67.参観日(二年生)
毎年五の月の月末、フェリオの通う初等学校は参観日がある。
去年の初めての参観日、二人の祖母たちが侍女と護衛の他に、学長、副学長、他所のクラスの児童たちの親らしき貴族夫人たちをぞろぞろと引き連れてやってきた。あの時は、流石に勘弁して欲しいと思ったが、今年は、そうならないだろうとフェリオは思っていた。
何故なら、フェリオの二人の祖母たちは、初等学校に、ほぼ2ヶ月に一回くらい必ずくる。
参観日、運動会、音楽発表会と1学期末、2学期末、学年末個人面談の六回だ。去年は、入学式にも来ていた。一年間に七回も来たのだ。そう、最初の頃はざわついていたが、運動会頃には落ち着いていた。
去年の参観日も、サラ先生がうまく対応してくれた後は、特にざわつくことはなかった。
フェリオは、参観日も、運動会も、音楽発表会も二人の祖母たちが自分を見に学校に来てくれることをとても嬉しく思っていた。
今年も二人の祖母たちは参観日に来てくれる。フェリオは、とても楽しみだった。
参観日当日、二人の祖母たちが来てくれたみたいだった。が、今年も、フェリオが思っていたよりもざわざわと騒がしい。去年の参観日のように、いや、もしかしたらそれ以上にざわついている。
『???どうしてだろう?』
フェリオは、何故こんなにざわざわと騒がしのか分からなかった。しかし、たくさんの人の声や気配、足音がどんどん自分の教室に近付いてくる。
『…ミューラ様。』
フェリオの二人の祖母たちと一緒に来ていたのは、フィオナの後見人ミューラ・マ・ノーストキタだった。
『何故、ミューラ様がここに?ミューラ様は、フィオナの後見人だよね?部外者立ち入り禁止じゃないの?』
フェリオの疑問は、すぐ解決した。
ミューラは、学校教育統括管理局と初等学校教育管理局の職員らしきプレートを胸にかけた複数の男性を引き連れて来ていた。来月の半ばにフィオナがこの学校に通うことが正式に発表される。自分は、もちろんその事を知っている。なら、学校教育統括管理局の職員も知っていて当前だ。ミューラ様は、おそらく、発表前の視察か何かできたのだろう。学長と副学長がペコペコしながら何か話している。職員らしき男性が、それを聞いて、同じようにペコペコしながらミューラ様に何か言っている。
二人の祖母たちは、フェリオの教室に入ってきた。レリーリアラの母親や、他の貴族夫人たちは、それぞれの教室に行った。去年と同じだ。よかった。ところで、ミューラ様は…。
ミューラは、フェリオの教室に入ってきた。ぞろぞろとプレートを胸にかけた職員たちがついてきた。これではフェリオのクラスメートの親が教室に入れない。今年はサラ先生が担任の先生ではない。どうしょう…。フェリオが青ざめた顔をしていたら、ミューラは、その様子に気付いたのか、職員たちを全員教室から追い払い、ニコニコしながらフェリオにウィンク飛ばしてきた。
『いやいや、ミューラ様も他所の教室に視察に行って下さい。』
フェリオは、机に突っ伏した。でも、思いがけず来てくれたことは素直に嬉しかった。
結局、ミューラは、二人の祖母たちと一緒に最初から最後までフェリオの教室にいて、そのまま祖母たちと帰って行った。ミューラは視察を口実にフェリオの授業参観を見にきただけだった。
参観は午前中だけで午後からは通常授業。選択授業の教室で四人の四星たちが午前中の参観を話題にしていた。
ソ:「今日、ミューラ・マ・ノーストキタ様がご視察にいらっしゃってましたわ。」
ユ:「知ってる。ぼくの父上も来ていた。ぼくの父上は学校教育統括管理局に勤めているんだ。」
ド:「何故、ミューラ・マ・ノーストキタ様が初等学校に視察にこられたのだろうか?」
レ:「最近、王都にお戻りになられたご長女エリアノーラ・マ・ノーストキタ公爵様とご一緒に色々なところをご視察して回っているみたいですわよ。」
レ:「フェリオ様、ミューラ様は、フェリオ様の教室で参観のご様子をご視察されていたと聞きましたわ。最近、ミューラ様は、よく王妃様やシーランお祖母様とご一緒にいらっしゃるとお聞きしていますわ。」
フ:「そうだね。ほとんど毎日一緒にいらっしゃるよ。(フィオナとも)」
ソ:「それで、三人揃ってご一緒にお帰りになられたのですわね。三人お並びになられとても荘厳でしたわ。」
フィオナの後見人のミューラは、来年から毎回二人の祖母たちと一緒に学校行事に来るだろう。今回は、こんなにざわついていたが、そのうち落ち着くはずだ。
ミューラのサプライズ来校が嬉しかったフェリオは、フィオナの姿で学校に通える来年がとても楽しみになった。




