78.エリアノーラとサラ (1回目) 1
7の月の半ば過ぎ、エリアノーラは、ゴルディオの紹介で、サラに会うことになった。ただし、双方忙しく、なかなか日程と時間調整がうまくいかず、朝の6時~8時半まで、二時間半のみ王宮でと少し厳しいものだった。
エリアノーラが少し早めに行くと、サラはもうきていた。お互いに挨拶交わした後、忙しい二人は早速本題に入った。
エ:「サラ教授、私、あなたに以前から色々お聞きしたいと思ってました。国王陛下や、イーデアル公爵様、後は母からだいたいのことは聞きましたわ。あなたは、マリアンヌ様がご懐妊中、MRの違う双子が無事生まれることができるように色々と研究なさっていたそうですわね。どのような研究だったのか、また、生まれる前後のフィオナ王女様の魔力をあなたやエドガー陛下がどう感じていたのか教えていただけますか?」
サ:「フィオナ王女様の魔力ですか?私は、四星ですので、五星の王女様の魔力がどうであったかは、正確には分かりませんが、それでもよろしいでしょうか?」
エ:「ええ。先ずは、MRの違う双子の研究について教えていただけますか?」
サ:「はい。ですが、あまり詳しく説明すると、とても二時間半では終わりませんが、それでもよろしいでしょうか?」
エ:「できるところまででいいわ。続きは、後日改めてとかでも大丈夫ですし。」
サ:「分かりました。では、最初から説明いたしますわ。
先ずは、一般的な双子からです…」
サラは、更々と説明し始めた。とても分かり易く、簡潔であった…が、
エ:「待って、流石に全部聞く時間は、ないわ。」
これでは、本題の前に説明で終わってしまいそうなくらい専門的なことを1から説明してくれていた。
サ:「そうですわよね。申し訳ありません、ノーストキタ公爵様。」
エ:「いえ。大丈夫ですわ。」
サ:「ありがとうございます。つまり、母親のお腹は本来一人用ですが、それに二人なので、正常に生まれたとしても双子の大きさは小さくなります。ところが、魔力は双子の方が強くなるのです。これは、母親のお腹の中にいる時からMRを持つ胎児たちは互いに互いの存在を感じ、魔力を使ってコミュニケーションをとっているのではないかと考えられます。」
エ:「コミュニケーションですか?」
サ:「はい。MRを持たない普通の双子の場合でも、手足を動かして、お互いの存在を感じていると考えられるデータがあります。MRを持つ双子は、持たない双子よりも絶対数が少ないのでまだデータ不足ですが、手足の他にさらに魔力を使ってコミュニケーションをとっていると思われます。
生まれる前から他に対し魔力を使い意思の疎通をはかっているために、双子は通常よりも強い魔力を持って生まれ、生まれた後も成長に伴う魔力増加量が通常より多くなるのではないかと考えています。
また、同じMRの男女の双子も存在するのですが、同性の双子よりも強い魔力を持って生まれてきます。但し、男女の場合はデータが少なく、断定は出来ません。
いずれの場合に於いても、魔力量には個人差がありますので『親の魔力量を元に生まれてくる子供の魔力量を予測し、その予測値と比較した場合』となります。魔力は親から子に遺伝します。子供が単体の場合の通常の魔力量の遺伝はヨーデキール一族に限らず、長年研究していますので、そのデータを元に算出し、比較しました。」
エ:「では、フィオナ王女様の魔力量が多いのは、男女の双子だったからですか?」
サ:「MRの違う双子は、正常に生まれてくることがほとんどありません。MRが一つ変わるだけで魔力量が最初から全く異なり、質も変わるため、MRの低い子が成長できないのです。それに伴い結局二人とも助からないのです。」
エ:「ええ、そのことは、母ミューラから聞きましたわ。」
サ:「そうですか。しかし、僅かですが、正常に生まれた例があります。それは、全てMRが一星と二星の双子で、かつ、父親が二星、母親が一星の夫婦の子でした。母親が二星、父親が一星の夫婦では、正常に生まれた例がなく、また、MRが二星と三星の双子、MRが三星と四星の双子も元々の事例も少ないこともありますが、正常に生まれた例がないのです。MR四星と五星の双子は、事例すらありませんでした。」
エ:「五星は、公爵家以上でしか生まれませんからそうでしょうね。私は、四大公爵家や、王族の双子を知りませんわ。もしかしたら、分家に双子がいる家があったかも知れませんが、当主や、国王が双子だったことは私の知る限りありませんわ。」
サ:「はい。私も、国王陛下に許可をいただき、調べましたが、ありませんでした。話は元に戻りますが、MRの違う双子が無事に生まれた場合、MRが同じ双子の時より、さらに強い魔力を持って生まれてくるのです。そして、胎児の性別が異なればもっと強くなると予測出来ます。MRが一星と二星のデータしかなく、その事例も少ないのですが、おそらくMRが四星と五星の男女の双子であったフィオナ王女様と兄王子様に関しても当てはまると考えられます。
また、早産と死産とはなってしまいましたが、フィオナ王女様が生きてお生まれになられたことに、父親のエドガー陛下の外部からの魔力干渉があったと思われます。」
エ:「外部からの魔力干渉とは?」
サ:「はい。これはMRの違う双子が無事に生まれた僅な例を元に考えられる予想で、断定は出来ません。先ほども申し上げましたが、MRの違う双子が無事生まれたのは、MRの違う両親のうち必ず父親のMRが母親のMRよりも高い夫婦のみなのです。そしてその夫婦は一様に父親は暇を見つけては母親のお腹にいる双子の魔力に触れていたのです。つまり、父親は、毎日胎児の魔力に干渉していたのではないかと考えられます。」
エ:「フィオナ王女様が、強い魔力を持っていることを、エドガー陛下とマリアンヌ様は知っていたのですか?」
サ:「はい。知っていました。あのお二人がお腹の双子をどう思っていたかに関しましては、私よりも詳しく知る者がおります。今、王宮で侍女長をしていますエルザという名の侍女です。あの者は、伯爵家の三女で、私、エドガー陛下、マリアンヌ様と同級生でした。王宮では以前マリアンヌ様付きの侍女として、王妃として立たれる少し前からずっと側に付いておりました。私は、出産に間に合いませんでしたが、あの者は出産の時もずっとお側に付いていました。もし、気になるようでしたら、あの者にお聞きください。あの者は、今、フィオナ王女様のマナー教育のため王女様の側にいます。」
エ:「侍女長エルザね。分かったわ。後は、フィオナ王女様が生まれた後のことよ。」




