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79.エリアノーラとサラ (1回目) 2

エ:「フィオナ王女様が生まれた後のことよ。何故四星であなただけフィオナ王女様の近くに居れたのですか?他の四星は、生まれたばかりとはいえ、五星の王女様の放つ魔力に近付くことができなかったと聞いたわ。」


サ:「それは…。ノーストキタ公爵様に隠していても仕方ありませんので、お話ししますわ。私、公式ではMR四星ですが、本当は四星半なのですわ。」


エ:「四星半とは?」


サ:「四星の亜種みたいなものですわ。質は四星なのですが、四星を越えた魔力量を持つのです。五星になれなかった四星と言えばいいでしょうか?ヨーデキール一族にたまにいるらしいです。私の知る限りでは、曾祖父が四星半でした。祖先にもいたらしいと聞いています。ヨーデキール一族が魔力研究をしている理由の一つですわ。」


エ:「では、本来ヨーデキール侯爵家を継がなくてはならないのは?」


サ:「はい、異母姉ではなく、私です。今、父がヨーデキール侯爵として爵位を得ていますが、父は普通の四星です。私は、成人するとすぐに父から爵位を譲り受けヨーデキール侯爵とならなければならない立場でした。」


エ:「何故、そうしなかったのかお聞きしても?それは、国の法に反することですわ。」


サ:「はい。私には四星の異母姉と三星の異母兄がいます。父は跡取りとなる四星男児を得るため、私の母を第二夫人として迎えました。ところが生まれたのは四星でも女児の私でした。父は異母姉を跡取りと決め、異母姉に教育を施しました。まぁ、事、学業に関しては、姉だけでなく私もヨーデキール一族の子息令嬢は、勉強は出来て当たり前。満点ではなく満点以上の成績を修めるのが普通と教えられましたが。」


エ:「それは、流石、ヨーデキール一族というか、なんといえばいいのかしら…」


サ:「何も努力しないで勉強が出来るわけありません。姉も兄も、父や一族が当たり前と思っているその当たり前に応えるために努力していました。姉は、自分の勉強の合間に遊びを通して私に勉強と魔法を教えてくれました。幼い私は、仕事が忙しく全く私を顧みない父より、私を可愛がってくれる優しい姉、少しシャイで不器用ながらも私と遊んでくれる兄が大好きでした。

姉が遊びながら教えてくれる勉強や魔法は、家庭教師の先生より分かりやすく楽しくて。幼い私は、姉に褒めてもらいたくて、頑張ってできるようになろうと努力しました。まだ初等学校に行く前の頃です。その頃姉は、既に高等学校にヨーデキール侯爵家の跡取り長女として通っていました。ある時、その姉の魔力量を初等学校に入る前の幼い私が越えてしまったのです。当然、姉は気付き、驚きました。いえ、本当はもっと私が小さな頃からそうではないかと思っていたそうです。

そして、姉は私に『サラ、あなたのMRはヨーデキール一族にたまに現れる四星半よ。一族一番の魔力量を持つ者が爵位を継ぐ決まり。私ではなくあなたが爵位を継ぎなさい。父にそう報告します。』と言いました。

私は、姉の今までの努力が無駄になると思い、泣きながら姉に父に言わないで欲しいとお願いしました。

ところが姉は、『そんなことは出来ない。法に反する。』と、私のお願いを聞いてくれませんでした。

私は、姉を魔力で威圧し、従わせました。人を威圧したのは初めてで、幼い私はとても怖いと思いました。」


エ:「サラ教授…。」


サ:「それ以来、優しかった姉は私に脅え、私を避けるようになりました。私たちの関係は仲の良い姉妹からお互いに避け合うギクシャクしたものになりました。

姉とそうなってから家の中は私にとってとても居心地の悪い場所に変わりました。幼い私は、私の魔力が四星半のせいでこんなことになったと思いました。自分の魔力のことを誰にも知られたくないと思い、初等学校に上がる前の魔力検査で自分の魔力を誤魔化しました。

親の身分に関係なく皆平等に友人たちと過ごす初等学校の学校生活は、居心地の悪くなってしまった家と違い、とても楽しかったです。私は、このまま普通の四星として学校生活を送りたいと思いました。ところが、高等学校に上がる前の魔力検査で私が四星半とバレてしまいました。初等、中等学校の検査器具と高等学校の検査器具では、精度が違ったのです。

私は、絶望しました。今まで私が必死に隠していた四星半の魔力が、友人たちにバレてしまったことを。私は友人たちを騙していたことになり、信頼も友人たちも全て失ってしまうのはないのか、仲の良かった姉との関係が悪くなってしまった幼いあの頃のように、今度は学校まで私の居場所がなくなってしまうのではないかと、悲しくて悲しくて、自分がどうすればいいのか分からなくなりました。」


エ:「うぐっ、ひっく。もういいわ。分かったわ、サラ教授。それ以上は言わないで。うわああん。」


エリアノーラは、子どものようにボロ泣きし始めた。これには、サラ本人がドン引きするほど見事なボロ泣きで、しかもなかなか泣き止まず、鼻水だらだら、化粧はぐちゃぐちゃで、目は真っ赤だった。


エ:「うぐっ、ひっく、ずぴっ。わがっだわ。でも、学校では、ぞうならながっだ。あなだのご友人だちば、うぐっ、ひっく。あなだをわがっで、みがだになってぐだざっだのね。うぐっ、ひっく、ずぴっ。」


サ:「はい。エドガー陛下もマリアンヌ様もエルザも、今は私の夫となったドジルも、皆、変わらず私と友人でいてくれました。えっと、あの、ノーストキタ公爵様、大丈夫ですか?えっと、その、お顔が少し…。よろしければ、侍女を呼びましょうか?」


エ:「うぐっ、ぐずっ、ひっく、ひっく。だ、大丈夫よ。わだぐじを心配してぐだざるなんで、おやざじいわ。あ、安心して、わだぐじも、ひっく、ひっく、ざ、ざら教授の見方になりますわ。うぐっ、ぐずっ、うわああん。」


サ:「あ、ありがとうございます。ノーストキタ公爵様、侍女を呼びますわね。」


エ:「うぐっ、ぐずっ、ええ、お願いいたします。ざら教授。ずぴっ。ちーん。ちーん。ちーん。」

サラは、侍女を呼び、エリアノーラが落ち着くのを待った。



エ:「ごめんなさい。サラ教授。お見苦しいところをお見せしてしまいましたわ。」


サ:「いえ、こちらこそ。私をご心配していただきましてありがとうございます、ノーストキタ公爵様。」


エ:「ごめんなさい、私のせいでもうお時間がなくなってしまいましたわ。また、お会いしてお話の続きを聞かせていただけますか?」


サ:「はい。こちらこそ、私の昔話に時間を取られてしまい、申し訳ありませんでした。王女様のことは、後日、もう少し詳しくお話いたします。ノーストキタ公爵様、ありがとうございました。」


次の予定のあるサラは、部屋を出て行った。エリアノーラも、次の予定があったのだが、気持ち的な問題で、少し遅刻してしまった。


…エリアノーラは、涙脆いお人好しだった。

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