みを感じるのは、己の魔力が呪詛に打ち勝つだけ回復し、無意識に体を本来の女児の姿に戻したからです。痛みで目が覚めた時、男児の証がなくなってしまっていたのはそのためです。

 殿下が大きくなり、今よりもっと多くの魔力を持てるようになれば、だんだん長い時間女児の姿でいれるようになります。

 成人を迎える16歳頃までには完全に本来の女性の姿に戻ることができるでしょう。」


 急にそんなことを言われても、フェリオは、ショックで頭の中がぐちゃぐちゃだった。


「殿下、今の殿下の魔力では、夜中の短い時間だけですが、もう少し魔力が増えれば昼間の太陽が出ている時間帯も、ご自分の意志で体を女児に変えることが出来るようになります。

私がお教え致します。

 ですが、昼間は魔力の消耗が激しいので、夜に比べると時間は短くなると思います。

魔力が切れて人前で突然男児に戻ってはいけません。初等学校の間にご自身の魔力と女児に戻れる時間とがご自分で把握できるように魔力操作の練習をしましょう。」



「…はい、イーデアルお祖父様。」

フェリオは、力なく答えた。



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