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76.ソフィアの初恋

「ソフィア様。おはようございます。」

朝、登校したソフィアは、同じクラスのアーロンに話しかけられた。


「おはようございます。アーロン様。」


「ソフィア様。ぼく、昨日、フェリオくんとドルザッグくんが運動会のクラスリーダーに立候補するって聞きました。レリーリアラ様とジンクスくんもクラスリーダーと副リーダーをするらしいのですが、ソフィア様は、クラスリーダーに立候補するつもりでしょうか?」


「いえ、私は、運動が得意ではないので立候補をするつもりはないですわ。フェリオ様たちと話をしていて興味がないわけではないのですが。クラスをまとめる自信もないですし。」


「そうですか。では、ぼくがクラスリーダーに立候補したら、ソフィア様、手伝っていただけますか?」


「ええ。はい、いいですわよ。」

アーロンとソフィアは一緒にクラスリーダーと副リーダーをすることになった。


クラスリーダーの仕事の打ち合わせなどで二人で話し合う時間も増えた。今までお互いあまり話をしたことがなかったが、運動会の打ち合わせをきっかけによく話すようになった。


「アーロン様は、運動も勉強もいつも一生懸命頑張っていますわね。両方ともおできになられて、凄いですわ。」


「ありがとうございます。でも、元々運動は、あまり得意ではなかったのですよ。どちらか言えば苦手でした。」


「えっ?本当ですか?体育の授業も剣術もクラスの男児の中で一番ではないのですか?」


「あはは。今は、自分でもそこそこ上の方にいると思ってますが、去年の一学期頃までは下の方でしたよ。体力をつけるために努力しました。」


「意外ですわ。最初から得意なのかと思ってましたわ。」


「違いますよ。フェリオくんと同じクラスになってから、ぼくは努力するようになったんですよ。」


アーロンは、一年生の頃の出来事をソフィアに話した。

ジンクスと友達になったきっかけ。

勉強を頑張るようになったきっかけ。

運動を頑張るようになったきっかけ。

全てにフェリオが絡んでいた。


「フェリオくんは、王子殿下で、MRも五星。勉強も運動も一番。なのに、威張ったりせず、誰にでも優しくて。ぼくは、フェリオくんの側にいる友達として恥ずかしくない人になりたいと思ったんです。何でもできるフェリオくんに助けなんて要らないかも知れない。だけど、もし何かあった時は、今度はぼくがフェリオくんを支えたいと思ってます。」


ソフィアは、アーロンと話しているうちに、少しずつアーロンに惹かれていった。


「ソフィア様、今までほとんど話すことがなくて、ずっと言えないままでいました。ぼく、ソフィア様に…」


ソフィアは、ドキドキしてしまった。

『もしかして、愛の告白?凄く嬉しいけど、少し困るわ。』

ソフィアは、伯爵家の四星。伯爵家で四星の者はとても少なく、ソフィアは将来父の爵位を継ぐか伯爵家より格上の家に嫁ぐ予定の令嬢だった。

アーロンは、子爵家嫡男。ソフィアの相手にはならない。わかっているがアーロンのことを好きになったかも知れない。


「ぼく、ソフィア様に、謝りたいと思っていました。」


「えっ?」

『告白じゃないの?これって告白っぽい流れでしたわよね。残念過ぎますわ。』

ソフィアは、がっかりした。でも、自分がアーロンを好きになってしまっていることを自覚した。


「二年生になった一の月の、フェリオくんが魔力を暴走した時のことです。ぼくは、フェリオくんの様子が変だと思いました。ジンクスくんと一生懸命フェリオくんを呼んだけど、結局、ダメでした。」


「ああ、あの時のことですわね。あれは、ドルザッグが悪いのですわ。アーロン様は、悪くありませんわ。」


「違います。ぼくは、フェリオくんの様子が変だと気付いた時、あの時直ぐ、フェリオくんが魔力を暴走させる前に、側に行ってフェリオくんを止めるとか、魔力暴走に対処できそうなサラ先生を呼びに行くとか、後から考えればフェリオくんを止める方法はあったのです。でも、ぼくは、どうすればいいのか分からず、ただフェリオくんを呼ぶだけでした。その結果がああなってしまいました。ぼくがとっさに対処できなかったせいでソフィア様たちは失神してしまいました。すみません。」


「その事でしたら、私も同じですわ。とっさの対応が出来なかったのはみんな同じです。アーロン様は、悪くないですわ。」


「そう言っていただけると、気が楽になりました。ありがとうございます。でも、今度はとっさの対応も出来るようになりたいと思います。」


ソフィアは、完全にアーロンを好きになってしまった。

以前、選択授業の教室で五人で話していた時、ソフィアは、『イケメン、三星、子爵家嫡男、フェリオ王子様の友達、運動も勉強も出来て将来有望だからアーロンは女児に人気がある』と言った。でも、アーロンと話しているうちにアーロンの人柄をソフィアは好きになった。アーロンのお相手の対象となる三星、二星の女児たちをとても羨ましく思った。

あの時、フェリオとドルザッグを恋愛対象外と切り捨てた。フェリオは、五星王子殿下なので論外だが、自分は、ドルザッグよりも完全に恋愛対象外だと気付き、かなり落ち込んだ。



運動会当日、フェリオ、レリーリアラ、ドルザッグの三人はそれぞれ自分のクラスのクラスリーダーとしてクラスをまとめ、ソフィアは副リーダーとしてクラスリーダーのアーロンのサポートをした。


今年の二年生はどのクラスも、全員が協力して競技し、今までにない熱戦となった。

去年は、フェリオのクラスがクラス団結力No.1でダントツだったが、今年は苦戦していた。副リーダーとしてレリーリアラをサポートしていたジンクスがクラスの男児全員を上手くまとめあげていたのだ。レリーリアラも女児たちをまとめあげ、レリーリアラとジンクスのクラスは、男女一緒になって団結していた。


アーロンとソフィアのクラスも、ドルザッグ、ユーンのクラスも頑張っていたが、レリーリアラとジンクスのクラスに勝てなかった。


最終の二年生のクラス順位は、一位がレリーリアラとジンクスのクラス、二位がアーロンとソフィアのクラスで、フェリオのクラスは三位だった。そして、四位はユーンのクラス。ドルザッグのクラスは最下位だった。

一位と二位のクラスは男女の団結力がよく、クラス一丸となって頑張っていた。

ドルザッグのクラスは、男女の団結力があまりよくなかったのが敗因だった。


珍しく四星がクラスリーダーや、副リーダーを務めた二年生のおかげなのか、来賓席が今までにないほど盛り上がっていた。

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