63.クラスリーダー
二学期になった。一学期末休みにノーストキタ領を訪問したくさんの初めての経験をしたフェリオは、気分新たに新しい学期を迎え、色々とやる気に満ちていた。
二学期には運動会がある。練習はまだだが、運動会の役割分担を、二学期入って直ぐに児童の中で決めることになっていた。
フェリオは、一年生の時、クラスリーダーをやった。入退場の時プラカードを持ったり、応援をするとき中心となって声を出したりと、ちょっとだけたいへんな仕事だったが、遣り甲斐もあり、楽しかった。今年も、クラスリーダーに立候補しようと思っている。
午後からの選択授業で移動した教室で、ドルザッグが、フェリオに話しかけてきた。
「フェリオくん、オレ、運動会のクラスリーダーをしようと思っているんだ。クラスの奴らに推薦されちゃったから、引き受けるつもり。去年の運動会、オレ、あまりやる気なくて何の役割もしてなかったから、今年は頑張ってみようと思う。フェリオくんは、去年、クラスリーダーだったんだよね?忙しい?」
「えっ?そうなの?珍しいね、四星でクラスリーダーなんて。ぼく、去年、クラスリーダーやったけど、どの学年のどのクラスもクラスリーダーをしていたのは三星だったよ。ちょっと忙しいけど、遣り甲斐もあって楽しかったよ。今年も立候補しようと思っている。」
「フェリオ様、運動会のクラスリーダーは、ほとんどが運動の得意な三星ですわ。四星はどちらか言えば運動よりも魔法ばかりになりますから。ドルザッグもユーンも去年は全くやる気なさそうでしたわよ。」
「レリーリアラ様、オレだけでなく四星で魔法より運動が得意ってヤツなんてほとんどいないから。なっ、ユーン。」
「ぼく、運動は、あまり…好きじゃないから。勉強してる方が好きだし。」
「ユーンは、ヨーデキール一族だから仕方ないですわよ。私も運動は苦手ですわ。どうしても魔法の方になってしまいます。レリーリアラ様は、魔法も運動も勉強も凄いですわ。私、レリーリアラ様と同じクラスならレリーリアラ様をクラスリーダーに推薦いたしますわ。」
「ソフィア様、クラスリーダーはどちらか言えば男児が多いですわ。でも、フェリオ様とドルザッグがクラスリーダーをするなら、私も、少し考えてみようかしら。」
選択授業は、フェリオのクラスはフェリオを入れて五人。
フェリオの従妹公爵令嬢レリーリアラ・マ・イーデアル
侯爵家嫡男ドルザッグ・マ・フラインダー
ヨーデキール一族分家の子息ユーン・レリ・ヨーデキール
伯爵令嬢ソフィア・マ・リップル
フェリオたちは、一の月の最初のあの事件以来、午後からの選択授業の移動教室で、いつも五人仲良く話していた。
「レリーリアラは、ジンクスくんと同じクラスだよね。ジンクスくんたちが助けてくれると思うからやってみたら?ぼくがジンクスくんに手伝ってくれるか聞いてみてあげるよ。」
「ジンクスは友達多いし、いいヤツだからオレもジンクスに手伝ってもらってやってみたらいいと思う。」
「お二人がそうおっしゃるなら、クラスリーダーに立候補してみることにいたしますわ。ソフィア様は如何いたしますか?」
「私?私は、あまり自信がないですわ。」
「アーロンくんに手伝ってもらったら?アーロンくんも優しいから手伝ってくれると思うよ。」
「ライラック子爵家の嫡男アーロン様ですわね。あの方は…女児にとても人気がありますのよ。あまり話したこともないですし、個人的にお声をお掛けするのは、少し気が引けますわ。」
「えっ?アーロンくん、そんなに人気あるんだ?知らなかった。一年生の同じクラスだった時は、分からなかったよ。」
「イケメン、三星、子爵家嫡男、フェリオ様のお友達、運動も勉強も出来る将来有望な男児としてドルザッグなんかよりよっぽど人気ありますわよ、ね、レリーリアラ様。」
「まぁ、そうですわね。ユーンは、まだマシですが…ドルザッグは…。」
「えっ?オレって、ダメなの?」
「四星嫡男が人気ないのですわ。将来の相手は四星か三星でもそれなりの身分のご令嬢になるでしょ。普通に恋愛対象にならないですわね。」
「じゃあ、ぼくは…?」
「アイドル的に騒いでいるだけですわね。」
『『ぼく(オレ)は、同級生の女の子たちの恋愛対象にならないんだ。』』
別に女児にモテたいとは思っていないが、対象外と切って捨てる伯爵令嬢ソフィアの遠慮ない言葉に、フェリオもドルザッグも凹んだ。




