57.ノーストキタ領訪問 2
次の日の朝、ミューラは、フィオナと領地の視察に行くとエリアノーラに告げると、エリアノーラは同行を申し出た。
「エリアノーラ、あなたは、公爵の仕事があるでしょう?来なくていいわよ。」
「お母様、そんなものは、今朝、さっさと終わらせましたわ。私を誰だとお思いですか?この国の成人した五星で私以上の魔力を持つ者はおりません。お母様こそ、お休みになっては如何ですか?私が王女様をご案内致しますわ。」
「引きこもり公爵は、黙ってなさい。」
「お母様、私、引きこもりはやめますわ。これからは、私が王女様の後見人になりますわ。お母様は安心してご引退下さい。」
「何ですって、王女様の後見人は私ですわ。」
「ご心配なく、お母様。ノーストキタ家当主である私が責任を持って王女様をお守り致しますわ。王女様の魔法の先生も私が引き継ぎますわ。」
「言うわね。王女様の魔力の足元にも及ばないくせに。」
「お母様、『老化』と言う言葉をご存知ですか?確かに私は、お母様の全盛期の魔力に及びませんわ。ですが、現在のお母様は、以前の半分くらいですか?」
「失礼ね。もっとあるわよ。」
「まぁ、いずれにしても、今のお母様より私の方が上ですわ。お母様にできて、私にできないなんて、ありませんわ。つまり、お母様より私の方が適任ってことですわ。フィオナ王女様もそう思われますわよね?」
そっくりな顔をした同じような性格らしき母娘は、フィオナの目の前でお互いに似たようなことを言い合し始めた。
『親子喧嘩に巻き込まないで。』
フィオナはそう思ったが、
「ノーストキタ公爵様も来ていただけるなんて、嬉しいです。ミューラ大叔母様、ノーストキタ公爵様がご一緒でもいいですよね?私、楽しみにしてましたの。早く行きたいですわ。」
と話を反らすことにした。
「まぁ、フィオナ王女様がそうおっしゃるなら、いいですわ。エリアノーラ、王女様に失礼のないようにしなさい。」
「はい、お母様。王女様、馬車は揺れますから私のお隣に。お母様は後ろでご自由にどうぞ。」
「何ですって、失礼な子ね。王女様の隣は私よ。あなたこそ、後からきたのだから遠慮しなさい。あなたが後ろにいきなさい。」
「お母様、ノーストキタ家の当主は、私です。お母様が遠慮なさって下さい。」
「何ですって、王女様をお連れしたのは、私よ。」
「お母様、ノーストキタ家として、王女様をお迎えしているのは、当主の私です。お母様は、連れてきただけでお役目は終わりました。後は、私にお任せ下さい。さっ、王女様、こちらにどうぞ。」
「何ですって、王女様、やはりエリアノーラは置いて行きましょう。私だけで十分ですわ。」
「王女様、申し訳ありません、母は高齢で長旅の疲れがとれていないのか寝惚けているようです。煩い母は放って置いて、私と一緒に行きましょう。私が母の代わりにご案内致しますわ。」
『もうやめて、そっくり親子喧嘩。そうだわ。』
フィオナは、ミューラとエリアノーラの二人の手を取ると二人同時に自分の魔力で包み込んだ。
「一緒に行きましょう、ね、ミューラ大叔母様、ノーストキタ公爵様。」
「「はい、王女様。こちらにどうぞ。」」
うっとりとした顔の二人は、フィオナを馬車に案内し、フィオナを真ん中にして二人ともフィオナの隣に座った。




